第21話ガンマリン沿海都市の人々

「おい!空いてる船は全部だせ!すげぇ大漁だぞ!捕っても捕っても網がちぎれそうだぜ!」


 ガンマリン沿海都市の港は今や大漁の大騒ぎになっていた。

 網を下ろした傍から満杯になる網に漁師達は大賑わいしていた。


「こりゃ市場の仕事も大騒ぎだな!ガッハッハッ!」


 よく晴れ渡っている空も凪の海も漁をするには絶好の日和となっており、行き場を失った魚達が水面を跳ねまくる様子に笑いが止まらない。



 だが、彼らは魚を船に引き上げるのに忙しく気が付かない。

 これ程までに魚が沢山居るのにそれを狙って飛んで来る海鳥が1羽も居ないことに。



 それは始め水平線の向こう側に現れた。

 漁をしている漁師達が1度も見た事がない島だった。

 初めは蜃気楼か何かが見せているものだと気にする者も少なかった。


 しかし、その島は徐々にではあるが、確実に大きく見えだしていた。


「お、おい!何か大きくなってないか?」


「そうか?」


「ん?確かに言われてみれば」


 そして、今まであれ程、跳ねまくっていた魚が今度は網を下ろしても全く採れなくなった。


「そっちはどうだ?」


「こっちもダメだ!取り尽くしたか?」


「かもしんなぁ。ガハハ」


 今まで凪でいた海の波が急に騒がしくなる。


「お、おい!あの島やっぱり此方に近付いているぞ!」


 どんどんと大きくなる島に漁師達が騒ぎだす。


「港へ戻るぞ!早くしろ!」


 見る見る内に大きくなる島に煽られ目測では測れないほど巨大な島の海面から七本の長い首が高波を起こしながら擡げる。


「キシャッッッキシャッ!!!」


 その内の一首が雄叫びを上げると一瞬の沈黙の後、まるで蜘蛛の子を散らすが如く漁船が走り出す。


「ひぃぃ!」


「な!な!な!」


「に、逃げろおぉぉぉ!!化け物だああああ!!」


 一斉に港へ向かう者、左右に別れる者と海上は阿鼻叫喚の場へと移り変わる。


「ガアアア!!!」


 ドシャーーン!!!


「あああ、ヤンソン所の船がやられた!!」


「逃げろおぉぉぉ!何としても逃げきれぇ!!」


「ガアアア!!!」


 ドシャーーン!!!


「た、たすげでぇーーーー!!」


「うわあああ!!」


「来るな来るな来るなぁー!!」


 次々に喰われ沈んで行く数多の漁船。

 大漁だった為に重すぎる船の動きは鈍い。


 そして、その脅威はガンマリン沿海都市へと迫っていた。


「お、おい!あれはなんだ?」


「ねぇ、あれ船が襲われてないか?」


「こっちに向かってくるぞ!」


「おい!あの船の旗グラムの所の!」


「いや、やだ!嘘よ!嘘だって言って!!貴方!!いやぁぁーーーー!!!」


「うわあああ!!」


「化け物が来るぞおぉぉぉ!!!!」


 そして、パニックに陥った沿海都市の住民は我先へと逃げ出し、なにも出来ずに座り込む者やこれ幸いと盗みをする者など、此方も阿鼻叫喚の嵐であった。


「世界の終わりだ」

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