第41話 黒山月夜は重要人物

 助言の魔法使い黒山月夜さんとは直接のつきあいがないので、彼女が高校卒業後にどのような道をたどったか詳しくは知らない。

 しかし怖ろしく重要な人物になっていることは確実だ。彼女についてのニュースはマスコミやネットにあふれ返っている。

 彼女はまず街の占い師からそのキャリアを出発させたようだ。

 的確で有益な助言がもらえると評判になり、彼女の前には長蛇の列ができるようになった。

 午後七時から占いを始め、どんなに長い列ができていても、午後十時には立ち去った。

 黒山月夜の占い席の前には、開業前から行列ができるようになった。

 彼女の占いは一回千円とその効果に比して明らかに安価なものだったが、ときに高額な請求をすることがあった。

「あなたは超富裕層に属する方ですね。前金で百万円をいただきます」

「あなたは高度に政治的な判断を必要としていますね。前金で三百万円をいただきます」などと言うことがあったらしい。

 黒山さんには助言の魔法だけではなく、人物鑑定の能力があったようだ。お金持ちから高額を取得する点は、中州りりかと似ている。

 彼女は政治的にも的確な助言ができたので、日本政府や国際連合などの顧問等を務めるようになった。

 非常勤内閣相談役という役職に就き、時の政権の政策を左右する提言を行った。彼女の助言には必ず利益があった。そのため、政権与党だけでなく、野党からも頼られた。

 国際連合や大国の政府、多国籍企業などにも大きな影響力を持っているようだ。彼女の助言が戦争を回避させたこともあったらしい。

 環境保護団体やノーベル賞級の科学者などにも助言を求められている。

 つまり黒山さんは世界のVIPである。

 にもかかわらず、彼女は今でもときとして街の占いを行っている。

 誘拐されかねないとして、彼女には常に腕利きのボディガードがついていると聞く。

 高校時代に黒山月夜さんから助言をもらった僕と冬月筆子は、好運だったと言うしかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る