8るん♪ 重い、しんどい、だから楽したい
「アノ……てるよサン」
昼食後、一息ついた頃に、ミヒャンは、上目遣いでどことなく遠慮勝ちに訊ねてくる。
「なぁに?」
「コノ後、家、建テルデスだカラ」
申し訳ないさそうに、モジモジしながらさっきまでのスパルタミヒャンとは別人みたいな態度に、嫌な予感。
「ほへ?」
「船、壊レタ、沈むマス。スグ分かラ無イだカラ。
「……だよね、かなりボロボロになっちゃてたし、もっかい台風とかが来たら、
コクリと当り前じゃんって感じにミヒャンは強く頷いた……
「ワ、私、( *´γДノ`)マイウ~沢山、沢山、沢山、頑張ッタデスだカラ」
「あ~ね、いっぱい練習したもんね。一応、( *´艸`)まいう~だかんね」
ミヒャンには、まだまだ修行が足んないなぁ、よっし! ここは鬼教官輝代さん降臨しなきゃだな、うん。ミヒャンが、泣いても泣いても心を鬼にして( *´艸`)まいう~伝授任務遂行決定よね。
「(何か凄い怖い事を考えてる目です…)ハ、ハイ。私、頑張ルだカラ」
「やっぱ積み荷はオールヤっちゃうの?」
「ハイ?」
「あぁ、全部降ろさなきゃなの?」
「ソウデス、船デ見ル、危ナイ事、起コル少シ、予感だカラ」
私達の目線の先に見える船は座礁している、その船体の右側には超でっけ~穴っぽこが開いてるんだよね……これ、沈んじゃう系? つーか時間ない感じっつーハルマゲド~ン襲来だわよコレ。うん、早く降ろさないとだねぇ~。
ミヒャンは偶然だと言うけど、彼女の操舵が上手かったって思うくらい、下船する為のタラップは船の左側に付いてて……正確には右舷っていうの? その右舷側が岩場と砂浜の切れ目に丁度下せる感じになってた。穴ぽこは左舷ね。これって本当に偶然なんかで、寄せらんないって、そんだけ操舵の腕が超スゴイって分かっちゃった。mjスゲー。
んでも、あの量の密輸品っしょ~? ……うげぇ、考えただけで、疲れちゃったじゃんよ。
「い、今から、スグ始める?」
「ハイ、デス。時間、経
ミヒャンの表情は若干の焦り的な汗が流れんだけど、大丈夫なんだろうか?私は既に無理っぽなんだけどねぇ……あはは。
「
本音はミヒャン一人にやって欲しいってか、ヤレ! ってだけど。それはそれでお姉さん位置にいる私の立場が崩れてしまうかもだからね、頑張るっきゃない。
「りょ! じゃぁ、積み荷はテケトーに下ろしてもいい?」
「私、見タラ分カるデスだカラ。一緒に仕事スるデス」
腕まくりをする彼女の頼もしさって言ったら、超イケジョ! 嫁にしちゃうよ? 誰かがね。
私はイケメン捕まえっから、ミヒャンもイケメンに捕まれ。イケメンの前には女の友情だのなんて些末な事ってのは世界共通って聞いたことがある様な無い様な? なんて考えながら、二人して船に乗り込んだ。目的は倉庫&船の備品系。
「いっくよ~」
「ハイ、デス。てるよサン」
と気合を入れたんだけど、階段で転んだ私……幸先不安ってな顔をしなでよね、ミヒャン。お願いだからさ。タハハ。
んでもって、倉庫の密輸品を見上げては溜息しか出てこねぇ~。私、溜息ガールの称号持ってっかもね。…はぁ~。
「てるよサン、ソノ
「うぃ~、これね、コレコレ。うんうん、はいはい……はぁぁ」
うおっ、これは私達に一番ひ
「っ!」
痛い痛い痛い痛い、痛いよ。分かった、分かったから脇腹の肉掴みなさんなってばぁ。なんか、段々容赦なくなってきてね? ミヒャンさんってば。
そんで作業再開。まずは、衣服類を率先して降ろしていくみたい。流石ミヒャン、的確な指示。惚れちゃうわぁぁ、どっかのイケメンがね。
「よいっしょ、うんっしょ」
軽いとはいえ、5回も往復してたらさ誰だって疲れるのは当たり前。私は既に息が上がりかけてきてんだけど、ミヒャン……っぱないす。全然疲れた様子がない。お天道様は絶賛真上を通過中なので3月と云えども、暑い。mj暑い。
5回くらい運ぶのは普通疲れない? んな訳ないじゃん。ミヒャンが異常よ、異常。もしかして隠れゴリマッチョなんじゃないの? だから、痛いってば。肉摘まむなって~の! はいはい、ちゃっちゃと運びますよ。つか、後で覚えときなさいよ。
「てるよサン、今度ハコレ運ぶデス」
「一応、中身を聞いてもいい?」
「……ボソッ」
「ん? 聞こえないんだけど?」
「……デス」
「はい? だから聞こえないってばさ」
「生理用品……デス」
「ナプキン系か、それは大事だわね。オーケイ、Don’t worry、任せなさい」
ミヒャンってば、何を恥ずかしがっているんだか…たかがナプキンじゃん? 女二人しかいないのにね。
ま、まさか! ミヒャンあんた、百合ッ
ミヒャンがいつの間にか私のことを“てるよサン”から“お姉さま”になってたらどーしよー。もっかい海に逃げる……ってのはナイナイ。別居がいいか…誰が家作んのよ。
◇
もう何回船と浜辺を往復したんだろね? そろそろ休憩とかして欲しいんだけどなぁぁ。
「ミ、ミヒャン。そろそろさぁ」
「ハイ、コレ運ンダ、休憩デス」
……うぐ、あと一回、一回怖い病の私としては直ぐにでも休憩したい。まぁ、あれよ、あと一回、一回だけだから、本当に一回だけだよと何回彼氏に言われて嫌な思いしたかを思い出しちゃう。トレウマとまではいかないけどさ「お願いあと一回」は卑怯よね。断れない状況の中で言われちゃったら100%やんなきゃじゃん。つか、思い出したらイライラしてきた。
「やったろうじゃないのよぉぉ。コンニャロォォォ」
最後の力を振り絞り的な気合でそこそこ重いダンボーを持ち上げ、すたこらと船から浜辺へ小走りで持って行ってやった。
「こ、これで休憩よっ」
「てるよサン、元気。ダカラ……」
「ちょ~~っと待てぃ~。さっき休憩するって言ったよね? コレ運んだら休憩っつーったよね!」
「ハ、ハイ」
あっぶねぇ~、ミヒャンは絶対に“もう一回作戦”言い出すとこだっよ。そうはさせないんだかんね。ふい~。
私の剣幕に若干引きつった顔のミヒャンは、何か言いたげにしてた。んだけど、それは許さない照代さんですよ。
「30分は休憩ね、つか、もうクタクタで、それっくらい休まないと、mj運べないから」
「…ハイ」
んで、さっき運んだ箱から「や~いお茶」を出してクピクピと飲み、乾いちゃっている喉に潤いを~って一気に飲みした。ゲホゲホ、あう。
「てるよサン、大丈夫デスカ?」
「ゲホッ、うん、
「ヨカッタだカラ」
んで、ゴホゴホしながら「や~いお茶」を手渡すと私の横にチョコンと座り、お茶を飲み始めるミヒャン。ちょっと…近くね? 気のせい、だ・よ・ね?
つかさ、時間ごとにこの子、私との距離が狭まってる感じが否めない。ってか、百合ッティーは
そんな事を考えてたら、休憩時間はあっと言う間に終わって、重くなった腰をうんとこしょって持ち上げ、まだ始まったばかり? の荷下ろし作業に取り掛かる私達。
そんで、気が付きゃぁ太陽は傾いていて、感覚で言ったら夕方4時前くらいかな。んで、運び出せた荷の量はってぇと……1割逝ってねんじゃね? ってくらいしか終わってない。
密輸品多すぎだぁぁぁぁぁぁ、何でこんなにあんのよ。多すぎんだってば。常識ってもんを考えないさいよね。って、密輸する奴らに常識を求めての仕方ないんだけど。文句ぐらいは言わせてよ。mjd。
「……ミヒャン、荷物今日中に終わんないよ?」
「
「だよね~」
「多分、一週間カカルだカラ」
「え?」
「頑張りマショ」
「……うぇい…Yes Mum」
殺人的作業は地獄の入り口と誰かが言ったとか言わないとか思っても過言じゃない積み荷の量を、たった二人の美少女達で全て降ろさなきゃいけないからってね……胸中で語る不満募らせて、現実逃避をしようとした瞬間に、積み荷の中にとあるモノを見かけたのを思い出し! 閃いた。ピンッと来た、アハッって感じにビビッと思い浮かんだNice Idea。
「ミヒャン、船から海に落としても大丈夫な荷物はさ、海に落としてから回収しようよ?」
「ン~、ソレハ……多分、モット大変」
「そうかなぁ?」
「ソウデス」
「そうかなぁ?」
「(これは、てるよサン、引かない感じですね)ハ、ハイ」
「そうか」
「イ、一回ヤッテミルだカラ」
「だねだね、一回やってみないと分かんないよね。うんうん」
よぉし、手抜き…じゃなかった。
「ふっふふ~ん♪♪♪」
船が突入した場所は入り江になっていてCの入り口をやや塞ぐ感じに座礁してるから波もそんなに高くないし、これは絶好の投げ入れちゃってもイイよー的な状況って云えるわ。
状況を上手く利用する事を思いつくなんて、輝代さんってば、やっぱ才女の要素満載って事じゃないの? いやだぁ、もっかして私覚醒しかけちゃってる?
「(一回経験したら、どれだけ二度手間かわかる筈。ここは彼女のしたい様にさせておこう、
私がサポートすればいいだけだし)……」
ミヒャンは、なんだかニコニコしながら私を見ていた……つか、百合ッティー勘弁ね。
◇
んで、これは大丈夫、これは手運びと選別がある程度済んだところで船上から投げ込むのはミヒャン。で、ゴムボート待機は私って事に。
「準備OKだよー、じゃんじゃん投げちゃっていいかんね~」
「ハーイ、ナ、投げマす」
ポ~ンってな効果音が似合う感じに荷物が甲板から投げ出され、計算されたかの様にボートへ影響が無い位置にドッポ~ンって落っこって水柱が立つ。
風に煽られた細かい水しぶきが虹を作って、思わず綺麗だぁぁって感動しながら櫂でボードを荷へ進める。
「あれ? ちょっとぉ、なによこれ。中々進まないじゃないのよ」
そう、私ってばボートを漕いだ経験なんてナッシングだったのに気づく。
「ちょっ……この作戦が成功しなかったら、また手運び地獄が始まるっちゅーのは避けないとだからね。根性、気合、和気あいあいよ」
左、右に櫂を漕いで何とか荷を捕まえる距離までこれたんだけどね……Big mistakeはここからだった。
よっこらっしょって荷をボートに引き上げようとしたんだけどね……あはは、私が荷の重さに負けて海の中へ落っこちた。
「ゴッバァ、プッハァ。ちがうちがう、そうじゃそうじゃない。何で私が落っこちるの? こう、パパパってボートに引き上げて、スイスイと浜辺にって……あれ? どこで計算間違ったんだろ?」
ミヒャンは甲板から心配そうに私をみているんだけどさ……荷物はボート上げるどころか、全然無理。仕方なく、ボートはそのまま置いて、荷だけを浜辺方面に引っ張っていく私。
ボートにしがみつきながらだったら超めんどいし、進まなかったと思う。mjd計算間違った。つか、余計な体力消費で疲労困憊。パイのパイの実。
「なんでよぉぉぉぉ」
何とか一つ目の荷を砂浜の上に引きずって、ゼイゼイ息を吐き、頭にきちゃった私は、堪らず絶叫したんだよ。せざるを得なかったつーか、自分の莫迦さ加減にいたたまれずに大声で叫んで、このストレスを発散したかった。
「mjdムカつく、こっちの方がすんげー疲れるんですけど? 私、楽な方へ楽な方へって安易に考えたのが悪手? ……んだよね。はぁ~」
荒れた呼吸が落ち着いた頃、砂浜に座り込んで空を見上げ、一人
「(これで、気が付いてくれると良いのだけれど)」
未だに甲板から心配顔のミヒャンには、とりま手を振って“一個目運んだ”アピールをしたんだけど……コレ……失敗だよね。はぁ……。
つーことで、大いに反省して目下手運び作業続行中な私。
「ひぃ~、ひぃ~、ふぅ~。もう無理、運べないし
「てるよサン、予定、マダ」
「……ハイハイ、運びますよぉ。死ぬ気で運びますよぉ」
◇
浜辺に敷いたブルーシートの上に運んできた荷物をドンッと下して、愚痴愚痴と文句を垂れながら、再び船へ向かう。
そっから数え切れないくらい往復。そんで今日の分を下した時には辺りはすっかり日が暮れていて、夕闇迫る中、ミヒャンが手早く点けた焚火の明かりとほんわかな焚火熱が海風で冷えてきた体と精神的に疲れた私を温めてくれる。
「終わったぁぁぁぁぁ」
「てるよサン、頑張ル出来たデス。凄いデス」
ポ~ンと放って寄こされたペットボトルは上手くキャッチ出来なくて浜辺の砂がびっちり着いちゃったけど、波打ち際で洗って砂を落としてから封を開け、今度は咽ない様にゆっくりと飲む。
「んで、晩御飯なんだけど……缶詰でいいよね?」
「私ガ準備、終ワッタだカラ」
「ミヒャン、用意してくれたの?」
「ハイ、準備簡単、スグ、ゴ飯デス」
「ミヒャンありがとう、マジ、テンキュー」
「ドイタシマシテ」
「あっ、でも、疲れちゃっててダルいからさ、“( *´艸`)まいう~”の練習は無しになっちゃうけどいい?」
「ハイ、大丈夫(やったぁ)」
どことなく嬉しそうなミヒャン……( *´艸`)まいう~の練習がしたくない? いやいやいや、それはないっしょ。昼ご飯の時だって一生懸命にやってたしぃ。ま、今日はご飯食べて、早く寝たいくらい疲れてっから、まずはご飯ご飯。
「晩御飯、日本ノ缶
「おおおお、これはサンマの蒲焼とサトォのご飯だ、ミヒャン、ナイス!
「ハイ、
んじゃぁ、ミヒャンの用意してくれた日本食を堪能しますかぁ。
「いただきま~す」
「
疲れていた所為か、昼とは違いガッツク事はしないで、ゆっくりと一口一口噛みしめる様に食べる。そんで、荷物運びは往復47回もしたとか、服類は半分くらい降ろしたから明日以降も引き続き服系を下して、明後日くらいから重い系が沢山あるだの、も~ちっと運び方を工夫して、大変さを減らしたいなんて話なんか色々とした。、
「ごちそうさまでした」
「
満腹、満腹。んで、寝床を用意する前に彼女に一つ提案してみる。
「船のシャワーってまだ使えると思うんだけどさ、正直、海に落っこちたのもあるから、髪パッサパサでキュシュキュシュしてっから、シャワー浴びてきたいんだけど。いいよね?」
「船、沢山危ナい。デモシャワー、
だねだねぇ、やっぱさ、シャワーは一日の終わりにはネセサリーだよねぇ。キレイキレイにしないと寝れないしね。まぁ偶にコンパでデロンデロンに酔って帰った時はノーカンってのがJD輝代さんの日常だからね。不幸にも遭難したとは云え、シャワーが使えるなら使うのがシャワーちゃんに取ってはウレシー筈。だってシャワーちゃんからしたら使用されるのって存在意義じゃん?
つーことで、下ろし終えた荷の中らか着替え諸々を取り出して、意気揚々と二人して船のシャワールームに向かった。もち、目を付けてた『ブラちゃん&おぱんちゅさん』サイズの合った上下セットがあって
勿論、ミヒャンとは別々に浴びたのは言うまでもないわよ。百合展開はないかんね、絶対。期待してもmj無駄無駄ぁ。
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