ルール2

「此処は所謂チュートリアルである。勿論答えられる範囲で質問には答えよう」

「それはありがたい。では宜しく頼む」


 Havokと手を上げた発言者に注目が集まるのを肌で感じる。先程まで絶叫していたり崩れ落ちていた奴らも何とか立ち直り、その行方を見守っているようだ。


「何故私達はここに連れてこられたんだ?」

「それは君達が契約を了承した上で、ある程度の能力を有していたからだ」

「……恐らく大多数の者は契約など行ってはいないように見受けられるのだが」


 例の発言者はHavokの返答が予想外だったのだろう。少しだけ言葉につまる様子を見せたが何とか言葉を繋ぐことが出来たようだ。


「君達は--」


 Havokは暴れまわっている右腕を前に突き出し、人差し指を立てると改めて話し始めた。それらは主に聞き覚えのあるスマートフォンのアプリが大半であったが、時々PCのコンシューマータイトルも上がっていた。

 俺はと言えば、高速で左右に振動している人差し指に気を取られて半分ほど聞き流してしまっていた。残像具合がヤバイ。


 聞き取れたものは、テレビCMをやっているような有名なアプリや既にサ終してしまっているもの等、幅広い印象を受けた。ドマイナーで聞いたこともないようなタイトル名の物もあったが、共通点はゲームと言うことだろう。


「以上のゲームをインストールし、触ったことがあるだろう」

「……ああ。確かにスマホに入っているものが幾つかある」


 発言者の声がやや固くなった。少しだけ俺も頭を働かせると恐らくそれだろうという結論に達し、思わず舌打ちをしてしまった。


「今回ここに呼び出したのは先ほど上げたアプリの中で1つ以上の利用規約に了承をした者である。勿論、デジタル文章での証明書も手元にあるので、確認をしたいのであればそれを見せても構わない」


 くそったれが。誰も利用規約なんぞ真面目に読んじゃいねぇよ。


「以上が質問についての回答である」

「……いや、先ほど上げていた能力についても確認がしたい」

「構わない。能力とはこちらで設定した進行度まで進めたことを指す」

「……了解した。その進行度について詳しく説明してはくれるのだろうか」

「サービス運営上説明は出来ない」

「……では次の質問を」

「俺にも質問させろ!」


 そこで空気を読めない声が上がった。

 おいおい、折角出来るサラリーマン風の人物が進行役を務めてくれていると言うのに、いきなり場をぶっ壊してきやがった。


「良いだろう」

「テメェは何なんだよ!」

「私はHavok。神である」

「さっき聞いただろうが!そうじゃねえよ!」

「描画エンジンにはUnityを……」

「そうじゃねえっていってんだろ!」


 あー、HavokとUnityって提携したっけなぁ……。

 その程度の感想を浮かべながら生暖かい視線を向けていると思わずため息が出た。黙ってくれないかなあの人。


「私はこの世界の技術を使い顕現した神である」

「あ?」


 あ?じゃねぇよ。


「Havok、聞かせてほしい。闘争とは何を行うのか」


 容量あたまが足りなかった空気を読めない子がポカーンとしてる間に、出来る男が質問を続けた。


「闘争とは別のプレイヤーに勝利する事を指す」

「その勝利の条件とは」

「プレイヤーキル。生命活動を停止させることを指す」

「……それは」

「あくまでも閉鎖空間内での生命活動の停止であるため、閉鎖空間から退出後、即ち現実世界での生命活動への影響は無い」

「死んでも死なないと」

「説明を簡素化するとそうなる」

「それで、この時計のアプリは」

「このゲームを行うためのアプリケーションである」

「この25時の表記が追加される活動時間か?」

「質問の通りである」

「見辛くねぇか!?」


 あっ、再起動した。


「時間の表記は設定からデジタル表記に変更できる。機能は変わらないため個人で変更すると良い」


 えっ?出来ちゃうの?

 時計のアプリを起動すると右上に設定画面に移動する歯車のマークがあり、そこを押すとアナログとデジタル表示の項目があった。

 試しにデジタル表示に切り替えると、黒一色の背景に味気も糞もない白色のゴシック体で時間が表示されるようになった。


 現在は24:48。


 ……何となく表示をアナログに切り替える。異常に見辛いが雰囲気的には今はこれにしておこう。


「アプリケーションには君達の記録から算出された、ゲーム上でのステータス等も表示される予定だ」

「現在は見ることが出来ないのか?」

「ステータスオープン!」

「現在開発中である」

「いつ頃導入予定だろうか」

「開発部の者に確認して、後日回答を行う」

「出ねぇ!」

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