第18話
「やあミリアちゃん。相変わらず美しいね」
「やだ先生っっ、お上手ですわね♪」
はにかんだ笑顔がとても落ち着く人。
柔らかな雰囲気に、私の気まで緩んでしまいそう。
「それで、そちらの可愛らしいお嬢さんは誰かな?」
「この子はリアーナよ。最近私達の家族になったの!」
「ほう、それはめでたい。という事は、ミカエルの奥様かな? それともハロルドかい?」
「うーん、そういう家族じゃないんだけど、なんていうのかしら……養子? みたいなものかしら」
「そうかい。陛下は我が娘とか言ってそうだね。ミリアちゃんは妹が出来て良かった。ミカエル辺りはプロポーズしていそうだ。ハロルドは……弟分だとか言ってそうだね」
さ、さすが魔法使い様っっ。
みんなの事を良く分かってらっしゃる。
それとも、水晶かなにかで見ていたのかな?
「は、初めまして! リアーナと申します!」
「ご丁寧にありがとう。私はマグダットだ。しがない魔法使いだよ」
マグダットさんから差し出された手を取り、挨拶を交わす。とても温もりに溢れた暖かい手。でも、皺一つない肌が気になってしょうがない。
「年寄りなのに、若くて驚いてるのかな?」
「あ、いえっ! そ、そのっっ」
「も~う、うちの可愛い妹に意地悪しないでよ先生!」
「はは、すまなかったね。さあ、二人とも中へ入りなさい」
マグダット先生のお家の中へお邪魔させて貰うと、中は本棚が沢山並んでいた。
「凄い……」
「本がいっぱいで驚いたかい?」
「あ、すみません……」
「良かったら、気になる本を見てて良いよ? その間に、お茶を入れてこよう」
お言葉に甘え、マグダットさんがお茶を入れて来てくれている間に、棚にぎっしり詰まった本を手に取ってみた。
どれも年季が入っているけど、埃はついていない。
難しそうな単語の数々に、少しクラクラしてくる。
その中でも私が読めそうなものは、『初級魔法講座』と題名が書かれた本。著者の名は、マグダットさん本人のだ。
「あ~! それ、懐かしい! 私も良く、それを見て勉強してたわぁ」
「て事は……これからは私のバイブルだね! あ、でも……魔法の適正があるか、まだ分かんないよね……」
「リアーナなら大丈夫よ! 心が清らかな人ほど、適正があるって昔から言うから!」
心が清らかか……それだと、私はダメそう。
だって、結構酷い事考えたりしてるから……。
「あまりプレッシャーをかけるのは良くないよ」
「あ、マグダット先生っっ!? そ、そんなつもりじゃ……」
「ふふ、ミリアちゃんが清らかなのは、間違いないみたいですね」
「か、からかわないで下さいよ!」
お茶を持って現れたマグダットさんに、茶化されるミリアお姉様。その表情は、まるで童心にかえったように輝いていた。
もしかして、ミリアお姉様は……。
「せ、先生! 良いから早くリアーナの適正を見て下さいよ! 今日はそのために来たんですからね」
「そうですか。ミリアちゃんが私に会いに来てくれたと思って、嬉しかったのですがね」
「えっ!? あ、そうなんですか?」
「はい、勿論」
マグダットさんのさりげない一言で、顔が真っ赤なミリアお姉様。今のやり取りで大体分かったけど、ミリアお姉様はマグダット先生が好きみたい。
よーし! だったら私が、キューピットになる!
毎日ここに来て魔法を教えて貰えば、ミリアお姉様も毎日マグダット先生と会えるものね。あ、でも、適正があるかまだ分からないんだった……。
「それでは、ご要望通りリアーナちゃんの魔法適正を見て上げよう。先ずは両手を出してくれるかな?」
「は、はい!」
言う通りに両手を出すと、マグダットさんが軽く握って集中し始めた。どうやって魔法適正を調べるのかは分からないけど、緊張の一瞬なのは間違いない。
「おや……これは……なんだこの魔力はっっ!!」
「わぁっっ!?」
かっ、と目を見開き、突然大声を出すマグダットさん。
私はその声にビックリして、思わず両手を引っ込めてしまった。
「どうしたのですか先生!?」
ミリアお姉様もマグダットさんの大声に驚いたのか、ビクッと、しながらもその理由を聞いてくれていた。
「リアーナちゃんは……聖魔法の適正を持っていたみたいだ」
「え!? それって、凄いじゃないですか!」
マグダットさんの発言を聞いて、またも驚くミリアお姉様。私は聖魔法と言われてもピンと来なくて、つい小首を傾げてしまった。
「凄いのはそれだけじゃない。驚くべきはその魔力量だ。その魔力量は、私の比ではない!」
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