第16話賢者サイド 新たなメンバーステラ

 賢者サイド


 酒場に入った我々は、そこで待たせている一人の女性の席へと向かった。


 青い髪のショートヘア。


 身体は160強といったところ。


 動きやすそうな簡素な装備に身を包んだ、目がクリッとしたその女性は一見すると15歳くらいに見えるのですが、実年齢は20というから驚きです。

 かなりの童顔といえるでしょうね。


 彼女は我々に気がつくと、立ってペコリとお辞儀をした。


 ですが、すぐに不満そうな顔になる。


 ・・・なんです?


「待ちましたよセリシオさん」


「我慢なさい」


 まさか、待たせたことを怒っているのですか?


 まあ、アトスに話す前に少々買い物をしていましたがね。


 映えある私が率いる勇者パーティーに加わるというのです。

 少しは我慢するのが筋でしょうに。


 生意気にもムッとした顔をしていますが、無視します。


 入ったばかりの新人には躾も重要ですからね。


 私はアトスにステラを紹介する。


「勇者様、それにお二人も、彼女が新たにパーティーへ加わるステラといいます。冒険者をしていて、若いながらに非常に優秀と評判の人物でしたので、この私が声を掛けました。」


 彼女はニコリと笑う。


「どうも。ステラっていいます。ジョブは武闘家です。いやー、勇者パーティーに参加できるなんて人生何が起こるか分かりませんね」


 そう言ってステラはアトスに握手を求めた。


「どうも、アトスです」


 アトスはまだ今回の件が納得いかないのか、あまりいい顔をしなかった。


 切り替えなさい。

 これだからお子様は。


「や、本当にまだ子供なんすね。びっくりです」


「ち、ちょっ、失礼ですよっ!」


 クレアはそう言うと慌ててフォローに入る。


 ふふ、まあ仕方ありませんね。

 事実ですから。


「・・・ちゃんと聖剣は装備できるよ」


 ほう。

 ムキになりますか?


 やはり子供ですね。


「や、すいません。あたし、思ったこと口に出ちゃう性格で」


 ステラはそう言うと頭を下げた。


 その素直なのか馬鹿なのか分からない態度に、アトスは毒気が抜けたのか、肩の力が抜けた。


 なるほど、馬鹿な人間はこれで人間関係が成り立つのですか。

 猿の社会。

 勉強になりました。


「さあ、こんな頭の悪いステラですが」


「な、なにおう!?」


 五月蠅い雌猿ですね。


「腕は確かなようですから、試験を兼ねて、これから皆さんが手こずっているダンジョンへと向かいましょう」


 ステラの話を聞いていてはいつまで経っても進みません。


 私は先を促した。


「『皆さんが』って、てめーもその手こずってる人間の中に入ってるからな?」


 アルトスが下らない事を言った。


 あなた方のせいなんですよ。

 停滞しているのはね。


 どうにも理解できないのが、この連中は失敗の中に私を含んでいるということです。


 私は完璧。


 あのパーティーで前に進めているのは、私が魔法で敵を倒しているからなのです。


 私の為にある壁。


 私の為にある飾り。


 私の為にある癒し。


 全てが私を引き立てるための道具に過ぎない。


 道具が使えないから先に進めないし、私が要らぬ苦労をする。


 このアルトスは猿なだけに全く理解出来ていない。


 いえ、アトスもクレアも、私の力をまるで分かっていないのです。


 このステラ、新たに手に入れた道具は、私の役に立ってくれればいいのですが、さてさて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る