第35話 ウミ&探索合同ギルドのおっちゃんズ

「おつかれ、とりあえずこれで仕事は終わりだ」


「いやー、本当に俺ら要らんかったなぁ」


「仕事しないでぼろ儲けってか?」


「ハハハ!」



「嬢ちゃんすまんかったな」


「いえ、あの次いでにまた潜って来て良いですか?」


「はあ?」


 何か何言ってんだこいつ?と言う目で顔を顰められた。


 何でそんな顔するのだろう。

 実力はきちんと見せたはずなのに。


「いえ、なんか攻略が中途半端なんで、最後まで攻略しちゃいたいなって。そしたらしばらくの間、安全に調査出来るんじゃないですか?」



「うーむ」


 何故か悩み出す探索ギルドのチーフのおっちゃん。



「おいおい嬢ちゃん、俺らの仕事を全部横取りしようってのか?」


 傭兵ギルドの厳ついオッサンがガンを飛ばしてきた。



「うえ?……でも前はこんな仕事無かったんですよね?」



「前はな!だが今更、別の所に仕事行けとか話が違うだろ!」


「そうだそうだ!」


「お嬢ちゃんに全部やられると俺たちが食いっぱぐれるんだよ!」


 あ〜なるほど。

 確かにそれはそうか。



「なら、傭兵ギルドが全部やった事にすればいいんじゃないですか?僕はギルド報酬とか要らない訳だ

 し……それにどうせまた調査の為に調査ギルドの人と学術ギルドの人とで一緒に潜るんでしょ?」



「……そりゃそうだが」


 もう一押しかな?



「その方が安全面も絶対上がるし僕も攻略出来るしお互いWinWinの関係じゃないですか?」


 結構良い落とし所だと思うんだけど、未だに悩んでいる探索チーフのおっちゃん。



「………うーむ、ダメだ、俺だけでは決められん!1度この話はギルドに持ち帰る。だから嬢ちゃんは勝手に遺跡に入るなよ!」


「ええ〜!!そんなぁ〜!!」




 所謂1つの大人の事情によるお役所仕事でおっちゃんチーフに、また明日探索ギルドに来いと言われ、結局自由にダンジョン探索は出来ないようだ。


 なんて事だ、ゲーム内なら許可無くさっさと入れたというのに…。


 仕方ない、これもストーリークエストだと思って諦めて現実を受け入れよう。



 無理に勝手にダンジョンに侵入して見つかってからの犯罪者扱いはハッキリ言って勘弁である。



 だけど、明日の話し合いの結果、入場不可とかになったら結局の所こっそり入らないといけない訳なのだけど……まぁその辺は結果を聞いてから考えよう。




 兎に角、今はまた日を改めての待ちぼうけの日々を送ることになった訳だが……仕方ないので空音にこちらの進捗遅延のお知らせメールを送る事にする。



「空音の方はどんな感じなのかな?」



 きっと予想するに今頃はガンマリン沿岸都市でてんやわんやのてんてこ舞いになっているだろうな。



 何せ空音のアバターのスペックはこっちの世界では神の奇跡レベルに近い能力と技術を持ってるし。



 そう。実は僕がここのダンジョンに入る為に何やかんやしている間に空音からメールが来て大量の薬剤と共にガンマリン沿岸都市にルールーさんと一緒に現地招集の呼び出しがあったと言う報せを受けていた。


 何でも、薬も足りないが薬師の手も足りないとの事で結局のところ新人でも居ないよりマシ的な感じで薬師ギルドからの招集が空音にもかかったらしい。


 空音は何だかんだ現場を見たら助けられるのに見捨ると言う選択肢は選ばないだろうから持てる技術で大勢の人達を助け捲るのだろう。




 恐らく聖女とか救いの女神とか周りから呼ばれる程に…。




 まあ、ガンマリン沿岸都市の悲劇から僕ら2人は自重は辞める事にしたから多分そうなってるはず。




 「空音の奴、やりすぎて変に此方のお偉いさんに目を付けられなければ良いけど」



 そう僕はボヤキながら空音にメールを送信した。




「さてと、また昨日の宿屋に厄介になるかな。……部屋、まだ空いてるかな?」



 以外…という訳でもないけど、このカイロ古代遺跡都市は遺跡から発掘された珍しい遺物が売り出される事もあり、観光と商売と一攫千金を狙った人達によって何時も街は賑わっている。


 なので、この街で宿を取るのも一苦労なのだ。



「あそこの宿屋、以外とご飯美味しかったし、どうか空いてますように!」



 願いを込めて宿屋に走る。


 本当なら今日で全部クリアしてそのまま帰る予定だったので既にチェックアウトしてしまっていたのだ。


 なんと言うか、考えが甘かったなぁ〜。トホホ。



 そんな事を考えながら走っていると突然短い悲鳴が聞こえた。



「!?」



 あまりにも短い悲鳴だったからか、周りは誰も気付かず気に止めて居ないようだ。




「気の所為……では無いようだな」




 索敵スキルを展開すると裏路地で何やら怪しげに固まっている集団を発見した。


 そちらに向かって裏路地に入り込めば、口と腕を抑え込まれた幼女が何人もの荒くれた男達に囲まれていた。




「………うん。これはどう見ても事案ですね。お巡りさ〜ん!こっちです!!」




 思わず叫んで突っ込まずにはいられなかった僕は間違って無いと思います。








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