第2話 闇夜の騎士(ブラックナイト)

「いくぞ!!!!!」


「……こい!!!!」


 俺は全力で女騎士を切るべく、刀を抜いた。その時だった。女騎士は突然俺の視界から消え、いなくなった。と思ったら頭上に姿を現し、力のこもった刀で切り付けてくるのが見えた。


「あっぶね!!!!」


 間一髪で攻撃をよけると、女騎士の刀は地面を突き刺し、その勢いで半径二メートルほど地面が割れた。


(なんつーパワーだよっ!!)


 守備的に戦うと守り切れない自信がある。それに、むやみに攻撃をして反撃を食らうのもごめんだ。


 そう考えている暇さえくれない。女騎士はとにかく、早い!


「風みてーに消えるな! 気づいたらどっか切られてそうだぜ」


「風か、いい察知力だ。しかしそんなもの、時間稼ぎにはならんぞ」


 全部お見通しって感じか、だんだんと相手のペースに飲まれないか不安になる。でも、不安になるとかどうとか関係なく、まずは動かないと始まらない!


「隠れているだけかよ、それなら俺から行くぞ。パラディンメーター解放! くらえ、俺の一撃!」


 パラディンメーター解放バースト・3000→5500【リッター・フーベン】


 風のように舞い姿を消す。厄介だけど、俺の推測が正しければ……。


騎士メテ一撃イン!!!!! そこだ!」


 ここ周辺に、女騎士やつがいる!


『『『『ボンッ……』』』』


「あれ?」


 力を込めて放った騎士メテ一撃インは、闇の中でことごとく消された。


「どこに向かって攻撃している。これで終わりだよ。面白いものは見れなくて残念だけどね」


「おい待てよ! 推測が外れただけだ! もう一発かましてやるぜ!」


 今のが外れたってことは、やつはここ一体を囲む風ではなく、人間規模の風、という事だ。本体は一つ。当てれさえすれば俺のk……。


「無理だリッター! 今のお前じゃ勝てない! ここは一旦引こう!」


「……レン。俺は負けてねーぞ……。俺は、勝つぞ!」


 この戦いは勝つんだ。負けないような戦いをしたら、いつか負ける。


 パラディンメーター・10500【ミューラ・アイビス】


「これが力の”差”だ、味わえ。騎士メテ一撃イン!!」


 一瞬時が止まったかのように感じた。音は消え、ただ目の前に迫ってくる”風の斬撃”を見ることしか出来なかった。


「リッター!!!」


 レンがこっちに向かって走ってくるのが見える。俺はまたお前に助けられるのか。いつかお前を助ける日が来るのだろうか……。


 いや、今に決まってんだろ。


 ここであいつを倒すことで、俺はレンを救い、借りを返せる。


『『『『ズバッッ!!!』』』』


「なにっ」


 パラディン流・カウンター


「風をまといし、騎士を抹殺する騎士狩り界のギャング、風魔騎士・ミューラ。まさかブラックリストに載っている有名人に会えるなんて、思ってもいなかったぜ」


 とんでもない大物に喧嘩を売ったな。レンを巻き込んだのは俺の責任だ。ここで俺は勝つ、それしか助かる方法がない。


「今気づいたのか、今更だともう遅いぞ。どうだ、拘束されるか、それとも殺されるか?」


「いーや。おれは負けねーよ……」


「こいつ、これでも分からないのか、力の差を」


 パラディンメーター全開放フルバースト・5500→11000 【リッター・フーベン】


「俺は、勝つ!!!」


「ふ、全開放フルバーストだと?! なぜあのガキが、あれほどのまでの力を出せる……」


 リッターは生まれつき強大な力を蓄えており、その力は放出する時間によって異なる。


 8年前、リッターがまだ8歳の頃。リッターとレンが盗賊団に襲われた時のこと、リッターから突如放たれた力により、盗賊団は跡形もなく殺されてしまった。


 それは満月が照らすのこと。その姿を見たレンは、神話に出てくるとあるの名前を思い浮かべた。


『黒き闇より放たれる力をまといし者。名は、黒点の覇者 闇夜ブラック騎士ナイト。彼が現れる時は必ず、太陽が姿を消す真夜中だ』


「風魔騎士・ミューラ! これが最後の一撃だ!」


「かかってこいっ!」


 パラディンメーター解放バースト10500→16000【ミューラ・アイビス】


騎士メテ!!!」


(こいつ、剣を捨てて拳を突き付ける気か?!)


「旋風・セフィラ!!!」


『『『『ドゴゴゴゴゴ』』』』


 2つの強力なパラディンの衝突により、強大な衝撃波が生じた。


「なんて、強さの衝突だ。リッター!! 大丈夫か?!」


 舞い上がった砂埃すなぼこりは時間と共に風に飛ばされ、その中から1人の影が見える。


「レンっ、俺は。勝ったぞー!!!」


 砂埃が完全に消え、そこに居たのは両手を広げ勝利を喜ぶリッターと、地面に負け伏せるミューラがいた。


「リッター、お前ってやつは、無茶しやがる」


 レンの口からは喜びと心配の声がリッターへ向けられる。


 大きな格差がありながらも勝利を掴んだリッター。その反動は大きいものだ。


「みゅ、ミューラさんが、負けた?!」


「逃げろー!」と一目散に騎士たちはこの場から逃げ出した。


「レン、勝ったぞ俺、格上に」


「あぁ、騎士狩りのドンに、騎士狩りで勝ったぞ!」


 するとリッターは倒れるかのように地面に仰向けになる。


「おおいリッター、 大丈夫か?」


「大丈夫だ、それよりも、眠い……。ガァァァァ」


「寝るの早いな。確かに、もう夜が開ける」


 空に少しずつオレンジ色の光がさしこんでいき、山の頂上から光の源が顔を出す。


 レンも地面に仰向けになると、すぐに寝てしまった。









 ⁑ パラディン図鑑 ⁑





 ・ 闇夜ブラック騎士ナイト…神話に基づくと真夜中にしか姿を表さない騎士。その為、あまり知る人がいない騎士だが、その力は強大なものであった、と記されている。【魔族騎士物語】



 ・ 風魔騎士・ミューラ…騎士狩りのギャングで知られ、風魔騎士団の団長でもある。パラディンメーター10500、解放バースト時は16000と騎士の中では中位に位置する力を持つ。風魔とあって、風を操る騎士である。





























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