第6話キャリアオーバー
「う、ううん」
俺は目を覚ますと、すぐに眠る前の状況を思い出し、身構えた。
辺りを観察し、気配がないことを見極め、自分の周りが安全であるかを確認する。
「・・・ふぅ」
一応は安全か。
俺が寝てから周りは変わっていない。
身体にも異常はない。
半端、自暴自棄になり、あのまま寝てしまったが、あれは一つの賭けだったと思う。
あのままひょっこりと現れたモンスターにやられてしまったらそれまで。
運命だったと諦めよう。
だけど、もし生きていられたら、惨めでも無様でも生きようと決めた。
どうやら賭けには勝ったらしい。
「なんて、運命を安く使い過ぎか?」
そう独り言ちると、俺は立ち上がった。
「ん?」
立って違和感に気が付いた。
身体が軽い。
関節部も腰もよく回る。
なんだ?
ちょい睡眠で絶好調になったのか?
「もしかして・・・ステータスオープン」
ステータスを開き、中を覗く。
もしかしたら、実は幸運以外にも成長していると思ったのだ。
思ったんだが、
「な、なんだこれは?」
レベル20
魔法剣士
体力1088
筋力777
俊敏性934
知力85
魔力1000
魔力耐性587
幸運58
スキル
キャリアオーバー
「はぁ!!」
な、なんだこれは?
こんな数値、あり得ないぞ。
ステータス画面がぶっ壊れたか?
そんな話聞いたことないけど。
それに、早熟が消えている。
最近では疎ましく思ってはいたけど、たった一つしかないスキルで、俺の心の拠り所だったスキルが無くなった。
代わりに、なんだこれ“キャリアオーバー”?
ええっと、説明文は?
「っつ、誰だ!」
説明文を読もうとすると、前方から強力な気配を感じた。
スケルトンキングから奪った剣を構え、じっと待つと、カシャカシャと音がして、またスケルトンキングが現れた。
「おいおい、どうなってるんだ? ここは低級ダンジョンじゃないのか?」
カシャカシャと音がして、後ろから更に一体。
計二体のスケルトンキングが現れた。
俺は舌打ちをし、腰を落とす。
さっきは一体に手こずった。
二体になるとかなり厳しい。
そう。
今までの俺ならば。
あのステータスを信じていいのか?
確かに身体は最高にキレている。
いけるのか?
考えている間もなく、スケルトンキングが剣を振り回しながら襲ってきた。
「・・・遅い」
なんだ?
さっきは背筋が凍る程速く振り回していた剣を、やけにゆっくりと振っている?
これなら悠々と受け止められる。
ガキン、と。
剣の鍔迫り合いの音が響くも、衝撃はまるでない。
さっきは踏ん張らなければそのまま吹き飛ばされるところだったが、これなら片手でも楽々受け止められそうだ。
「ふん!」
鍔迫り合いをしているところで俺は前蹴りを繰り出した。
さっきと攻略法は一緒だ。
のけ反ったところで中級の火炎をお見舞いする。
もう一体も間合いを詰めてきている。
いつまでもこいつに掛かりきりではいられない。
が、
ガシャーーン、という派手な音と共に、スケルトンキングが前蹴り一つで粉みじんに粉砕された。
「・・・あ? ・・・」
マジか?
ただの蹴りだぞ?
俺は伸び切った足を見つめ、意味なく足裏を見たりした。
呆けていると、もう一体のスケルトンキングが間合いを詰めてくる。
ヤバい。
いくらなんでも、斬られたら痛いだろう。
実験は流石にしたくない。
俺はまた〝ファイアボール〟を撃とうとして、止めた。
あのステータス画面では俺の魔力は1000。
このまま撃つのは不味い気がする。
ここは初級にしておこう。
「“ファイアバレット”」
魔法を唱えると、炎の弾が出現。
・・・出現んん?
本来なら一個出るはずが10以上出てきた!
ちょ、ちょっと待てちょっと待て!
これ、撃つのマズ、
慌てたが、もう間に合わず、弾は発射された。
スケルトンキングは一瞬で粉砕され、弾はそのまま後方へ飛んでいき、ドーーンと、凄まじい音と振動を巻き起こして消えた。
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