第26話ウミ&ラルク一家
「んで、そのアルファリアルから取ってアルファ村てな訳だ」
「へぇーそうなんですね」
「て事でウミちゃんもギルド試験受ける為に俺に弟子入りな!」
「強引ですね。まあ、それしか出来ないので有難いですけど」
「なら、明日は朝から出かけるから早めに寝とけ」
「了解です」
「それなら、しばらくウミちゃんはウチで預かれるわね。良かったわねタマル」
「うん!ウミお姉ちゃん!ずっとお泊まりしてね!」
「ありがとう、タマルちゃん。ラルクさんもマルタさんもお世話になります」
「良いってことよ」
「そうよウミちゃん。何ならお母さんって呼んでも良いのよ?」
「え?…いえそれは…はは」
「なら!あたしウミお姉ちゃんと結婚するの!」
「おお!良いな!ウチの嫁に来い!ウミちゃん!」
「何言ってんですか、ラルクさん」
「あたしウミお姉ちゃんの事、大好きだよ!とってもいい匂いがするし、舐めるととっても甘いの!」
「ええ?タマルちゃんいつ舐めたの!」
「ウミお姉ちゃんと一緒にお風呂入った時!」
「おうふ」
「だから、ウミお姉ちゃんと結婚して、毎日一緒にお風呂入って、ご飯食べて、一緒に寝るの〜」
「え?あのママゴトってもしかしてフラグだったの!?」
どうしよう。
身の危険を感じつつも、なんか喜んでる自分が怖い。
◇
そんなこんなで翌朝、僕はラルクさんと一緒に狩人見習いとして狩りに行く事になった。
「ウミちゃん。狩りに必要な要素はなんだと思う」
「え?なんでしょう。考えた事も無いな。うーん。先手必勝とか?」
「まあ、それも大事だけどズバリ狩りの本質は如何に綺麗に獲物を狩るかって事だね」
「ああ、なるほど。高く売るには綺麗に越したことないですもんね」
「そうゆう事。自分達だけで食べるのなら気にしなくても良いけど売ってお金を得なければ香辛料も調味料も買えないし狩った獲物を長期保存する為にも必要不可欠だからね。
だから少しでも高く売る為には、如何に傷を付けずに仕留めるかが大事なんだ。
だから、どうすれば効率よく安全にしかも綺麗に仕留められるかを何度も何度も実践を繰り返して考察し自分の持ち技にするんだ。
だからこそ弓や剣の訓練は欠かせないし、何回も森に入らないとならない。
でも回数を重ねれば命の危険も跳ね上がる。
だけど、それを乗り越えて1人前の狩人になれるんだ。
決して楽な仕事じゃない。
無理だと思ったら何時でも言ってくれ。
何も狩人だけが人生の全てじゃないからな」
「ありがとうございます。ラルクさん、僕の事心配してくれてるんですよね?でも大丈夫です。僕、結構強いですから」
「そうなのか?まあ、今日は元々それを見るのも目的だからな。うん、まあいいか。なら早速お手並み拝見といこうか」
「はい!」
森深く入って行く中、僕は上面マップに2体のモンスター反応が表示された。
「ラルクさん。前方3時方向、距離200m先に反応有りです」
「は?」
「このまま進むと若干風上になるので周り込みましょう」
「お、おう」
しばらく歩くとシマシマの猪親子が木の皮をバリバリ食べていた。
「ありぁ、タイガーボアじゃねえか。大当たりだな!」
「え?タイガーボア?虎なの?猪なの?」
「ありぁ、肉は上手いし皮も牙も需要があるから上手く狩れれば良い金になるぞ」
「そうなんですね」
「よし、同時に仕留めよう。ウミちゃんは子供の方頼むな」
ラルクさんが背負っていた弓矢を取り出し狙いを定めたので、僕もアイテムボックスの肥やしになっていた必中弓を取り出し矢を番える。
「シッ!」
「シュート!」
2本の矢が同時にタイガーボア親子にHITし、親ボアは虎の様な吠え声を上げた。
子ボアはポリゴンエフェクトを散らして消えた。
「は?なんじゃそりぁ!」
ラルクさんの叫び声で親ボアがこちらに気付き、こちらに目掛けて突進してきたので、もう一度矢を番えてうち放つ。
「シュート!」
親ボアもポリゴンエフェクトを散らし消えた。
「う、ウミちゃん?なんだその弓は?タイガーボアは何処行った?」
「え?この弓ですか?これは50階層ダンジョンの宝箱でGETした必中弓ですね。基本、僕弓使わなかったんで使うの何気に初めて何ですけど上手く行きました。後は…ボアは僕のアイテムボックスに入ってますね。ラルクさん見ますか?」
「あ、ああ」
ラルクさんに言われたので、その場でボアの牙と毛皮を取り出して見せた。
「な!」
綺麗に解体されている牙や毛皮を見てラルクさんは驚愕を隠せないようだった。
「こんなに綺麗に解体されている物は初めて見たぞ!だが、他の部位は?」
「えーと、後は肉ですかね。肉はこのサイズの霜降り肉が15個とサイズの小さい皮と小さいサイズの牙ですね」
ひと塊の霜降り肉を取り出しラルクさんに見せた。
全部で15と言うことは親ボア10の子ボア5のドロップってことかな?
「な!?し、霜降り肉…だと。しかも、このサイズの霜降り肉が15……。いくら何でもさっきのサイズじゃあそんなに取れるはずがない。大体、他の部位の肉はどこ行った?」
「えーと…無いですね。……アハ☆*°」
後頭部に手を添えて笑って誤魔化す。
「おい、おいおいおいおい!こんな上質の霜降り肉、一体幾らで売れるんだ!」
「え?そんなに良いんですか?」
「良いよ!こんなん手に入ったら即売りするよ!いや、そうそう手に入らないから家族で食うかもな。
めっちゃ美味いし!だが、売れば安くても25万コールはいくだろうな。売値は倍以上だろうが」
「あ、そんなもんなんですか?以外と安いですね」
「………えーと。ウミちゃん?安いとは一体」
「え?だって売っても25万コールにしかなんないんでしょ?なら皆で食べた方が絶対お得ですよ。めっちゃ美味いんですよね?」
「いやいやいやいや、25万もあれば1ヶ月は贅沢出来るだろ!それも安く買い叩かれてだ!上手く交渉すれば50万はいける!しかもそれが15個だって!1年は遊んで暮らせるだろ!」
「は、はあ。そうなんですか。凄いですね」
やばい。
ラルクさんの圧がめっちゃ強い。
顔もめっちゃ近い!
そして、僕のアイテムボックス内のコールが1200億超してるとか言えない。
なんせ、装備品は全てMADE in空音で一切コールが掛かってないし、アイテムボックスは空音と共有ボックスを追加で制作しているので、別れてゲームしてても消耗品やら何やらを空音から貰えるし、空音とゲーム内でお茶とか歩き飯する以外にコールを使う機会が全くと言って無かったのだ。
代わりに僕がダンジョンでGETしたレアアイテムやレア素材とかはガンガン空音がアイテム作りで持って行ってた。
「凄いんだよ!ってか!こんなに綺麗に解体出来て、狩りの基本も索敵も俺より上等って見習いって一体なんなんだ!」
「いや〜何だといわれましても…ねえ?」
「はあー。はいはい、もうおしまいおしまい。ウミちゃん、狩人ギルドの試験受けに行くからそのつもりで」
「明日ですか?」
「いや、この間、行商人の馬車が来てたから恐らく7日後だな。その行商人の馬車でベータウン城塞都市まで乗せて貰う予定だ」
「そうなんですか?でもベータウンって結構近いですよね?走ってでも行けるんじゃないですか?」
「何言ってんだ!馬車でも3日は掛かるんだぞ!走ってなんかいったら途中でへばっちまう。それに街道だって野獣が出るからな。安全の為に行商人には必ず傭兵ギルドの連中が付いてんだ。単独で街に向うなんて無謀だぞ」
「え?そうなんですか?でも僕1日かけずに走ってカイロ遺跡都市付近まで行ってアルファ村まで帰ってきましたけど」
「あー、ウミちゃん。まあ、なんて言うか…そのだな」
ガリガリと頭を掻き出したラルクさん。
「はい」
「まあ、そのなんだ、ウミちゃんはまだ若い!」
「は?」
「まあ、な?若いとその…なんだ、まあ過剰とう言うか大袈裟になぁ?まあ言いたくなる事は、まぁある訳よ。
俺も昔はなんて言うか世界を知らなかったって言うか、ぶっちゃけ自分を大きく見せたりしたりな。
所謂、若気の至りって奴だな!
だからその、ウミちゃんも無理して大袈裟に振る舞わなくてもいいんだぜ!
その、大人になるとそれが自分の黒い歴史になっちまって身悶えちまうからよ」
「へ?」
ラルクさんに黒歴史とか言われた。
何だろう。
凄くモヤってする。
うん。明日空音にエアバイク借りよう。
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