#05 保健室

 …ここはどこだろう。なんとなく暖かい感じはある。ゆっくりと目を開ける。

 見覚えのある天井だ。ここは…学校?


「あ、起きた。…どう?体は。」

「いや、あんまりなにが起きているかわからなくって。」

「…貴方、舟橋ふなはしさんにおぶられて、ここまで運ばれてきたのよ?いいわねぇ、あんな美しい女性におぶられるなんて。」

「あの、なぎさ先輩が…俺をおぶってきた?!」


 信じられない。そんなことしたら学校中に噂がすぐに広まるほど先輩は顔が整っていて、高嶺の花という感じなのに。

 なのに俺をおぶって?なにがあったんだ…?


 記憶を蘇らすように集中する。

 えっと…家を出る前に能力をもらったりして、家を出たら、変な不審者に絡まれて、電車にギリギリ乗ったら、先輩がいて、不機嫌になったから、仕方なくそのままにして、降りた後、助けに行って……

 あれ?そのあと助けたんだっけ?どうやって?なんで倒れているんだっけ?


美奈みな先生。なぎさ先輩は無事なんですか。」

「無事というか...授業には出ると言っていたわよ?でも、すぐ帰ってくるって。」


 すると…チャイムが鳴った。時間的に、三時限目が終わったくらいだ。

 ちょうどその一分後。ガラガラとドアが開き、先輩が入ってきた。もちろん、なぎさ先輩だ。すると…


「あ、起きてる。おはよう。どうだい目醒めの方は。」

「良くもなく悪くもないって感じ。ただ、頭がモヤモヤしてる。」

「…朝のこと?」

「そうです。教えてくれませんか?朝なにが起きたのか。」

「そう言われてもなぁ。あまり覚えてないけど……。」

「いいです。話してください。」

「わかった。」


 すると、彼女は話し始めた。


「まず、あいつに電車を降りたときに腕を掴まれて、咄嗟に腕思いっきり叩いて、すぐ逃げたんだけど。でも逃げてもすぐに捕まって、引っ張られていって、帽子が脱げて、奥に引っ張られていって。怖かったけど、脱げた帽子を手がかりにすぐに、あおい君が来てくれて。そこから良く覚えていないけど。ナイフを避けて、叩き落として、最後に頭突きをしたんだけど、君も、あいつも倒れて、咄嗟に助けなきゃと思って、壁に倒れかかっていた葵君をおぶって、学校にまで運んできたの。そんなかんじ。」


 そう話し終えた。


「うーん。僕のおかげなのかな?」

「覚えてないの?」


 すると保健の先生の美奈みな先生が口を挟む。


「記憶がなくなってる…か。でも、ありえるかもね、君、脳震盪で倒れていたんだし。」

「そうなんですか…。」


 つまり相手を倒す動きをして、倒したけど相手と相打ちという感じになったということらしい。

 決め手は頭突きを選んだが、自分にもダメージがあって、そして記憶がなくなった…という感じか。なんで頭突きを選んだんだ?俺は。


 まぁたしかに、頭が痛いし、あんまり運動はしない方だから、体も痛い。


「あの……今日は帰ってもいいですか。」

「ん〜。いいよ〜、一応担任には私から言っておくから。」


 そう言われて、保健室から出る。すると、保健室の方から、声が聞こえた。


「……私も帰ります。」

「……え?」


 保健室の扉が開いて、渚先輩が出てきた。


「じゃあね~」


 なんて言った、美奈先生の顔は少しにやついている。やめろ。俺をそんな目で見ないでくれ。

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