第7話冒険者に俺はなる!
呆気に取られ、俺はしばし前方を見つめていた。
今のは、初級どころか、中級を飛び越えて上級レベルだぞ?
ようやく実感が湧いてきた。
あのステータスは本物だ。
俺は本当に化け物めいた力を手に入れてしまった。
そうなった原因はやはりこのスキル“キャリアオーバー”だ。
さっき説明を読み損ねたが、一体何が書かれている?
俺は今一度ステータスを開き、キャリアオーバーの欄を見た。
説明にはこうある。
『レベル補正プラス50』
プ、プラス50!?
じゃあ何か?
実質俺のレベルは70だってのか!
た、確か、歴史上でも人類最高までレベルが上がったのは古い国の王。
剣王ラグラスだったか?
確か50くらいだった筈。
なら俺は、文献上では史上最高レベルってことになるのか?
これなら、魔王だって倒せるかも知れない。
何も聖剣の勇者だけが魔王を倒せるわけではない。
魔王は聖属性に弱く、その聖属性で最も効果的にダメージを与えられるのが聖剣だってだけだ。
その効果が非常に優れているから勇者しか魔王を倒せないと言われているんだ。
極論を言えば、人外の力ならぶん殴るだけでも魔王は倒せるのだ。
流石にぶん殴って魔王を倒すのは現実的じゃあないが、今の俺ならどうだ?
そこまで考えて、俺はかぶりを振った。
「よそう」
俺は勇者パーティーから抜けた、いや、追放されたんだ。
今更そんなことを考えてどうする?
アトス達に合流したいとは思わない。
あれだけセリシオに言われたんだ。
俺にも意地がある。
強くなったからと戻る気にはなれない。
ならどうする?
さっきまでは力が無くとも、無いなりに生きていこうと思っていたけど、状況が変わった。
今の俺なら選択肢がグッと増える。
目的を決めよう。
まず、やはり力を武器に生きていくなら士官になる道もある。
今の俺ならば、騎士団長にだってなれるかも知れない。
元々早熟のスキルのおかげで国王様にも目をかけていただいたからな。
だが、この選択肢を俺は選ばない。
騎士はカッコいいが、規律に煩いからな。
俺の性には合わない
「やっぱり冒険者がいいな!」
その日暮らしで安定した給金も出ない。
福利厚生も何もない。
老いた俺がいれば『何馬鹿やってんだ』と言われてしまうだろう。
だけどあるだろ。
圧倒的自由が!
やりたい時にクエストに出て、寝たい時に寝て、起きたい時に起きる。
金があれば旨い肉も酒も飲める。
やらなければならない使命もない。
全ては、自分次第。
やってみたかったんだ。
そんな生活を!
「よし、決めた!」
王都に行こう。
そこで冒険者ギルドに登録して冒険者になるんだ!
目指すは、世界最高の冒険者だ!!
決意を固めて拳を握った時だ。
ガラガラという岩が転がる音がした。
「あん?」
ガラガラ。
ガラガラガラガラガラガラ!!
奥から大きな音がして、洞窟が崩れていく!
「や、ヤバい。これってさっきの俺の魔法が原因か!?」
そ、そういえば、洞窟などの狭い空間で強力な火炎系魔法は使うなって暗黙のルールがあったけど、まさかあんな威力になるとは思っていなかったし。
とにかく逃げろ!
俺は一目散に逃げ出した。
「うおっ、俺足速ぇ!」
ギュンギュンとスピードを上げながら、俺は洞窟の外に出た。
程なくして、ガラガラと激しく音を立て、洞窟が完全に埋まってしまった。
ほほぉ。
ふむふむなるほど?
俺の魔法のせいでダンジョンが一つ、無くなってしまったぞ?
・・・。
ま、まあまあ。
落ち着きたまえや俺。
このダンジョンは危険だった。
スケルトンキングが三体も出たんだからな。
塞がってよかったまである。
まあ、だからなんだ・・・。
「とにかくよし!!」
俺はこの場をスタコラサッサと逃げ出した。
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