種書き

ひとくちコラム

「オリジナリティ」や「斬新さ」とは(前)

 今日は少し、創作の核心に踏み込んだ話。

 まず、基本的に(前も言ったけど)ながやんはドロップ・アウトした人間、落伍者らくごしゃですん。売れる作品が書けなくて、いらない人間だと評価された作家なんですね。や、卑屈になってる訳じゃなくて、厳然たる事実、現実です。

 現状、そういう人間が創作のノウハウをここで語っている。

 これを前提条件として、必ず知っててほしいなと思いました。


 恐らく、これを読んでるあなたはまだ、評価が定まっていない人間。


 もしプロになったら、そこからの実績をいいものにしてほしい。


 だから、ながやんの創作論は参考にしてもいいし、無視してもいい。


 できれば成功者が出してる創作本なんかも、合わせて読んでほしい。


 そういう感じです。

 ではでは、今日はタイトル通り……オリジナリティや斬新さを語っていこうと思います。

 そもそも、オリジナリティってなに?

 斬新さって、どういうこと?

 これを言語化して可視化し、手に入れたり使ったりできるノウハウを技術論として確立する。まあ、前後編に分けてこれを解説していこうと思います。

 これを書くことで、自分自身も改めて整理していけますしね。




 では、まずはオリジナリティ。

 これ、皆様の中では「今までになかった画期的なアイディア」とか「自分の独創性から生まれた自分だけのアイディア」だと思われてませんか?

 それも間違いではないですが、少しハードルが高いかと思われます。

 オリジナリティ、それは「」であり「」ですね。

 それを読者が感じたなら、それがオリジナリティです。

 逆に、読者がそれを面白いと思ってくれなければ、ただの個性的なだけの作品で終わってしまうでしょう。

 オリジナリティとは「その小説でしか味わえない面白さ」なのです。


 オリジナリティを作るには、どうすればいいのか?

 創作ノートに向き合い、鉛筆を握ってウンウンうなればいいのか? 瞑想めいそうをしてみるのか? 突然創作の神様が降ってくるのを待つのか? ぶっちゃけ、それで上手くいくなら全部ベストなアンサー、最適解だと思うんですよね。

 上手くアイディアを出せる人は、その方法を大事にしてください。

 正解のないといにも、その人が感じる信頼感や安心感はあるでしょう。

 ここでは、そうした感性や情緒を用いない技術的なノウハウを少し語りますね。


 ながやんの中でのオリジナリティ、これは「」だと思ってます。組み合わせなので、二つ以上の要素が結びついた化学反応のようなものです。

 例えば、ハイ出ました!

 いつものガンダムトーク、出ましたよ!

 何故なぜガンダムが、あんなに大ヒットしたか。テレビ版が打ち切りになっても(因みに日本で初めて機動戦士ガンダムが打ち切りになったのは青森県です)人気が続き、劇場版の制作で爆発的にブームになったのは、どうしてか!

 これが「今までにない組み合わせで構成された物語」だったからです。

 ガンダム以前は、いわゆるスーパーロボットブームでした。一騎当千のオンリーワンなロボットが、怪獣めいた悪役メカを倒してゆく。主人公は熱血漢で正義感が強く、勉強もできてバイクを乗りこなしたりスポーツ万能だったり……あと、美人が近くにいたり。

 でも、ガンダムは違うんですよね。

 個人的にガンダム(RX-78-2ガンダム)はスーパーロボットだと思ってますけど。


 ガンダムは、今までのロボットアニメの文法に「敵味方が同じパッケージ規格のロボットを運用している」「ロボットを量産される兵器としても描く」「子供向けアニメの中で、大人の鑑賞にも耐えうるドラマを盛り込む」といった要素が組み合わされています。

 明日の後半で語る「斬新さ」も、ここに含まれています。

 今までになかったんですよ、ロボットアニメには。

 ガンダムの戦い方や無双っぷりは、これはスーパーロボットらしさに溢れています。しかし、乗り手やその周囲のキャラたちが、実に人間らしいドラマを生み出していました。




 ガンダムが画期的な要素の組み合わせで生まれていても、実はその要素の一つ一つは割と以前からあったもの、ありふれたものなんです。テレビドラマを見れば人間模様の面白さは無数にありましたし、ミリタリーティストもSF映画に多く取り入れられてます。

 大事なのは、それを「ロボットプロレスがメインの子供向け娯楽」に盛り込んだこと。

 ありそうでなかった組み合わせで、これは本当に素晴らしいものです。

 他にもロボットアニメには「ロボ×アイドル×歌」のマクロスとか、「ロボ×異世界転生×中世騎士道物語」みたいなダンバインがあります。

 そう、オリジナリティとは「既存の要素を組み合わせて生まれるもの」でいいんです。


 組み合わせ方にはコツがあります。

 まず、主題に対して一見して関係なさそうなもの、むしろ真逆のものを結びつけてあげることです。ロボットという科学文明が生み出したマシーンに、歌や騎士道を交える。そうすることで自然と、今までにない世界観が生まれます。勿論もちろん、ロボット自体のデザインも大きく影響を受けるでしょう。

 この要素を洗い出す作業が、いつもやってる種書きなんですね。


 では、この組み合わせる要素のなかに、自分が考えた今までにないものを盛り込むのは、これはどうでしょうか?

 結論から言うと、ぜひやるべきですね。

 ただし、その内容と量には気をつけてください。

 用法用量を守って、というやつですね。


 作家は生きている限り、あらゆることがインプットです。飯を食っても、街を歩いても、五感で感じる全てがインプットなんです。自ら創作物に触れてゆく能動的アクティブなインプットもありますが、日々を暮らしてるだけで入ってくる受動的パッシブなインプットもあるんですね。

 で、そうしたものがオリジナリティの部品、要素です。

 自分で部品を作ることも、勿論これはいいことです。

 ですが、気をつけてください……自分で作った要素同士ばかりを組み合わせた作品は、その独自路線の数だけ読者を混乱、惑わせます。

 例えば「自分の考えた異世界×自分の考えた魔法体系×自分の考えた価値観」で物語を書くと……ものすごい説明シーンが多く求められますし、それをはぶくと読者が作品に入っていけません。でも、入るのに苦労する作品は面白さが半減しますよね。

 という訳で、自分でゼロから考えた要素は、ほどほどに入れましょう。

 全くないのも味気ない、いわば料理で言う隠し味ですね。




 で、皆さんは様々な創作物で沢山の要素を知っています。また、日々の暮らしの中にも使える部品が沢山あるでしょう。その全てを並べて精査し、どれとどれを組み合わせていくか……これがオリジナリティです。

 一見して関係が全くなさそうなもの、例えば「最終兵器と彼女」とか。

 色々並べてくっつけたり、また外して別のものをはめこんだりしましょう。

 自分の好きなものだけ集めてまとめるのもいいですが、意外性も大事です。なるべく同じベクトルの要素、似通った親和性の高い要素以外もまんべんなく試してみましょう。

 これが決まったら、その要素同士が共存する世界観や設定、そしてその意味や面白みが読者に伝わるようなドラマで小説を彩ればいい訳です。


 と自分は思っています。

 誰でも最初は「○○○みたいな作品が書きたい」からスタートするのが大半ですしね。模倣もほうから始まり、模倣対象を要素ごとに分解して部品化、それをどんどんストックしてゆく。いつしかそのコレクション同士を組み合わせて、自分だけの作品が書けるようになる。

 これが「換骨奪胎かんこつだったい」「かたから入って型を出る、これが姿すがた」だと思います。

 難しい言葉ですが、なんてことはないんですよ。

 単純に「いいとこだけつまみ食いして集めて、それだけでフルコースを作っちゃえ」みたいな感じです。まずはやってみること、これが一番大事だったりしますね(笑)

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