第4話 恋文の内容は⋯⋯
結論からいくと兄が言うような『恋文』ではなかったが、今度の園遊会のパートナーを頼みたいという内容を丁寧に書かれたものだった。
(兄と僕のどちらかに⋯⋯)
ただのパートナーであって婚約者ではない事を前面に押し出すなら、跡継ぎ同士の兄と参加するのが、お互い便宜上一緒に参加しただけで結婚の意思がない事を匂わせるのに適している。
だが、噂を立てられて後で振られたのかと恥をかいてもいい、システィアーナのパートナーとして並んで入場し、陛下の御言葉を賜った後、同じテーブルでアフタヌーンティーを楽しみたい。
仲良く茶を楽しんでいる所を見た陛下が、一歩前進したと思ってくれれば尚良い。
兄の意見を聞かぬ内から、エルネストの中では共に参加することが決定事項のようになっていた。
「そ、そうだ、兄上⋯⋯‼」
兄に、システィアーナのパートナーを譲ってくれるよう頼まねば⋯⋯‼
「ああ、そんな顔しなくても大丈夫だよ、もう返事は出しておいたから」
「え? 返事、したの? もう?」
では、兄と参加するのか?
「なんて
いつからいたのか、ベッドに腰を下ろして手紙を読んでいたエルネストのすぐ傍で、ユーヴェルフィオが笑っている。
「う、うん。フレック殿下も、シスと出ればいいって言ってくれた⋯⋯ から、護衛を兼ねた従者として傍につかなくていいみたいだ」
「よかったな。シスには、さっきのジャケットや小物の色を伝えてあげないと。ペアにしなくても、かち合う色を着せる訳にはいかないだろ? 今から、侯爵家に行ってくれば?」
今から、侯爵家に行く⋯⋯? シスに会いに行く? 今から?
「行っ、行く! 行ってくる!!」
「こらこら。一応、先触れを出してからだよ。子供じゃないんだから、ちゃんと手順を踏まなきゃ」
親戚付き合いのある家同士とは言え、格上の公爵家の子息が令嬢を訪ねて来るからには、向こうにも迎え入れる準備というものがある。万全を整える時間を与えなければ、侯爵家の家人に恥をかかせる事になりかねないだろう。
先触れを出すのは貴族家の礼儀と言える。
「すぐに使者を出すから、
兄弟のやりとりから予測していたのか、エルネストの寝室の隣のリビングルームで、茶器を揃えたワゴンを準備している執事の姿が見え、リラックス効果のある温かなハーブティーの香りが漂っていた。
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