第34話 ウミ&3混成チームの皆さん

 その日の晩はカイロ古代遺跡都市の宿で1泊してギルド長の指定時間10分前に入り口付近にきていた。


 来ていたのだけれど、人が多すぎて誰が誰なのかサッパリ分からない。


 唯一の見分け手段がこの割符とか。

 大丈夫なのか?これ。


 一応、手前に割符を持って入り口付近でボーッしていると厳ついオッサンに声を掛けられた。


「おい!嬢ちゃん。アンタがギル長の旦那が言ってた嬢ちゃんか?」


「え?はい。恐らく」


「…………」


 すっごい嫌そうな顔でジロジロ見られた。


「嬢ちゃん。悪い事は言わねぇ、帰んな」


「何故ですか?」


「嬢ちゃん、あんた探索を舐め過ぎてる。遊びに行くんじゃないんだぞ」


「別に僕も遊びに来た訳じゃないです」


「だったら何で探索道具1つ持たずに突っ立ってる」


「僕の目的が探索じゃないからですかね?」


「んだと?」


「僕は狩人ギルド員です。狩りが目的なので探索はしません」


「そう言うのは傭兵ギルドで間に合ってる」


「そうでしょうけど、でも途中から傭兵ギルド員でも対応出来なくなっていませんか?」


「………嬢ちゃん、なんで、んな事知ってる」


「んー?内緒です」


「ふざけてんのか!」


「いえいえ。でも僕なら対応できます。騙されたと思って一緒に連れてってくれませんか?」


「何処の誰であろうと遺跡内に入ったら命の保証はしかねんぞ」


「それは重々に」


「ふん!なら着いてこい。こっちだ」


「ありがとうございます。僕は自分で言うのもなんですけど戦闘ではお役に立ちますよ」


「はっ!どーだかな」


 こうして、僕は遺跡内ダンジョンの侵入に成功したのだった。



 ◇



「此処だ」


 20人の規模で探索に入った僕達は地表古代遺跡の通りを抜け地下へと続く穴の前へと辿り着いた。


「あの、此処って前からあった穴なんですか?」


「いや、数週間前に大きな地震があってな、それで空いた穴だろうよ。

 んで問題はこの穴の奥に扉と一緒に更に奥へと続く階段も現れたって訳よ。

 だが、そこからが更に問題でな、誰も見たことの無い野獣がウヨウヨいやがる訳よ。

 お陰で怪我人は出るわ調査は進まないわで踏んだり蹴ったりよ!」


「それで、今回探索ギルドと学術ギルドと傭兵ギルドの3混成チームで攻略調査になったんだ」


「じゃあ、狩人ギルドもいるので4混成チームですね」


「お前はオマケだろ?お嬢ちゃん」


「ギャハハ!言えてる!」


「う〜ん。どうでしょうね?」


「くっちゃべってねぇで行くぞ」


「へい!」


「うっす!」


「先ずは探索ギルドが先頭で索敵を兼ねる。その後に傭兵ギルド。その後に学術ギルドと嬢ちゃんだ」


「待って下さい!僕は狩人ギルドの人間ですよ?索敵なら僕を使って下さい」


「………………大丈夫なんだろうな?」


「信用は行動で示しますよ」


「ふん、なら嬢ちゃんはこっちだ」


「了解」


 ◇


「居ますね」


「何処だ?」


「ここから約50m先の右角。総数5」


「こんな遠くから分かるものなのか?」


「僕1人でも行けそうですけどどうします?」


「馬鹿言うな。俺も行く。様子を見てくる」


「俺も行こうか?」


「そうだな傭兵ギルドから2人来てくれ」


「了解」


「任せな」


「じゃ行きますね」



 ◇



「なんじゃありぁ」


「二足歩行の犬だと」


「とんだ化け物が出てきやがった。しかも彼奴ら武器持ってやがる」


「コボルトですね」


「嬢ちゃん、知ってんのか?」


「はい。まあ、大した敵ではないので仕留めてきますね?」


「は、はあ?何言って…」


 すかさず駆け出して一気に木刀で5匹の首を薙ぎ払う。

 それと共にポリゴンエフェクトを撒き散らし消えていくコボルト。


「な!」


「な!」


「なん…だと」


 一瞬で終わらせたけど、ドロップ品がアルファ村の森で狩ったベアウルフと同じなのは何だか納得いかない。


 まあ、でもやっぱりダンジョンの方が力玉が出やすい。


「ベアウルフ狩りだと出なかったり出ても1個とかだったからな。やはりダンジョンは良い」


 1人で納得しながら皆の元に戻ると一様に固まっていた。


「どうかしました?」


「い、いや嬢ちゃん、すげえな」


「動きが見えなかったぜ」


「これが狩人の動きなのか…」


「?」


 良く分からないけど、とりあえず本隊と合流するし、探索を進める事になった。


 そして、僕は黙々と索敵しては1人で狩り続けた。


「やばいな。俺達必要無くないか?これ」


「金貰えるのか俺達?」




「とんでもねぇな。一体何者だ?あの嬢ちゃん」



 周りの動揺に気が付きもせず、僕は一心不乱に狩り続けるのであった。


「やべぇ。ダンジョン!ちょー楽しい!」




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