世界は能力を中心に回っていく

冬結 廿

開幕戦

#01 主人公の能力

 窓から入ってくる朝日の光と鳥のさえずりで目が覚める。

 いつもよりいい目覚めである今日。学校に行くまでになんてことないささやかな楽しみの時間がやってくると…

そう、思っていた。


「あ、おはようございます。あおい君。」


 目の前の女の子が言う。

 まるで普段からそこにいて、毎日一緒にいたかのような。そんな違和感ないように会話を始める女の子。対して俺は起床したばかりで、頭がうまく働かない。


「ん…。おはよぉ…。んん。ん?…??」


 まず、浮かんできたのは疑問だった。

 眠い目を擦り、まだ夢の中なのかと勘違いをする。


 再び見ても、そこには女の子がいる。


 こいつは誰だ?もしかして俺が昨日連れ込んだ?いや、昨日は誰とも会ってないはずだ…。じゃあ、もしかして侵入者なのか!?いや、妹か?だとしてもこんなに早く着くわけがない……などと、色々思考を巡らせていると。


「あの…大丈夫?」


 と謎の心配をしてくる、目の前の見知らぬ女。いやいや、お前のせいでこうなってるんだから。


「ん…。だめ。大丈夫じゃない。」

「そうですか…」


 まだ気だるげな声しか出ない俺に心配そうな声をあげてくる。…お前のせいだよ。自覚ってのがないのか?


「...そうですかじゃないよ!?お前誰だよ!?」

「私ですか…?私の名は…“リンセ=アンドゥリューワ”。あなたの…専属神です♪」

「…は?…厨二病なの?」


 そんな変なことを抜かす目の前の女の子。絶対やばいやつだろうと決めつけ、警察に電話するため、スマホを取り出す。というか、不法侵入で通報する権利はあるはずだ。


「あ…ダメー!」


 そう言ってスマホを叩き落とす、ヤバ女。


「おい!! なにすんだよ!割れたらどうすんだ!」

「通報しようとした方が悪いんですー。というか君のその様子からわかるけど…信じてないよね。」

「当たり前だ。神なんかいない。」

「あぁ。無神論者か…。まぁいいや。」


 まぁいいやで済ましていいのか??お前神だとか言ってなかったっけ????


「とりあえず…前提として能力って知ってる?」

「動物が持っている得意なことの方?それとも、漫画やアニメにある不思議な力の方?」

「うーん。一応どちらもそうなんだけど。今は漫画やアニメにある方だと思って。」

「はーい。えぇと。……るんせ?だっけ?」

です。で、続き。そんな、漫画やアニメにある不思議な力をあおい君に授けたというお話です♪」

「……。胡散くせぇなぁ。ほんとかぁ?」

「…逆になにを見せたら信じてくれますか?」

「うーん。何か能力を一つ見せてくれたら。」


 そう言うと、自称神のリンセは目を瞑った。

 すると、声が聞こえてないのに、声が聞こえるようになった。口は動いていないのに、声だけ聞こえるようになる。何というか、気持ち悪い。


『【テレパシー《脳に直接語りかける能力》】です。どうですか?聞こえますか?』

「あぁ...聞こえるよ。すごいな。」


 そう口をこぼす。流石に本人を前にして気持ち悪いとは言えなかった。そうして、目の前のリンセは目を開いて。


「どうです?これで信じてくれます?」


 …と言った。

 それに対し、僕は…


「あぁ。信じるよ。」


 …と言った。ここで彼女のことをやっと信じれたと思う。いや、彼女の存在自体ではなく、能力という物自体だ。

 起床から20分後くらいして。自分は朝ごはんを作るために、下の階に降りた。が、肝心なことを忘れた。彼女、リンセは食べるだろうか?神だし、食事が必要ないかなと思っていたが、一応聞く。


「おーい!リンセー!?」

「なんだーい?」

「朝ごはん食べるのー?」

「...いただきたいー。お願ーい。」


 やはり、神でも食事は必要らしい。正直めんどくさいが、妹の代わりに作るようなものだ。特に今までと変わることはない。

 そうして、二十分後。朝ごはんができた。匂いにつられて、リンセもやってくる。

朝ごはんは、白米、味噌汁、卵焼き、鮭焼き、たくあんというとても和食である。仕方ないじゃん。和食好きだし。


「お、おいしそー」

「神だとしても食事は必要なんだな」

「そりゃそうよ。神をなんだと思っているのかね?」

「全知全能…みたいな?」

「ふ~ん…。古いね」


 そんな、事をぼやきながらリンセは味噌汁に口をつけた。


「あちち、ふ~」

「気をつけろよ~、火傷するぞ~?」


 全く。本当に妹みたいだな。



 食事中。ふと思い浮かんだ問いを投げかける。


「リンセ」

「んー?」

「さっきさ。僕に能力を授けたとかなんとか言っていたよな。どんなのなんだ?」

「【イミテイト《真似事ができる能力》】だよ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る