第23話ソラ&ウミ&ルールー&ラルク一家

「あー!2人とも帰って来たよ!」


「ソラちゃん!ウミちゃん!」


「2人とも何処いってたんだ!心配したぞ!」


「ちゃんと説明してよ…どうしたの!2人とも!」


 ルールーは2人の打ちひしがれた様子に尋常ではない目にあったのではないかと駆け寄る。


「大丈夫?ソラ?ウミちゃんも」


「ルールーさん……」


 目を真っ赤していたソラはルールーの胸に飛び込み再び泣き出してしまった。


「ソ、ソラ。……ウミちゃん一体何があったの?」


「すみません。今はちょっと…」


「そう。マルタさん、申し訳ないけど、2人を連れてくね」


「そお?」


「ウミお姉ちゃん…」


「タマルちゃんごめんね」


「ほら、ウミちゃんも早くおいで」


「あ、はい。マルタさんすみません。僕行きます」


「ええ。明日は顔出してね」


「はい。ラルクさんもすみません」


「良いってことよ!早く元気な顔見せてくれよ」


「皆さん、お世話になりました」


 そうして、僕ら2人はルールーさんの自宅で1晩過ごした。


 ◇


 翌朝、僕達は朝食を取りながら、ルールーさんに今迄の事と昨日の事の顛末を語った。


「う〜ん。俄には信じられないけど、要するに貴女達は別世界の人間で一緒にそのげーむ?という物のもんすたー?とかいう野獣と一緒にこの国に引っ越して来たって事よね?」


「えーと、まあニュアンス的には合ってますが…」


「それで、ガンマリン沿海都市の人達を助けられなかったと」


「……はい」


「はぁー。それで?」


「それでって!死んだんですよ!沢山!子供だっていた!」


「そう。辛いわね」


「僕達のせいなんです!だから!救わなきゃならなかったんです!なのに…あんなに沢山…」


「何故、貴女達のせいなの?」


「それは!だから!僕達がこの世界に来たから!」


「それは、貴女達の意思だったの?」


「それは違う!」


「なら、貴女達のせいな筈ないじゃない」


「でも!」


「それに、この世界にも野獣や海獣はいるわ。何時だってこの世界の住民は危険に晒されている。でも誰も文句なんて言わない。何故だか分かる?」


「それは…」


「自分の身は自分で!家族の身は家族で!村や街の住民の命はその住民が護っているからよ!街道だって移動するのに3日4日はかかるのよ!何時だって命掛けなの!

 危険がない訳ないじゃない!護衛を行う傭兵ギルドだってある!でも、誰もが助かる訳じゃ無い!傭兵だって死ぬのよ!傭兵がいたって死ぬのよ!そんな理不尽な世界なの!ここは!」


「ルールーさん…」


「それを何?全てを救う?貴女何様なの!私だって薬師をやってても全てを救うなんて出来やしなかったわ!何人も何人も助けられなかった人だらけよ!

 それでも生きようと足掻いている人がいるなら、生きる為に薬を求める人がいるなら、私は最高の薬を作って作って作りまくって1人でも多くの人を救う努力をするしかないのよ!

 此処でしか作れない薬を作るしかないのよ!私は私に出来る事で救える命だけを救っている!貴女はどうなの?」


「僕は…」


「救えなかった命があっても、救えた命もあるのでしょ?」


「は…い…」


「なら、貴女はいいえ、貴女達は堂々と顔を上げて胸を張りなさい。貴女達は誰もが出来なかった事をやり遂げたのだから!」


「……………はい!」

「はい」


涙が止まらなかった。


僕は、いや、僕達は救われた。

ルールーさんに救われたのだ。



泣き続ける僕達をルールーさんはそっと抱きしめ、黙って僕達の背中を撫で続けてくれた。


その温もりが嬉しかった。

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