一人夜酒/KAC20219作品「ソロ○○」
麻井奈諏
第1話
「カーッ喉が焼ける」
キツめの日本酒を一気に煽る。
身体は熱く喉は焼けるような感覚になる。
「つまみつまみあー。うめぇ!」
つまみとしていろんな物を用意した。冷奴、枝豆、ポテトサラダ。チーズだって当然ある。
今日は酒をちゃんぽんするつもりでワインも焼酎もハイボールだって用意はある。
「未だに酒の旨さはわからねぇけど、今日は潰れるって決めてんだ」
ロックでお湯でソーダで。いろんな飲み方をしてはグラスを空にしていく。昔からべらぼうに酒が強くて水のように呑んでいた。
「一升瓶位は呑んだか?まだまだ酔えねぇな」
次第につまみを作ってはリビングで食べるのが面倒になり、台所で呑んでは食べを繰り返し始めた。
「あー、つまみ作るの面倒だよな。何よりこんなに作っても食いきれない」
一人で食べるには多すぎる。こんなに料理を作るときは、いつもだったら友人達と食卓を囲むところだが、今日はそうもいかない。
「はぁー、やっぱ酒自体はあんま旨くねぇな。つまみは進むけどよ。もっといい酒買うべきだったか?」
安酒を片っ端から買い揃え。今ならバーでも開けれる勢いのキッチン。スマホを触って写真を撮る。
「あー、写真なんてやっぱ柄じゃねぇな。かなりブレてやがる。まぁ、最低限の事くらいはやっとかねぇとな」
軽く酔い始めたようで水を挟む。
「あーあ、ウンチク垂れる奴が居ないっていうのは少し退屈だな。なぁ?」
ちょうど一年前に亡くなった遺影を見つめる。そいつは酒が弱い酒好きで色んな酒を買ってきては自分は少しだけ飲んであとは俺に押し付けるようなやつだった。いつかは俺の家が酒の保管庫ようになっていた。
「ビール一杯呑んでも蒸留方法が違うだの、ワインは産地が大事だの。日本酒は……駄目だ。覚えてねぇ。お前の話少し位真面目に聞いときゃよかったな」
「酒弱い癖に知識だけは豊富で、酒が好きで色んな酒を呑んでそこら中に吐き散らしやがって」
「……あー、酒自体はやっぱ好きになれねぇ。お前と呑む酒が好きだったのによ……ってまた柄にもないこと言っちまったな。流石に少し酔ってるな」
水を天井を仰ぐように飲み干す。
「……酔ったついでに言うけどよ。お前が死んで、二人きりの飲み会がソロ飲みになっちまった。お前のせいだぞ。他の奴とじゃ酒を飲む気にならねぇし、だから、これから毎年お前の命日にはお前が羨むくらい酒を飲んでやるからよ」
「……まぁ、少しくらいなら、仏壇に、ほんの少しだけ色んな酒を置いといてやるよ。あんまり置くと酔いつぶれるからな」
「俺が死んだら。置いてやった酒の話を聞いてやるからなに飲んだか覚えとけよ」
「まだまだ夜は長いんだ。こっから俺が潰れるまで、お前も付き合え。この為に俺は明日仕事休んでんだ。朝まで思い出話するんだからよ」
酒に今まで一度たりとも潰れたことなどなかった男が初めて酒で潰れて次の日には二日酔いによって家中を汚し、頭痛の痛みにうなされていた。しかし、その次の日なれば清々しい顔で普段の生活を取り戻した。
一人夜酒/KAC20219作品「ソロ○○」 麻井奈諏 @mainass
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます