第3話 コイブミとはなんぞや?
──恋文が届いてるぞ
コイブミ? コイブミってなんだ?
エルネストは、白に近いミルク色のジャケットコートと、揃いの上下を手に、首を傾げた。
一応、未婚の上位貴族子息の
戸棚から、公爵家のロイヤルブルーのポケットチーフとクラヴァットを取り出した所で、コイブミが恋文であると思い当たる。
「え、誰から? 俺に?」
「見てみるといい」
呆けて実感のなさそうなエルネストの両手から、ジャケットや上下セット、小物などを受け取り、執事に渡す。
それらをエルネストの王宮に戻るときの荷物に、皺にならないよう纏めるように命じてから、手紙をまだ呆けているエルネストの手に持たせた。
ふわっと香るラベンダーの爽やかな香り。手触りのいい上質の紙。
裏返すと、上品で優しい手の文字が目に留まる。
え? システィアーナ!? シスからの手紙?
封蠟は浮き剥がれていた。
「悪いけど、当主代行として先に読ませて貰ったよ。僕とエルと、連名への手紙だったからね」
「いや、兄さんと僕の二人宛なら、先に読むのは当然で⋯⋯す」
シスからの手紙? どれぐらい振りか⋯⋯ 内容はなんだろう。相変わらず綺麗な字を書く。
エルネストは目に見えてわかりやすく頰を上気させ、手紙を両手で挟むように包み込むように、そぅっとしかししっかりと大切に掲げ持つ。
シスが僕に(僕達に)なんだろう。話があるなら、城で会った時に話してくれてもいいのに。
ああ、いや、兄さんにも用があったのだろうから、手紙でいいのか。
「まあ、そこで百面相してないで、落ち着いて座って読めばどうだ?」
「う、うん。そうだね」
衣装部屋のチェストの角や寝室に繋がる出入り口の柱に足や頭をぶつけながら、ふわふわと立ち去るエルネストに、ユーヴェルフィオは微笑ましく見守った。
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