第42話 魔法彫刻家野村千里

 造形魔法使い野村千里とは彼女が美術大学の彫刻科に進学したときから、友人としてのつきあいを再開した。

 というより、ビジネスパートナーと言うべきか。

 彼女は彫刻を学びながら、プライベートで超精巧な等身大フィギュアを制作していた。それが好事家にとんでもない高額で売れるのだ。

 千里は僕を探し出し、フィギュアの塗装を依頼してきた。謝礼金は僕の月給よりも高かった。

 僕はお金目当てではなく、そのフィギュアの芸術的価値を認めて、塗装を行った。それ以来、年に一回以内という約束で、塗装をし続けている。

 彼女は半ば趣味のようにしてフィギュアを造り続けているが、現代彫刻家としての才能を世の中に見せつけるようになっている。

 正確で精巧な造形をするだけではなく、ある時期から発想力もすさまじい進化を遂げたようだ。

 仏と人間が入り組んだ立体曼荼羅。

 キリストとムハンマドとブッダの三面六腕像。

 オリジナルデザインのエイリアンと人間が対峙している彫刻。

 さまざまな現代彫刻を手がけている。僕には理解しがたい奇天烈な作品もあるが、美術界では高く評価されているようだ。精力的に創作しており、信じられないほど多作だ。

 彼女は今ヴェネツィアに住んでいる。イタリア人サッカー選手と結婚したからだ。

 たまに日本に帰ってくる。そのときは僕に連絡をくれる。時間が合えば、飲みに行くこともある。

 近々日本の有名な現代美術館で彼女の個展が開かれるようである。

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