第3話 侯爵家の跡取り娘


 この国の爵位のルールに、王族でなければ、公爵位を継げないというのがあり、臣籍降下した王家の一員とその血縁者しか公爵位を継げない。


 数世代経つと、王族としての関係は薄れ、やがて侯爵位以下に降爵してしまうか、高位貴族としての資格を失い爵されてしまう。それは本人の能力と人品により変わるが、概ね三世代までが目安のようである。



 薄紅の姫君と呼ばれるシスティアーナは、先々代王弟である祖父ドゥウェルヴィア公爵を祖父に持ち、その娘エルティーネと、現当主ハルヴァルヴィア侯爵ロイエルドとの間に生まれた第一子で、侯爵家の跡取り候補でもある。


 母エルティーネは他に兄弟がいないため、ドゥウェルヴィア公爵位の継承権を持っている。


 システィアーナには妹がいて、どちらかが侯爵家を継ぐと思われるが、妹ソニアリーナはまだ10歳、婚約者は居ない。


 ソニアリーナが結婚できる歳になるまでにシスティアーナに子ができると思われ、今の所、跡取りの最有力候補なのである。



 が、ここに来て、婚約者が王命であるにも関わらず、婚約を破棄して来たのだ。



 オルギュストは公爵家の次男で、公爵位を長兄ファヴィアンが継ぐと思われ、本来は騎士や領地経営をしながらの後継者のスペアでありながらも、侯爵家存続のため、システィアーナと婚姻せよと、王命が下ったのである。



 勿論、オルギュスト本人にしても、王命は理解しているはずだが⋯⋯



 ──思ったよりオツムの出来はお花畑が広がっていたようね?



 このような王族や高位貴族が開く夜会では、婚約者がエスコートをし、そのドレスや宝飾品の手配も前もって行うべきであるが、この数年、オルギュストから贈られたものはほぼなく、毎年の年末恒例の王家主催の、王宮での夜宴会用のドレスと宝飾品くらいである。誕生日などの祝いに花すら届かないのだ。


 金がない訳ではない。忘れているのか、送る気がないのか知らないが、今年になっては、夜会にエスコートすらしないのだ。



 それは、他の貴族達の噂話にもなっていた。




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