#06 気づいて

「一緒に帰ろ♪」


 そう、呑気に言う先輩。


「その誘いはOKしてもいいものなのかと、自分でも心配ですよ。周りの目とか気にしないんですか?」

「だいじょーぶ。今はお昼時だし、誰もみてないよ。」

「いいのかなぁ、そんな適当で…。」


 現在時刻は昼の一時過ぎ。俺たちは昇降口から出て裏門にきていた。まぁ、こっちの方が駅に近いからという理由だけだが。

 とか思っていると、後ろにいた先輩が腕を引っ張る。


「うおっ。ど…どうしたんですか、先輩。」

「裏門の方に誰かいない?」


 そう言われ、裏門の方を見ると、朝に先輩を襲った野郎がいた。先輩はあまり目がいい方ではないので、一応伝えることにする。


「先輩、あいつあれです。朝の野郎です。」

「……まじか…。」


 先輩が珍しくピリついている。それだけ、朝のことを根に持っているんだろう。


「どうします?逃げますか?」

「いや、目的が“女の子”なら、私以外にも狙うだろうし、ここで叩いておかないと、大騒動になるだろうし。」

「わかりました。」


 ちなみに僕と先輩はマネージャーとして、部に入っている。どちらとも、と部内では言われているので、頭はかなり回る方だと思っているが…。


「あのさ、あおい君、君さ。」



「へ?」

「君が答えるのは“はい”か“いいえ”の二択。 どっち?」


 あまり言いたくはないが、先輩はあまりいろんなことをバラしたりはしないので、一応言うことにした。


「…はい。持っています。」

「…実は私もなの。機械だけどね。」

「どんなのですか?」

「元はこのブレスレットなんだけどね。あとは帽子だね。」

「へぇ。…すごいですね。」


 とかなんか悠長に話しているが、焦らなきゃいけない。目の前の敵のことに集中しよう。


「さて…作戦はどうします?」

「君は、命令を出せるんでしょ?」

「まぁ、そうですけど…。」

「頃合いを見て合図を出して。そこで、【透明化】を解いて、【筋肉強化】を使って、気絶させる。」

「わかりました。」


 つまり、俺が囮だ。


「おい。お前。」


 裏門にいた男に声をかけた。


「お前は...あの時の...くそっ!!」


 そう言って殴りかかろうとする。それを容易く避ける。


「そんな簡単な攻撃なんて当たらないよ。」

「舐めるな!!」


 とどこからかナイフを取り出す。

 と同時に僕は【脳に直接語りかける能力】で合図を出す。


 僕は回し蹴りをナイフに向けて蹴る。


 同時に、先輩が姿を現し、ブレスレットをつけている左手で殴りかかる。


「ぐあぁぁぁぁ」


 漫画にありそうな叫び声をあげながら吹っ飛んでいく男。

 叫び声を聞いた生徒達が顔を出してこちらの方を見てくる。


 大きな騒動になる前に、通報した。


 そして、ふと先輩の方を見てみると、たおれていた。


「せんぱい...?」

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