第19話
魔力量がマグダットさんより多い?
はて、どういう事かしら。
私としては、魔力なんて感覚感じた事ないよ?
「リアーナちゃん。幼少の時に、魔法を使っていた記憶はないかい?」
「子供の頃ですか? ……うーん、魔法を使ってた記憶なんて、全然思い浮かばないです」
「だが、それでは説明がつかないんだ。魔力量を増やすには、幼少の頃から常態的に魔法を使う必要がある。いきなり魔力量が増えるなんて事は考えられない。ゆっくりで良い、何か思い当たる事がないか考えてくれ」
マグダットさんにそう言われ、クローゼットの奥深くにしまい込んだ記憶を探してみる。
子供の頃……元婚約者のルディウスと、一緒に遊んでいた記憶が多かった。その中で思い当たる事と言えば……あっ!
「子供の頃、良く怪我をしていた幼馴染みがいたんです。毎日のように怪我をするものだから、私はなんとか治して上げたくて、怪我をした所におまじないをしてたんです。不思議な事に、そのおまじないをすると怪我が治った記憶があります」
「それだ! それに違いない! 恐らく、元々聖魔法の才能を持っていたリアーナちゃんは、知らず知らずの内にその怪我を聖魔法――つまり癒しの力で治していた。毎日その力を使っていたら、この魔力量に増えた。そう考えると辻褄が合う」
「リアーナ凄いじゃない! 魔法適正どころか聖魔法の適正なんて万分の一、いえ、何百万分の一よ! あなた聖女様になれるのよ!」
聖女――その言葉を聞くと、嫌な記憶が溢れてくる。
拳を握り締め、苛立つ心をなんとか静めようとした。
「心が乱れているね。聖女に対して何か嫌な思い出もあるようだ」
「あ、私……ごめんなさいリアーナ!」
「良いんです……もう終わった事だから」
口ではそう言ったけど、嫌な記憶ほど頭から離れないもの。あのしたり顔が、どうしても浮かんできてしまう。
「無理しなくて良いんだよ。嫌な記憶や出来事は、外に出して発散しなければ、ずっとここに残ってしまうからね」
マグダットさんは、自分の胸を指してありがたい言葉をかけてくれた。ミリアお姉様も首を縦に振り、マグダットさんに同意するように頷いている。
折角だから甘えてみようかな。そう思った私は、溜まりに溜まった怨念にも近い愚痴を二人に垂れ流してしまった。
時間を忘れ、気づいたらお昼になっていたほど、愚痴は止まらなかった……。
「もうこんな時間!? ごめんなさい!私ったらつい愚痴を垂れ流してしまいました……」
「良いのよ! お陰でリアーナの事をもっと知れたから♪」
「あ~も~っっ、ミリアお姉様大好きっ!」
ミリアお姉様にはついつい甘えてしまう。
抱きつく私に、嫌な顔一つせず優しく頭を撫でてくる。
なんというか、包容力が半端ない! ミリアお姉様が男の人だったら、即刻プロポーズしている所だ。
「微笑ましい姉妹だね。ミリアちゃんは妹が欲しいと煩かったから、良かったよ」
「せ、先生っ!」
「ははっ、ごめんごめん!」
「も~、先生ったらいつも私をからかって楽しんで!」
うんうん。あなた方のやり取りも、十分微笑ましいですよ? なんかキュンキュンしてくる。
「魔法講座は明日からとして、今日はお昼でも食べていかないかい? 丁度シチューを作った所なんだ」
「先生のシチュー大好き! ねえ、リアーナ! 折角だから食べていきましょうよ!」
ほうほう、テンションが高いですねミリアお姉様。勿論、私としてもありがたく頂きたい所だが、折角なのでミリアお姉様をジト目で見つめてみる事にした。
「な、なによその目っ!?」
「別に? 大好きなの?」
「だ、大好きよ! シチューがね!」
「シチューがねぇ~」
「言いたい事があるならハッキリ言いなさい!」
「ハッキリ言って良いの?」
「だ、だめ……」
「だよね~、ふふっ」
「もうっ、リアーナまでからかってっ!」
「ご、ごめんね!」
「はいはい、姉妹喧嘩はおしまいにしなさい?」
「「は~い……」」
その後はマグダット"先生"のお手伝いをするため台所に案内して貰った。
お客様なんだから座ってなさいとマグダット先生には言われたけど、これからお世話になる先生に、一人で用意をさせる訳にもいかないよね。
「ここが台所……って木ベラが勝手に動いてる!?」
「ははっ、ビックリしたかい?」
「これも魔法ですか?」
「ああ、上達すればリアーナちゃんも出来るようになるよ」
そんな事を言われても、にわかには信じられない。お鍋の中のシチューを、独りでにかき混ぜる木ベラ。お玉がそれを掬って、深皿によそっていく。
そんな不思議な光景を、私は唖然として見ているだけだった。そしてそんな時、玄関の方から聞き覚えのある大きな声が聞こえてくる。
「リアーナはいるか!! もうお昼だぞ!! 俺との約束、忘れてないよな!?」
「うるさいわよっっ!!」
ハ、ハロルドだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます