3話
「せやぁ!!」
当初はただステータスがどれだけ身体能力に影響を与えているのか。それが気になり、他の兵士に許可を取ってでも訓練場に赴き、木人形を打っていたが、まるでアルスが木人形を打つことを分かっていたかのようにミッションが開始される。
今やアルスはミッション達成後の報酬がただ気になり、強くなる為に訓練をするようになっていた。
-スキル獲得ミッション-(Lv1)
条件達成
木人形を攻撃10000回
スキルを獲得しました。
スキル《訓練補助》
このスキルの所持者は次回訓練する際、能力強化ミッションに限らず、毎日指定された条件を達する事で、能力が強化される。
[効果]
・デイリーミッション達成で、体力、筋力、魔力、敏捷がランダムで+1される。
アルスは目を見開く。
まだステータスと今までの身体能力を正確に比較した訳では無いが、今まで出せなかった力が、ステータス強化後で明らかに大きくなっている事が分かっている。
そんなステータス強化とアルスの身体能力の関係性を見ると、今回獲得したスキル【訓練補助】は毎日指定された訓練をやるだけで+1ステータスが加算される。
これは最早無視出来ない。いや、毎日訓練を欠かさずやっているアルスにとっては無視が出来ない。
アルスはこの時、ただ強くなる為だけに訓練するのではなく、ステータスも強化しようと決意した。
そんなステータスの変化に固まるアルスに近くで休憩していた、あの男が、声をかける。
「おいアルス、なに手止めてんだ? 一時間はもうすぐだぞ? はっ、まさかやっぱり自分には力が無かったぁって失望してんのか? だったら俺の前からさっさと消えろ」
今すぐ反論したい。自分は力を手に入れたのだと。これから強くなるから今までの自分への対応は撤回してほしいと。
ただもしそれを言えば十中八九、どうやって力を得たのかを聞かれ、さらにそれを言えば今度こそ幻覚を自分の力だと信じ込む頭のおかしい者だと思われるのが目に見えている。
アルスはぐっと罵声を浴びせられるのを我慢した。ただ、一つ言える事といえば。
「すまない……。ただ最近、自分に自信が付いてきたと感じるんだ。自分の才能は重々分かっているつもりだ。
そこで一つ頼みがある。一週間に一回、此処を借りさせてくれないだろうか?」
「へぇ……自信ねぇ? てめぇ、自信なんて飽きる程聞いているんだが……まぁ、一週間一回程度なら良いだろう。お前も分かってるじゃねぇか。俺らがお前をどれだけ邪魔だと思っているかがよぉ」
アルスはやはりこの兵士は根は優しいのだな感じる。ただ敢えて口には出さずに。
これでアルスは特別に一週間に一回。訓練場を借りさせてくれるようになった。ただ元からあの男の物では無いが、無駄な反論や文句を言って関係を悪くするより、例え男がアルスを嫌って居るとしても、それ以上関係を悪くさせる必要は全くもってない。
相手が関係を改善する気が無いのなら、これ以上悪くさせる様な事はせず、ずっと同じ関係で有ればいいのだ。
さてとで、アルスは訓練場での訓練を終えると物置き部屋である自分の部屋に戻り、再度スキルの《訓練補助》を確認する。
早速何か指定の訓練は無いだろうかと。
スキル《訓練補助》
条件未達成
・腕立て伏せ100回(000/100)
・素振り1000回(0000/1000)
「よし、やるぞ!」
それから毎日、アルスは度々無条件に出されるミッションと《訓練補助》スキルによるデイリーミッションをこなし一か月が経った。
当然、当初思っていた『楽して強くなる』という事は無く、条件達成を重ねれば重ねるほど、ミッションの達成条件は厳しくなり、その一ヶ月後辺りからは能力強化が確実にし辛くなっていた。
その一ヶ月間は、ただただ訓練に励み、何度もあの男から罵声を浴びせられる事があったが、アルスは確実に自分の力が強くなっている事に自信を持ち、自分を下に見る兵士の陰口もいつの間にか気にならなくなっていた。
そして今や木剣一振りで木人形にヒビを入れる事が出来る程にまで力が付き、アルスの考えで八年間で一度もチャンスが訪れなかった出世を目指そうとした。
強化したこのステータスなら、模擬戦できっと一人や二人を倒せる筈だと。出世すれば、自分の夢である『国の希望』になるのに一歩近づくことが出来ると。
アルスの夢は八年前に入隊した時から変わらず、アルスの夢である『国の希望』とは、弱き者を守り、民から不安や怒りを取り除き、誰からも認められる騎士になることである。
そしてもし出来るのならば、自分のこの力で他国との関係を改善したり、若しくは戦争の廃止。そう、子供なら一人は必ず夢見るであろう
-ステータス-
名前:アルス
Lv:1
体力:38
筋力:41
魔力:8
敏捷:11
スキル:
《諦めない心》Lv1
《訓練補助》Lv1
ふとアルスはステータスを見れば、体力と筋力は順調に伸びている。能力強化ミッションも一体どこまで続くのかと思いながら今では、
『能力強化ミッションVⅢ』
という表記になっており、要は八回目を示す。そしてこの辺り強化ミッションになってから一日では終わらなくなっている。
現にこの強化ミッションの内容は。
-能力強化ミッションVⅢ-
以下の条件達成で能力が強化されます。
・素振り5000万回
(15,000,000/50,000,000)
八回目に当たるまで相変わらず内容は素振りと変わらないが、回数が進むに連れて、必要回数が十倍ずつ跳ね上がっていたが、ここから急に必要回数が抑えられるようになった。
どうしてかは分からないが、それにしても流石にここまでくると一向に終わらないというただならぬ疲れを感じていた。
さて、そんな訓練も頭打ちだと思っていたその日は、此処、王国騎士で月に一回行われる模擬戦の日である。
自分の力はどこまで通用するのか、どこまでの相手まで対等にやり合えるのか。
アルスはステータスの力を人間相手に試す事で、更なる確実性を得られると思いながら、少しだけ心を躍らせていた。
「今日は模擬戦の日だ……別に人の上に立つ事には興味は無いけど、いつまでも僕の悪口を言っていたあいつらの認識を変える事が出来るかもしれない……!」
模擬戦の開催場は、アルスや他の兵士がいつも使っている訓練場。全ての道具が片付けられ、縦24m横12mの長方形という、大体テニスコートの広さで開催される。
ルールはごく簡単で、兵士の功績や階級関係なく勝ち抜き戦であり、その結果次第では階級を飛び級する事もあると言う。
一見すれば、単純な昇級制度に見えるが、模擬戦自体も生温いものではなく、戦闘時の基本ルールは無しに審判の判断で戦闘が続行不可になるか、対戦相手がギブアップするかのどちらかで勝敗が決まる。
その為、模擬戦で勝つ事
しかしそんなルールにアルスは毛頭興味は無く、ただ力を試したい。そんな想いで模擬戦に挑むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます