第23話賢者サイド 失敗の原因
賢者サイド
「なんでだくそぉ! なんで上手くいかねぇ!!」
アルトスは会議の為に用意した円卓のテーブルを強く叩いた。
「アルトス。落ち着いて」
「で、ですがよ勇者様。戦力増強したってのに、なんでダンジョン攻略できないんですかね?」
そう。
我々は未だにあのダンジョンを攻略できていないのです。
初めは上手くいっていました。
ですが、階層が深くなるにつれて、敵のレベルも上がっていき、消耗していたのもあり、退却を余儀なくされたのです。
それにしても上手くいかない。
ステラが加わって、我々の戦力は確実に強化したはず。
しかし、あれから三度挑戦しているのに未だに足踏み状態。
苛立ちが募ります。
何故です?
何がいけないのですか?
「お前がいけないんじゃねーのか新入り」
アルトスは不調の原因はステラであると仮定したようです。
実はこれには私も同意します。
頭数を増やしたのに上手くいかない。
それは頭数が無能だからではないのでしょうか?
何といってもレオダスに務まることができないのですから。
「あたしですか?」
ステラは自覚が全くない様で、きょとんとしている。
困ったものですね、無自覚というのは。
「おうよ。お前が来たっていうのに上手くいってねーじゃねーか。つまり戦力以下だってことだぜ」
「そ、そんなことはないと思います。ステラさんが来て、私達は確実に奥まで進めるようになっていますから」
全く、クレアは・・・。
「クレア、なんでもかんでも庇えばいいというものではありません。問題点があれば改善する。そうでなければ我々はいつまで経ってもあのダンジョンを攻略できないのですよ?」
この私に、これ以上の足踏みは許されないのです。
「そう、ですけど。でもステラさんは」
「ステラはよくやってくれている」
そう口にしたのはアトスだ。
困りましたね。
原因を特定できないお子様は。
「勇者様。心優しいのは理解できますが、レオダスがいた時よりもパーティーが上手く機能していないのは事実です。この不調には新しく入った彼女が原因と考えるのが適当かと」
私は論理的に、このお子様へ説明します。
全く、私はこんなことをするために補佐の役職についたのではないというのに。
「あのー、あたしからもいいっすか?」
ステラはちょんと手を上げました。
その顔には反省の色はありません。
「おお、いいぜ。言い訳があるなら言ってみろよ?」
アルトスはそう言って凄む。
これは下手なことを言うと、この猿がまた喚きますよ、ふふ。
「あたしから見ると、このパーティーは相当ぽんこつですよ」
「「なっ!?」」
私とアルトスは驚愕の声を上げた。
この小娘、言うに事を欠いてなんという見当違いな発言を。
アルトスは顔を真っ赤にした。
「ふざけんじゃねー。俺らがポンコツだっていうのか!?」
ステラは慌てることなくアルトスを見上げた。
ほう、中々肝が据わっていますね。
「続けていいっすか?」
「おう。言ってみろよ! てめえがどんだけ的外れな分析をしたのか聞いてやるぜ」
「じゃあ、まずはアルトスさんから。前に突っ込み過ぎです」
「はぁ!? 馬鹿かてめえは。戦士が前に出ないでどうすんだよ?」
アルトスは喚きたてるが、ステラはあくまでも落ち着いていますね。
「確かにそうですけど、敵を見つけたら猪突猛進に突っ込んでいくでしょう? もっと周り見ましょうよ。敵が何匹とか、どういう構成とか。だから要らない怪我もするし、すぐに抜かれるんです」
「な、な、なぁっ」
面白い着眼点です。
次に彼女はクレアの方を向きます。
「次にクレアさんですけど」
「は、はい!」
「優先順位がぐちゃぐちゃです」
「・・・優先、順位ですか?」
「クレアさん優しいですねー。マジ女神ですねー」
「そ、そんな・・・」
うんうんと褒めた後に、ステラは目を細めた。
「それがこの場合は仇です。とにかく怪我した人の所にすっとんで行くじゃないですか? そこで突っ込めば自分が被弾するって解ってるのに」
「で、でもそうしないと」
「いや、解りますよ。でもね、フォローならあたしでも出来ますし、クレアさんが真っ先に行くことないんですよ。それに、勇者様に過保護過ぎます。ちょっとのかすり傷でも回復に行くでしょう。この間の戦いも、あたしの方が重傷でした。痛かったです」
「ご、ごめんなさい!」
今度はアトスに向き直る。
ほぉ、勇者であるアトスにもダメ出しをするつもりですか?
良い度胸です。
「勇者様は聖剣の大技を狙い過ぎです」
「そう、かな?」
「多分、今までそういう戦い方でいたんでしょうね。でも、勇者様もっと色々できるでしょう? 剣技だって、その歳で光るものがありまくりです」
「レオダスに鍛えてもらったからね!」
誇らしそうにするんじゃありませんよ。
何がレオダスですか、あれはこのパーティーの害悪です。
「ここでもレオダスさん、ですか・・・」
「何?」
「いえ、いいです。とにかく勇者様はもっと出来ます。無理に大技を使わないで、周り見て動きましょう」
「うん。分かったよ」
アトスはコクリと頷いた。
本当にこれで少しは良くなるんでしょうかね?
アルトスは全く納得がいっていないようですが。
「さあ、反省会はこの辺にしましょう。これで皆やるべき課題が見えましたね? では解散ー」
「は? 何言ってんですか? まだセリシオさんが残ってるでしょう? むしろ一番改善が必要なのかあなたじゃないですか?」
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