ルール1
「物理エンジンの調子が悪いな」
中空に浮かぶ「それ」が漏らした呟きに、俺を含めた複数人がビクリと体を震わせるのが見えた。中にはむせこみ始める奴まで居たようで辺りが少しだけざわついていた。
「それではこれからルールの説明を行う」
その雰囲気を一切意に介さない様子で神を名乗るHavokはアイーンのポーズのままで、時々物理演算バクっぽい動きでその全身を震わせていた。
せめて腕下ろせば良いのにと思う。
「君達はこれから24時を過ぎると1時間だけ閉鎖空間へと移動をする。そこで闘争を繰り広げて貰う」
その言葉にざわめきが大きくなり、そしてそれは直ぐに爆発した。
「どう言うことか説明位しろよ!」
どこからか上がる非難の声。何れ上がるだろうとは思っていたが、短気で短慮な輩は何処にでもいるようだった。どう好意的に見ても、博愛主義な存在には見えない「それ」に、反抗的な態度で刺激をしても思うような返答が返って来る訳が--
「良いだろう」
良いのかよ。
あっさりと「それ」は頷くと、左腕を大きく広げた。
すると、ズボンのポケットに入れてあったスマホが今まで感じたことのないリズムでバイブレーションを始める。
「先ずはスマホを確認してみると良い」
その言葉に俺達は多少ざわつきながらも自分のスマホを取り出し、その画面を確認する。
ロック画面に表示されているのは繊細な細工が施されたアンティーク調の懐中時計が表示されていた。
文字盤は曇りひとつないの純白の金属で縁取をされており、狭い間隔でアラビア数字が刻まれている。その内側は透明でムーブメントが透けて見えていた。部品の点数は恐ろしい程多い。俺が持っている安物のスケルトンのウォッチはこれに比べるとただの玩具だ。
そして、時計の中央からは美しい青色の針が一本伸び、時間を指し示していた。だが、その針の先が指しているのは24と25のとても狭い範囲の内だった。
「25時?」
俺は思わず声を上げた。
時計のなかには24時間時計なるものがあることは知識としては知っていた。知っていたが、実際に見てみると非常に見にくい。もし、24時間時計を愛用している人がいたならば個人の感想だと思って聞き流してほしい。ごめんね。
「さて、そのアプリは今回ここに集まっていただいた君達のスマホに強制的にインストールさせて貰った。
その発言にまたざわめきが起こる。
とは言っても時計のアプリにそこまでの容量は必要ないだろう。ロックを解除しアプリの画面を開き、確認を行うが……。
「30Gちょいとか……。フルボイスゲー並みじゃねーか」
思わず唖然としてアプリの詳細画面を見つめる。
最近機種変更をして容量に余裕があり、一定周期でPCにバックアップを取っている俺は問題なかったが、これは多分……。
「何でよりにもよってまだデータ連携してないアプリをアンインストールしたぁ!?」
「俺の……!俺の動画ぁぁぁぁああ!!!!」
「………」
絶叫してる奴はまだ良いのかもしれない。膝から崩れ落ちた奴はもしかすると何かが始まる前に終わってしまったのかもしれない。
「そのアプリはアンインストールすることは出来ない。君達にとってこれから非常に重要なものである。後で設定アイコンから選択できるマニュアルをしっかり読んでおくように」
マニュアル付属してんのかよ!
そう心の中で突っ込んでいると何処かの誰かが手を上げるのが見えた。
「幾つかの質問がある。答えてくれるのだろうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます