第22話ソラ&ウミ
僕と空音がガンマリン沿海都市に着いたのは略同時だった。
海上では大砲を撃っては長首に噛み付かれ沈んで行く船団。
沿海都市は倒壊した建物や燃え盛る家々と立ち込める煙。
先程まで人であったで在ろう肉塊と真っ赤に染まる海と港。
そこかしこで泣き声や叫び声が響く。
「うわあああああああああああぁぁぁふざけんなぁあああああぁぁぁ!!!!!!!!!」
空中で目があったレイドボスの首を狩り、その島の様な甲羅に流星剣をぶち込み続ける。
狩っても狩っても再生する首に苛立ちながら、それでも狩り続ける。
暫く斬撃と流星剣を飛ばしていると甲羅に空音のなんちゃってメテオが炸裂した。衝突の衝撃波が襲ってきたので空音にストップをかける。
「ごめん兄にぃ…私、役に立てない」
空音の扱う武器は周りに被害が大きすぎる。
なんちゃってフレアとか使われないで良かった。
あれって核爆弾並の威力だからマジで勘弁。
「ちゃんと倒すよ!だから空音は逃げ遅れた人の避難誘導お願い」
「……うん。わかった。お願いね、兄にぃ」
「ああ、任せろ!」
作業の様に首を狩り、流星剣を甲羅にぶち込み続ける。
暫くすると、攻撃パターンが変わってきたので武技を駆使して捌く。
勿論、延々と流星剣はぶち込み中だ。
「キシャァァァァ!!!」
「うわ!マジかよ!こんな街中でブレス吐くなや!零の型・武技【無限回廊】」
ショートカットに組み込んでいる所謂、無敵吸収技なのだが、これ実は元々、無双乱舞の武技の1つで敵の必殺遠距離攻撃を無限の回廊へと飛ばす技だ。
何故か剣術作成のスキルで覚えた謎スキルの1つでもある。
吸収技なので自分の後の被害を気にする事はないので重宝しているが近距離攻撃には一切使えない。
残った首でバンバンブレスを撃ってくるので全て【無限回廊】で受ける。
そうしている間にも首が再生するので鬱陶しい事この上ない。
そして、このスキル【無限回廊】は十の型である唯一無二のスキル【十剣乱舞】と連動するスキルである。
つまり、【無限回廊】で受けたエネルギーを【十剣乱舞】で解放する武技で受けたエネルギーが多ければ多い程、その技は強大になる。
「武技解放!十の型・武技【十剣乱舞】」
残った首を一気に狩り尽くし残りの武技を流星剣と共に叩き込む。
「うおおおおぉ!くたばりやがれぇぇぇぇ!!!」
「ギュオーン!!!」
最後の武技を叩き込んだ瞬間、目の前のレイドボスがポリゴンエフェクトを散らして消えた。
Congratulation!!!
mission complete!!!
と目の前に表記され、大量のドロップアイテムとコールがアイテムボックスに収められた。
「……終わった」
地上に降り立った僕は周りを見渡し唇を噛んだ。
「………兄にぃ」
後から声をかけてきた空音は僕を後から抱き締めて声を殺して泣いた。
結局、僕らは救えなかった。
全部を救うとか烏滸がましいけど、それでももし先にレイドボスを倒しておければと後悔してもしきれない。
だけどあの時、海中にいたレイドボスに手は出せなかったし、その間に他のエリアボスを放置なんて出来なかった。
街道を通れば誰もがエリアボス戦に強制突入になる。
そうなれば、護衛を付けていたとしても恐らく全滅は必至だったろう。
何せエリアボス戦はエリアに入った瞬間からそこから出る事は出来ないのだから。
だからレイドボスが動き出すまで待つことなんて出来なかったんだ。
「帰ろう空音」
空音は頷くとエアバイクを取り出し2人でエアバイクに乗りアルファ村へと向かうのだった。
帰りの道中、僕らは終始無言だった。
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