6るん♪ 目覚めは最悪 ~私は哀の難破船~


 「痛ぁぁぁぁぁい」


 目覚めは最悪。頭ぶっけちゃった挙句の気絶なんて,二度とゴメンちゃいちゃいの許してチョンマゲって叫びたいくらいよ。いつつつ。


 経験者なら分かるハズよ。今回私も晴れて経験者の仲間入り……ってんた訳ないじゃん! 症状から云うと、頭がぐゎんぐゎんして激痛で目覚めるんだから気分テンションは即効で駄々下がリンリンランラン・・・・・・・で、患部にちょーっち・・・・・でも刺激があると、ユアァァ・ショックッ! でたわばのあべし状態つー事。分かる? mjマジ最悪って云う、痛いの痛い飛んでぇぇいかないゼミのコンパで調子こきまくって飲み過ぎた次の日の朝『お酒なんか二度と飲まね~』ってな夕方にはすっかり忘れている誓い的な感じ。いつつぅ。


 私は、ズキズキする頭をナデナデしながら起き上がった時に何か足りないと思った事に気が付く。


 「あれ? ミヒャンは?」


 キョロキョロと見回すけっど、彼女の姿が見えやがらない。度、ド、ド、どこに行ったの?つーか、もっかして甲板とかに投げ出されちゃったぁぁぁ? 超焦った私は、頭が痛いのも忘れちゃって撥ね弾ける様に操舵室から甲板に続く扉を開け、顔面から船縁に立っていたミヒャンにロケットダイブする感じで特攻してた。


 「あぎゃ!」


 「…っ!ア、てるよサン。見テ下サい、島ニくル、出来マすタヨ」


 手摺を掴み、暴風雨吹きすさぶ入り江らしき目の前の風景を指さして歓喜の声を上げながら、転んでいた私に気が付いて、彼女は手摺から手を離して、痛ぇ~痛ぇ~とボヤいている私に差し伸べてくれた。


 「ぅん、あんがと……ってミヒャン、折角シャワー浴びたのに全身ずぶ濡れじゃんよ…って私も同じか。あはは」


 そう、未だに台風の雨と風が船上の私達に対して、ビシビシと叩きつけられていて、思わず豆撒きの日に鬼役をやった事を思い出しちゃったわよ。あの時はmjd豆が弾丸かよ! とか思ったもんね。トラウマになりかけたシチュを思い出しながら、差し出されて手を掴んで、ミヒャンの横に並んで立った。


 「つか、雨、マジで痛いんですけどぉ。ミヒャン、操舵室に戻ろ? 風邪ひいちゃうしさ」


 「ソウ……デスネ、ハイ戻リマショッ、てるよサン」


 まぁ、ガガガって音と衝撃の件は、落ち着いてから考えればいいやってな感じで避難する様に操舵室へと逃げ込んだよ。いやぁ、mjdマジで風邪引きそうなんだってば。



 ◇



 んで、一先ず着替えてからペットボトルのお茶を飲みながら状況をば確認しよーって二人で会議的な雰囲気を醸し出し……てはないんだけど。…うっさいよ。

 コホン、まぁ、そうユー事で状況を認識してから色々考えなきゃって風になった訳よ。分かる? 結構面倒なんだかんね? ……はい、そこ、莫迦とか思わない。


 タオルで髪の毛をゴシゴシしてッて……たん瘤出来てんの忘れてたぁぁぁぁ。


 「痛ぅぅぅぅ」


 「大丈夫デスカ?」


 「うん、でーじょうぶ大丈夫でーじょうぶ大丈夫。つかさ、さっきの“ガガガ”とか、何だった訳?」


 「エ~と、デスネ。船、岩、ブちゅカリマシタ……沢山ブちゅカリマシタデス」


 「やっぱぶつかった音だったんだぁ、衝撃もヤバかったねぇ」


 「私ノ運転・・、下手。ゴメンナサイデス」


 「いやいやいやいやいや、そうじゃないって。ミヒャンの所為じゃないよ。つか、ミヒャンの御蔭で奴等から逃げきれたんだし」


 ん? と首を傾げた私の仕草にミヒャンは逃げきれてた思うと戦果? を報告してくれた。


 「んだから、このたん瘤は名誉の負傷つー事よね、うん」


 とは言ったものの、痛みが引くことは無く、ポーカーフェイスで心配そうにしている彼女を労う的な感じなイミフー言動で誤魔化しにかかったんだけど、彼女ってばさ、頭いい(はずだ)から、こんな見え見えの大根演技なんて見通しちゃってるかもしんないんだけどねぇ。痛っぅ。


 「ワカリマシタ……デス」


 弱弱しい笑顔で答えた彼女はキリリと背筋を伸ばして会議? を再開した。


 「今、島ニ隠レたマシタ、ダカラ。台風、怖クなイ考エたデス」


 ほむほむ、一応は奴等を撒いたっつー判断で、現在の私達は、いい感じモードに突入! みたいなって判断でOKOK。


 「でさ、どうする? 台風が過ぎ去るまでは何とも出来ないのは分かってんだけどさ。一応、追手対策とか、出来るんなら罠を作ったりとかした方が良くない?」


 実際、罠とか作り方分かんない。だけど、これは言ったモン勝ちとか天の声的な囁き……は聞こえなかったけど、照代さんは空気を読むのが得意だから……んまぁ、そうユー事にして。


 深く考えたら負けよ負け、人生は何事にも瞬時の判断が鈍れば、お先真っ暗なんだかんね。今の私が遭難したのだって……はいはい、判断間違えて行動して、海に落っこちたのは私でしたね、ハイハイすいませんね!


 「てるよサン、今、休ム先デス。台風、沢山居ル思うダカラ、寝ル良イ考エデス」


 だよね~、いい加減私も睡魔が襲って来てて、正直、我慢も限界つーレベルまで来ちゃってたから、ミヒャンの提案に二つ返事で賛成の大賛成ってね。


 「うんうん、寝よ寝よ。休める時に休んでおかないとね」

 

 「ハイ」


 と睡眠を取る事になったんだけど……さて、どこで寝っかなぁぁ。


 「てるよサン、寝袋モ倉庫ニ有ルマス」


 「あ、そうだった。これ密輸船だよね、もっか・・・したら寝袋もあるかもしんないねぇ。探そっか?」


 「ハイ、探ス、トテモ良イデス」


 「んじゃ、漁りに行きますか!」


 「行キマショデス、行キマショデス」


 ミヒャンさんや、何処かテンション高くね? なんて思いつつも、背後から迫りくる? 睡魔に襲われる前にプロジェクト開始! A計画よ!


 たらん、たらん、たらん、たらんたたぁ、らんら、らんららぁぁ♪


 音痴言うな、うっさいよ!



 ◇



 船外からゴウゴウと暴風雨の音が聞こえる中、私とミヒャンはお目当てのあ倉庫にやってきて、高く積まれた荷に気を付けながら物色を開始。

 なんで気を付けてるかって~と、あんだけの荒海を渡った挙句に、岩に船体を擦った衝撃で倉庫内の荷が崩れるかもしれないとミヒャンの言葉を聞いて、背中にヒア汗が流れた私は恐る恐るつー感じで、優ぁぁしく、優ぁぁしく邪魔になっている目的外の荷物(密輸品)ちゃんたちを、ソロリソロリと移動させていくんだけど……メンドークサァァ。mjd、超ダルいんですけどぉぉ? と顔に出すとミヒャンの説教が始まりそうだったから我慢したよ私、うん、我慢できる子なんだぞぉぉぉ……一応ね……多分ね。


 何段も重ねられた大きな木箱にビビりながらも、寝るために必要な物資を見っけて、やっとこさ「あいきゃんどぅーすりーぴんぐ」って思ったんだけど。どこで寝んの? 私達。


 ゴーゴーと唸りながら響き渡る暴風雨音は激しくなるばかりで、正直寝れんのコレっておもったんだけど、結局操舵室に戻って寝ることになった。もう眠たくって眠たくって戻り路で何回意識を失いかけた事か…まぁ、その度に、ミヒャンからデコピン喰らった…つか、あんた一応、私命の恩人なんだけど…とか思ったりしたけど、コレ言っちゃいけないのは分かるから言わなかったけどさ。でも、たん瘤にデコピンはヤメレ、mjdまじで痛いっつんだよ!


 そんな私をハブっているのか、いないのか。ミヒャンは操舵室に着くなり、手早く寝床を準備してくれちゃって、私に「ササ、てるよサン、寝テ」なんて甲斐甲斐しくしてくれる彼女の世話焼きっぷりに、デコピンの件は許してあげようって思いながら寝袋に潜り込んで、チョー速攻でドリーミングdeドリーミング・なう!ってな風に意識が落ちてった。ムニュムニュ。おやすみなさい。



 ◇



 ところが、多分3時間寝たかって体内時計……はないけど、轟音で飛び起きちゃぁ、また眠るを繰り返した。つか、寝かせろぉぉぉ台風ぅぅぅぅ。

台風が巻き起こす爆音や轟音に起こされはしたんだけど、眠気が勝る私、輝代は充分と云えるくらいに寝まくったよ。うん、もうね、脳味噌腐ったんじゃね?って言いたくなるくらい寝たよ。

 ビュービューってスゲー音に起こされた時、ミヒャンの方もちょっと見てみたんだけど。彼女すげーわ、mj起きね~し。睡眠に対する姿勢? って~の、その根性っぱないっすわ。mjd。


 思わず悪戯でもしちゃおうかなぁぁなんて考えたんだけど、彼女の船室ってかゴミ置き場に監禁されていたのを思い出すとね……今は安心して寝れるなら、それが一番じゃん。私だってミヒャンみたいな経験したら、めっちゃ人間不信になってるだろうし、ましてや、いきな触れられるなんて拷問かもしんないじゃない? んだから美少女の寝顔を堪能するだけにして、私も夢の中にレッツ&GOよ。


 んでもって、ミヒャンが起きた時に私も丁度起きたから。ご飯をイートる。


 だけどさぁミヒャン。それ目痛いって。mjd痛いんだから。そんな辛い食べ物胃がおかしくなっかうってば、だから。ね? ね? 食べんの止めよ? 他のヤツ食べようね、ね?


 ぐぉぉぉぉ、目がぁぁぁ、目がシパシパして鼻が痛ぇ~よぉぉぉ。韓国人の辛さの耐性舐めてたわ。mjd。

 からからなご飯タイムも終了して、さてこれからどうしたものかと二人して知恵をしぼっちゃう? と第二回の会議を開いたりしちゃったりした。


 「でさ、島に上陸完了的な方向でOKなの?」


 「ハイ、船モう動カナイ、ダカラ。島デ生活ノひちゅ要デス」


 「んじゃぁ台風が過ぎたら住める場所を探して」


 「ハイデス、島、様子探スデス」


 「んじゃまぁ、探索に必要なモノ準備しよっか?」


 「ハイ、準備、沢山ひちゅ要、思うマス」


 「りょっ!」


 「ハイデス」


 二人して敬礼し合っちゃったら、何だかおかしくなっちゃてツボった私達は両手で口を押えながらクスクスした。

 んで、また目が合うと、クスクスと笑いあった。安心して寝れたから余裕がちーとばかし出て来たって思ったよ。うん、寝んねはネセサリーで最高だねぇ。



 しかぁぁぁし! 毎度私のノー天気は後悔先に立たず。膨大な密輸品から必要なモノだけを探し出すなんて無理無理無理無理。mjd。だから、台風が去った後で、時間をかけて荷物を整理? して行こうってなった。この船の密輸品の量を舐めてたわ。mjd。


 ミヒャンも“あいごー、あいごー”って嘆いてたよ。

 あいごーって「だりー」とか面倒臭い時に言う韓国語なんだって教えてもらった。ふ~ん。あいごー、か…覚えとこ。


 でもね~、この量はないわぁ。殺人的な量って云うのか、密輸許すまじって思った。色んな意味でね。特に私達に重労働を強いるなんて、ふっざけんじゃないわよ。フンッ。


 ミヒャンが言ってたんだけどさぁ、この船って所謂「延縄はえなわ漁船」の中型船で、規模で云うと“普通”なんだって。でね、元々日本の延縄漁船だったみたい。

 そういえば船内回ってる時にあちこちに日本語見た気がした。うん、ナットク。


 「おっ、服見っけ。まぁ、メンズでもOKOK、ここら辺のヤツは服ばかりかなぁ? そうだといいなぁ。って、ミヒャンの方はどう?」


 「ハイ、コッチハ飲ミ物イッパイ有ルデス。김치キムチ깍두기カクテキ오이 김치オイキムチ동치미トンチミ물 김치水キムチ보쌈 김치ポッサムキムチ총각 김치ミニ大根キムチ물 김치牡蛎キムチ、沢山沢山有ルデス」


 え? 何かキムチ、キムチ、キムチのオンパレードだったんですけど? 


 「え~と、その他の食べ物とかある?」


 「ハイ、沢山有ルデス。김치 찌개キムチ鍋떡볶이トッポッキ갈비탕カルビタン감자탕カムジャタン설렁탕ソルロンタン육개장ユッケジャン곰탕コムタン추어탕チュオタン선지 국밥ソンジクッパプ沢山有ルマス」


 「……え~と、か、か、韓国の食べ物以外に何かなぁい? 日本の食べ物とか、アメリカのとか」


 「少シ、待ッテ下サイ…………、有ルマス。カップ麵、カップヤキソバ、種類沢山デス。さとぉノゴハン、さとぉノ餅、フリカケ、Pork luncheon meat、コッチハ……かろりーめいと、さかなノ缶モ沢山有ルマス」


 「おっ、いいねぇ、いいねぇ」


 ま、まぁ、お互い好きな食べ物ってか、好んで食べられるのがあって良かった良かったわ。食べ物全部、辛いヤツしかないとかだったら、私飲み物オンリー生活だったかもしんないし、mjdホッとしたよ。甘いのは好きだけど、辛いのは超苦手だから、キムチとか、何とかキムチとかキムチワールド・やっほーわっしょいなミヒャンの声に一瞬、終わったなコレってビビッたけど、日本のレトルトとか缶詰とかも沢山あるみたいで、mj助かった。


 「私の方は、服が多いよ。トップスも、パンツも色々あるし、インナーやランジェも結構な数揃ってる感じ。あ、こっちはコスメだ。やったね、洗顔料に乳液、なにこれ? ってくらい揃いまくってる。密輸こわっ。あ、生理用品もこれでもかって程にあるよぉ。私の使ってるヤツと同じだ。ラッキー」


 そんなこんなで、荷物を選別しつつ、一喜一憂しながら台風が過ぎ去るまで船内で私とミヒャンの共同生活が始まった。

 不安要素は盛沢山で前途多難なのは分かっているけど、今は密輸品って云うお宝の山で少しの現実逃避をしたってバチは当たんないと思う、ってか思いたい。つか、この状況がバチみたいなもんだから、後払いの幸って事で楽しむ方が精神的にも楽ってなもんでしょ?

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