第24話賢者サイド 二人目の追放
「は、はぁ!?」
何を言い出すんだこの小娘は。
この大賢者である私に改善だと?
「まあ、とにかくですね。まずは何を置いても、仲間を巻き込むように魔法撃つなって話ですよ」
「ああ、それはその通りだぜ!」
ステラに続いてアルトスも私に謂いわれのない非難をする。
馬鹿ですか?
さっきまでステラに怒っていたのを忘れましたか?
「それが大賢者である私の使命です。足し算も出来ないようですから教えてあげましょう。最近のモンスター討伐数はダントツで私が一番なんですよ?」
「そら後先考えず魔法ぶっぱすれば数も稼げるでしょう。でも、戦いは攻撃力だけじゃない。守る人間がいて、支援がいて回復がいて、それがあるからこそ攻撃が活きるんじゃないですか?」
「ふ、愚かな。どんなに器用に立ち回ろうと、敵が減らなければ戦いは終わらないのですよ。私が一番の功労者であることは歴然とした事実です」
「だから攻撃ばっかりじゃ回らないんですって。それに、そんなこと言って、ちょっとモンスターが近づこうものなら猛ダッシュで逃げるじゃないですか」
「当然でしょう。私に怪我があったらどうするつもりなのです?」
「それで呪文の詠唱止まっちゃってまたやり直しじゃないですか。欲しい時、それに合わせて動いている時に魔法が間に合ってないんですよ」
こ、この小娘、言わせておけば・・・。
「それにあなたが逃げちゃうおかげで、同じ後衛のクレアさんばっかりにヘイトが上がっちゃうんです。知ってます? あたしが入ってからのダメージ率。アルトスさんに続いて二位がクレアさんなんですよ」
「わ、私はいいですから・・・」
ふん、クレアがああ言っているんだからいいじゃありませんか。
「や、これはクレアさんが我慢すればいいって問題じゃないんですよ。回復役が被弾しちゃダメなんです。その分他の人の回復が追い付かなくなるんですから。まあ、クレアさんは自分を犠牲にして他の人回復しようとしますけど、あれもダメですからね?」
「ご、ごめんなさい」
はぁ~っとステラはため息をつきました。
随分と言いたい放題してくれましたね。
私が口を開こうとすると、
「レオダスさんて人は、本当に凄い人だったんですね・・・」
「「はぁ!?」」
再び私とアルトスの声が重なった。
「死んじゃったんですよね? 生きてるうちに会いたかったです。マジリスペクトします」
「何言ってんだ新入り。あいつはもう駄目だった。足手まといだったんだぜ!」
アルトスの言う通りです。
この小娘は会ったこともない人間の何が解るというのか。
「皆さんの動きを見ているだけでも解りますよ。ぶっちゃけこのぽんこつパーティーでここまでこれる筈がないんです。重要なキーパーソンがいない限り」
「・・・それが、レオダスだって言いたいのかよ」
「はい。クレアさん。レオダスさんは誰をどの順番で回復するのか、状況に応じて指示をしませんでしたか?」
「し、していました!」
「勇者様の動きもね、誰かが隙を作る、そうするように誘導するって前提で動いてるんですよ。レオダスさんにそう言われてたんですよね?」
「うん。そうだよ」
「そして、レオダスさんがいなくなるまで、セリシオさんが後ろから撃って、今までみたいに危ない目に合ったことってありました?」
「・・・そういやあ、なかった」
「なかったです」
「なかったね」
私は舌打ちした。
「・・・何が言いたいんですか?」
「撃つ前にレオダスさんが回避の合図を送りませんでしたか? セリシオさんの魔法が行くぞーって」
「・・・さあ、どうでしたかね」
「い、言ってた、かも、しれねぇ」
五月蠅いですよ猿が。
黙っていなさい!
「だ、だが。最近では俺のフォローに回る余裕がなかったぞ?」
「“早熟”のスキルでしたっけ。最近では皆さんに抜かれていたみたいですね」
「お、おおよ! だから奴は足手まとい」
「あのですね。そもそも司令塔ってそんなに動く必要ないんですよ。突出して強くなくてもいいんです。それまでは出来ていても、皆さんのレベルが上がったんだから同じ立ち回りをするってのは無理なんですよ」
「つまり、役に立ってねーってことだろが?」
ステラは眉間をぐりぐりします。
イライラしますねその態度。
まるで解っていない子供に、どう言ったらいいのか分からないというような。
「はぁ、アルトスさんのはね、『子供の頃、朝起こしてもらっていたお母さんに、大人になって寝坊しても、なんで起こしてくれないんだ―』って言うのと一緒なんですよ」
「な、な、なぁ!! 俺がそんなガキだって言うのかよ!!」
赫怒かくどするアルトスを無視し、ステラは我々を見渡します。
「前衛で自身も戦いつつ、周りに指示を出し、何も考えないで撃ってくるセリシオさんの気配まで察して皆に伝える。これ一人でやってたんですよ? そりゃいなくなったら機能しないのは当たり前じゃないですか?」
クレアとアトスはしゅんと肩を落とした。
「甘えてたんですね。解っていたつもりでしたけど、それよりもずっと・・・」
「・・・うん」
私はため息をつき、ふさぁっと自慢の美しい髪をかき上げた。
「あなたの言いたいことは終わりましたか?」
ステラに問うと、肩をすくめる。
もう十分といったところでしょう。
「一考の価値くらいはあるでしょう。無論、私以外のですがね」
「そうですか。まあ、解ってくれないとは思っていました」
私は眉を吊り上げる。
「ですが、あなたのおかげでパーティー内に不和が生じた。これは許されざることです」
「『問題があれば改善する』ってさっき言ったじゃないですか?」
「関係を拗らせろとは言っていません」
「頭いいのに頭固いですね」
「黙りなさい」
こんな小娘に、私の深淵が覗けるものか。
くだらない、実にくだらない時間でした。
これでは前には進めません。
「せっかく私がスカウトして、栄えある勇者パーティーに参戦できたというのに、つまらないことを言いましたね」
「あたしはこのパーティーを思って言ったんですけど」
「出て行きなさいステラ。あなたは不要です」
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