「オリジナリティ」や「斬新さ」とは(後)

 はい、今日は後半戦!

 みんなが求めてやまない「斬新さ」についても触れていこうと思います。

 例えば、最近世間でヒットした作品、バズってる作品に斬新さは見付けられたでしょうか? 今日で令和二年度も終わりですが、この一年で様々なコンテンツが世に出ましたね。


 鬼滅の刃や呪術廻戦。

 ウマ娘のソシャゲ。

 異種族レビュアーズや無職転生。

 どうぶつの森に、サクナヒメ。

 そして、モルカー。モルカー!

 年度末にはシン・エヴァンゲリオンもありましたね。


 いやいや、豊作でしたね……コロナ禍の中、家で過ごす時間が増えたことも大きかったようです。普段はゲームやアニメ、漫画やラノベに触れない層が関わってきて、消費者の枠組みが拡大したようにも思えました。

 で……ちょっと意地の悪い話なんですが、斬新な作品ってありましたか?

 そう、あなたが一年で楽しんだコンテンツを振り返ってみてください。

 好きなシリーズの続編じゃありませんか?

 漫画やラノベのアニメ化、ゲーム化じゃないですか?

 大ヒットしたけど、目新しさは見つかりましたか?

 さあ、今こそ斬新さという要素を考え直してみましょう。




 斬新さを作品に盛り込むこと、それは実は簡単なことなんです。

 斬新なだけの小説なら、いくらでも書けると思うんですよね。

 ただ、斬新なだけでは面白い作品、売れる作品には絶対になりません。せいぜい、アバンギャルド(前衛的)だなと評価はされつつ、売上には結びつかないパターンですね。

 小説は全てが文芸、小説家だってアーティストです。

 でも、絵や彫刻と違って、庶民の商業娯楽として古くから成立しています。

 プロを目指すなら、作品が商品や製品としても通用しなければいけません。

 趣味で書くにしても、Web上でイイネやPVがほしいなら同じですね。


 例えば、鬼滅の刃。

 非常に素晴らしい作品ですが、目新しさとしてはそこまで突き抜けた要素、目立った要素はないように思えます。シリーズ続編物は除外するとしても、呪術廻戦やなんかもそうですね。

 斬新さで言えば、モルカーやサクナヒメがかなり意外性があった印象です。

 一見して愛らしい癒やし系ショートアニメに見えて、シュールな笑いが止まらないモルカー。そして、農水省公式サイトが攻略wiki代わりになってしまう、本格派稲作を思わせるゲームバランスのサクナヒメ。

 ただ、この斬新さもまた、それ以前に存在した作品の影響下にあるでしょう。

 かわいいキャラでエグいことをやったり、理不尽を見せるスタイル。

 モチーフをゲーム内で徹底再現し、細やかなパラメータで遊ばせるスタイル。

 そう、もうお気付きではないでしょうか。

 ええ、そうなんです……実はそうなんですよ。




 えー、断言します。

 小説もそうですが、あらゆる娯楽コンテンツにおいて「」と自分は思います。

 少なくとも、自分はそう確信しています。

 今、魔法少女モノを作ってますが、ありふれたモチーフだと思います。メインヒロインが「成人女性だけど変身すると11歳の魔法少女になる」という設定だって、よくあるパターンですね。因みにながやん、最近ほぼ同じスタイルをgood!アフタヌーンって月刊漫画雑誌で見ました。

 それくらい、ありふれてるんです。

 これはまず、現代がサブカルチャー文化の爛熟期らんじゅくきに当たるのも大きいと思います。無数のコンテンツが供給過多気味きょうきゅうかたぎみになっていることで、あらゆる作品が「斬新さにとぼしいけど、刺さる人には刺さるもの」になっています。90年代くらいまではまだ、斬新な作品はそれだけで一発当てられたんですけどね。バブルの時代でしたし。




 斬新さというのは、そこまで一生懸命追求するべき要素ではないと思います。

 その理由をこれから説明しますね。

 まず、一つ……あなたが思いついた斬新なアイディアは、それは「」である可能性が非常に高いです。そして、そういう作品が世に出ていることよりも、全く見当たらないことのほうが多いでしょう。

 ググって調べたけど、俺のアイディアは世界初だ!

 既存きぞんの作品に、同じアイディアを使ってるものはない!

 それもそのはず……斬新なアイディアというのは、ほぼ全てが(完全に全てではないですが)多くの先人たちが「使」なのです。

 いきなり主人公の探偵が、全裸でブリッジしながら推理を始める! 斬新! ……斬新ですが、それが一本の作品として成立するためには、妙にハードルが高くなったりしないでしょうか?

 そして勿論もちろん、そんな変態探偵が出てくる既存の作品は少ないと思います。

 逆に、大昔は「主人公の探偵が暖炉前の安楽椅子から動かない! 斬新!」ってのがあって、人気を博しました。結果、後追いで類似作が玉石混交に溢れまくった結果、安楽椅子探偵というジャンルにまで成長したんですね。

 まず、自分が斬新だと思ったそのアイディアを疑いましょう。

 本当に作品を面白くするために必要ですか?

 斬新なだけでは、むしろ作品の邪魔になることも多いんですよね。


 次に、人間の心理のお話。

 人間は大なり小なり、自分が接するコンテンツの中に二種類の異なる期待を寄せています。それはつまり、冒険的な気持ち(斬新さは勿論、謎の展開や巧みな伏線の回収、あっと驚くギミックやトリック等)と、もう一つ……保守的な気持ち(王道やお約束、ハッピーエンドや絶望の中での救い等)です。

 ワクワクドキドキへの渇望と安定志向、この二つが読者の中に同時に存在するんですね。

 なので、斬新さばかりを求めて盛り込み、それだけを押し出すと……読者は保守的な安心感が満たされず、とても楽しむ余裕がなくなってしまいます。読者自身が持ってる知識や体験を元にした、読者の価値観が裏切られ続けると面白くないんですね。


 読者の予想は、これはガンガン裏切っていこう。


 しかし、


 これがまた難しい! これは先日のオリジナリティの話でも触れましたが、物語の大半は「今まで好まれ愛されてきた要素」で構成されているんです。いわば王道、お約束というものですね。そして、その組み合わせや分量の適切さと、ほんのちょっとのオリジナリティがあればいいんです。

 そして逆に、斬新さはこだわってはいけないものだとも言えます。

 前例のないことをやるのは、それは偉大な挑戦でとうとい行為です。ですが、ただ目新しいだけでは武器にならないし、誰もやっていないこと(えてやらなかったこと)をやるのは、これはとても困難が伴うものです。

 斬新さは、思いついても熟考を重ねて、あまり酔わないようにしましょう。

 すげぇこと思いついた! はテンション上がりますが、まずは落ち着きましょう。




 オリジナリティとは、みんなの好きな要素同士の組み合わせである。斬新さとは、昔からずっと先輩作家たちが思いついても敢えてやらなかったことである。全てがそうではありませんが、頭の片隅にでも置いといてもらえれば嬉しいです。

 オリジナリティを出すために、意外な組み合わせ、ギャップのある組み合わせ、そしてちょっとの自分だけの要素を隠し味に混ぜる。

 斬新さは物語を構成する要素にではなく、その見せ方や記述する技術等で出していきましょう。突飛とっぴなことをやっても、実はあまり意味がないからです。

 勿論、ながやんの言う全てが正解ではないですよ。

 もともとベストアンサーなんてないんですから、創作には。

 でも、過去の失敗と成功からは、いろいろなことば学べるんですよねえ。

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