【試作版】パラディン・ワールド

ちとせ そら

英雄騎士・パラティヌス

第1話 パラディン・ワールド

 今から約30年前。世界『ネプチューン』に一人の英雄が現れた。彼の名前はパラティヌス。彼は今までにない快挙を果たし、後に”英雄騎士”と呼ばれるようになる。



 パラティヌスは現役の騎士を辞めるときに人々にこう言った。



「世界最悪の敵はそう長くないうちに復活するだろう。そのころの俺には最悪の敵を倒すほどの力はないだろう。その時、奴を倒すことが出来た者こそが”二代目の英雄騎士”となるだろう。俺は信じている。その者が現れることを……」



 英雄騎士は最後の言葉を言い残し、その後姿を消したまま行方が不明となった。



 英雄騎士がいなくなった今、騎士の新時代パラディン・ワールドが幕をあげる! 






 それから29年後……。



「本当に行くのか、リッター」



「あったりめーよ。これも、最強の騎士になるための一歩だろ」



 夜の茂みには二人の青年の影があった。茂みの先には、何十もの武装をした騎士たちが集い、野宿をしているところだった。



「流石に分が悪い。今日は一旦引こう」



「なぁにビビってるんだよ。レン、お前はそこで待ってろ。俺一人で行く!」



「ちょっとリッター! って、えぇぇぇぇぇ!!」



 さっきまでいたリッターの姿はなく、まさかと思い視線を戻す。そこには敵の騎士に片足を持たれ、ぶら下がり身動きのとれないリッターがいた。



(あのバカぁ!!!)

 リッターの奇行ぶりに、レンは呆気をとられていた。



「離せよこのやろー! 戦ったら俺の方が強いんだぞ!」



「こいつ、自分が今どういう立場かわかんねーのか?」



 ワハハと騎士たちから笑いが生まれる。



「くそ、いつ助けにいくか……」



 レンは集団のすきをついて、リッターを助けるタイミングを見計らっていた。



「お前、一人か? か? 運が悪かったな。お前一人じゃ俺らには敵わないぜ」



「俺は一人でなんか来てないぞ! レンが助けてくれる! レンからしたら、お前らなんか道端にへばり付いてるコケと同じだぞ!」



「やめないか、お前ら」



 堅苦しい男の声とは対照的な女の声が背後から聞こえた。と同時に、リッターの片足は解放され頭から落ちた。



「いってえぇ! 扱いひどくない?!」



 リッターは痛みのあまりに、頭を左手で抑える。



 顔をあげると、そこにはちょっと小柄な女騎士が立っていた。



「綺麗な腹筋ですね……じゃなくて、レン、大丈夫か?!」



 レンは腹筋がきれいな女騎士に捕らわれていた。



「へぇ、素直じゃない」



「おいリッター! 先行きやがって、終いには捕まっちゃったけど。なんだよ綺麗な腹筋って、ちょっとは今の状況を理解しろよ!」



「威勢がいいのね二人とも。で、二人はここで何をしていたの?」



 リッターが変なことを言わないよう、レンは先に口走る。



「別にやましいことをしようっては思ってなかったんだ。それで……」



「いわゆる騎士狩りってやつだ! 俺があんたらより強い、これを証明するだけのことよ!!」



(このばか!!……)

 リッターの異常ぶりに、レンは何かを諦めかけていた。



「そう。なら、勝負する? 二対一でいいよ」



「あぁ、そうこなくっちゃな!」



 リッターはすっかり喧嘩腰になり、レンはあんまり乗り気ではないようだ。



「俺とあんた、一対一のタイマンといこうじゃねーか!」



「おいリッター、あんまり無茶するんじゃねーぞ!」



 見てわかる。この女、強い! 周りの騎士一人一人も強そうなのに。見るからにこの女はこの騎士団のトップだろう。今のリッターでは、勝ち目はない。



「レン、お前はそこで見てろ。今になってわからせてやるさ」



「へぇ、かなり自信があるみたいだね。そんだけ自信があるんだ、少しは面白いものを見させてよね」



 この女、PM(パラディン・メーター)いくつだよ。勝ち目はない、分かっているけど。負けられない!



「いくぞ!!!!」



「……こい!!!」



 










 ⁑ パラディン図鑑 ⁑





 ・ 騎士狩り…騎士団同士の下剋上のようなもの。パラディンメーターが低い騎士団が、高い騎士団を倒すことによって、敗者は勝者の傘下につく。



 ・ パラディンメーター(PM)…騎士個人の強さを数値化したもの。英雄騎士・パラティヌスが現役を辞めた後にできたもの。ちなみに、パラティヌスをパラディンメーターで表すならPM50万相当になる、と噂されている。








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