第15話賢者サイド 勇者に失望されたセリシオ
賢者サイド
「分かりましたよ」
ドン、と。
私は宿で取った作戦会議用の部屋に入ると、高々と告げた。
クレアは首を傾げ、私に質問をする。
「何がですかセリシオさん?」
ふ、解らないですかね。
これまでの流から私が言わんとしていることが。
まあ、凡人ならばそんなものか。
「無論、最近の我々の不調の件ですよ」
物分かりの悪い面々に、寛大な私は説明をしてやる。
「・・・それは、レオダスがいないから」
「違います」
やはり、この女もアルトス同様に馬鹿だ。
レオダスがいないから?
愚かさここに極まれりですね。
「レオダスが・ではなく、頭数・・が足りないのです」
「・・・頭数」
クレアは悲しそうにそう呟く。
何です?
ああ、まさか、レオダスを数の一つにしたのが気に入らないと言うつもりでしょうか?
愚かな。
「確かに、アルトスでは前衛もまともに一人でこなせないのですから、レオダスが抜けたのが原因と思っても仕方ないでしょう」
「な、なんだとこの野郎!」
「あなたの見せ場となるはずでしょう。それはあなたも望んでいたのでは?」
「う、ぐ。そうだけどよ・・・」
猿が。
私と口論して勝てるわけがないでしょうに。
何故このパーティーには頭の回る人間がいないのか。
まあいいでしょう。
全ては私の決定に委ねればいいのですから。
「レオダス程度の人間でも、壁としての役割くらいは果たせたようです。要は、壁が一人いればいいだけのこと。誰でもいいのですよ」
「そんな言い方・・・」
「事実です。彼である必要などない」
私の滑らかな演説に、誰も何も言えないようです。
当然でしょう。
それが真実なんですから。
「なので、新しい人材をスカウトしました。下の酒場で待たせてあります」
「え・・・?」
クレアが目を丸くした。
「わ、私何も聞いていません。勇者様?」
何を驚いているのしょう?
ああ、私の仕事の早さですか。
「僕も聞いていない。なんで?」
はあ?
『なんで?』
このお子様は・・・。
私はふるふると首を横に振った。
「戦力増強は必須。それを行なって何が悪いと言うのです?」
「・・・僕はなんの相談もされていないよ。なんでしてくれなかったの?」
「それは」
「僕はこのパーティーのリーダーだよ? その僕に相談すらしないで、何でそんな大事なことを一人で決めてしまったの?」
「わ、私はあなたの補佐役として・・・」
「補佐なら僕の意見を聞くべきじゃないかな?」
こ、こいつ!
この私が気を利かせてやったというのに!
言われてから動くようでは無能もいいところ。
その前に動くのが有能な人間でしょうに。
はっ!
なるほど、そう言うことですか。
「勇者様。あなたもレオダスの肩を持つつもりですか? 彼のやることには何も言わなかったじゃないですか」
「レオダスは僕の意をちゃんと汲んでくれたし、尊重もしてくれた。それに大事なことは必ず相談してくれた。人が関わることだよ? それにパーティーの今後を左右することだ」
解らない子供だ。
だからこそ、このパーティーで唯一の頭脳とも言うべき私が動いたというのに・・・。
レオダスと同じレベルの仕事を私にしろと言うのですか?
私ならあいつよりももっと上手く出来るのです。
「はあ、もういいよ。既に呼んで待たせてしまってるんでしょう? 行こう」
そう言ってアトスは呆れた目で私を見ると、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
・・・なんです?
なんで私がそんな目で見られないといけないのですか?
ただの飾りの分際でぇーー!!
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