第17話ソラ&ウミ&ルールー&タマルちゃん家&ハバ爺

 その晩フカフカベッドで最高の睡眠をとった事で目覚めも最高だった。


「ソラ、もう起きてる?」


「はい、ルールーさん」


「朝食取ったら出かけましょ」


「はい!」


 ◇


 迷う事がなかった私達は、帰りは3時間程で帰ってこれた。


「うーん。速いけどやっぱりお尻が痛いわね」


「まあ、それは」


「でも、馬車の何倍も快適だったわ」


「そうなんですか?私、馬車には乗ったこと無いのでよく分かんないですけど」


「ああ、そうなのね。…くっ!ソラにもあの過酷さを味あわせてやりたいわ!」


「なんでですか!」


 そんなやり取りをしていると村の入口から男の人が桑を持ってやって来た。


「あら、ハバさん。おはようございます。これから畑仕事ですか?精がでますね」


「あんりぁ、ルールー先生でねぇか。もう帰ってきただか?」


「ええ、そうなんです」


「ハバ爺おはよう。腰痛の薬はちゃんと効いた?」


「あんれ?今度はちゃんとソラちゃんかぁ?」


「今度は?」


「んだぁ、昨日ソラちゃんとそっくしのおなごが来おっての」


「ハバ爺!そのそっくりな子、今何処にいるの!」


「んあ?その子ならタマルちゃんとこさ泊まる言っとったよ」


「ありがとう!ハバ爺!」


「なんのぉ〜」


「ハバさん。では私達はこれで、お仕事頑張って下さいね」


「おおさねぇ〜」


 私達はタマルちゃん家に急ぎ足で向かった。


 ◇


 タマルちゃん家に着くとマルタさんが庭先で調味野菜を毟っていた。


「おはようございます。マルタさん」


「あら!ソラちゃんと…ルールー先生!もう、お帰りになったの?」


「ええ、ちょっと早く移動する手段がありまして」


「そうなんですね。ああ、それよりソラちゃん!お姉さんがいらしてるわよ」


「お姉さん?」


「お姉さん?お兄さんじゃなかったの?ソラ」


「あっ!そうだった。えーと」


「ふふふ。何だかよく分からないけどウミちゃんならタマルと一緒よ。良かったら起して上げて」


「あ、はい。ありがとうございます。そうします」


 私は何だかドキドキしながら、ルールーさんはニヤニヤしながらタマルちゃんの部屋へ入る。


「……………」


「……………」


「Zzz」


「ん〜ウミお姉ちゃん好き〜Zzz」


「……………」


「ぷっ!これはこれは随分とお熱いですねー」


「スゥゥ」


 ガンッ!!


「痛あああ!!!」


「わああああ!何?何?」


 頭を摩りながらもキョロキョロ周りを見渡すタマルちゃんを未だに抱き締めてるウミちゃんにもう一撃入れる。


 パンッ!!!


「最っっっ低ぃぃぃぃ!!!」


「うあ!な、何?あ、ソラちゃん?」


「ソラお姉ちゃん!」


「あー。そう言えば見た目そっくりでもお兄さんなんでしたっけ?」


「変態!ロリコン!氏ね!」


「な!な!何?どうなってるの!」


「修羅場ねぇ〜」


 収拾の付かないこの場に調停者マルタさんがやって来た。


「あら、朝から皆元気ね。ほら早く朝ごはん食べなさい。ソラちゃんとルールー先生もよろしければどうぞ」


「あ、ありがとうございます。行きますよソラ」


「うぐぅ」


「ほら、タマルにウミちゃんも早くいらっしゃい」


「うん!」


「あ、すみません」


 そして、リビングに着くとラルク氏が既にいたが、その頬が薄ら赤い紅葉形が残っていた。

 どうやら、こちらも修羅場だったらしい。


 ◇


「「「「「いただきます」」」」」


「何だか申し訳ないですね。突然の来訪でしたのに」


「いえいえ、昨日ウミちゃんが食材沢山下さったのよ」


「へぇー。このロリコンはそんな根回ししてたんですか。へぇー」


「いや!なんでだよ!普通にお世話になるならするだろ!」


「何のお世話よ!この変態!」


「泊めて貰うんだから家事手伝い位するだろ!普通に」


「昨日ウミお姉ちゃんといっぱいお手伝いしたんだァ〜」


「そうなんだ。偉いねぇータマルちゃんは」


「うん!それで一緒にウミお姉ちゃんとお風呂で洗いっこもしたの〜」


「タマルちゃん!?」


「へぇ~そうなんですか。一緒に洗いっこしたんですか。そうなんですか。へえ〜」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


「………… 」


 そっと目を逸らすウミお兄さん。


「何だか寒くない?」

 さすさす。


 流石にこれ以上、空気を悪化させておくのも気が引けるので話題を変えよう。


「んッん!だけど、ウミお兄さんは本当にソラにそっくりね。一卵性双生児で男女に別れるとか珍しいくない?」


「え?ウミちゃん男の子だったの?」


 ガタタッ!!!


「な、何だと!そうなのか!ウミちゃん!」


「え~パパママ何言ってるのぉ?ウミお姉ちゃんはちゃんと可愛い女の子だったよぉ~。プニプニで柔らかくて良い匂いだったの!」


「え?ソラ?どういう事?お兄さん…なのよね?」


「えっと…」


「あはは…何と申しますか、中身は男と言いますか」


「え?どういう事?心は男性って事?オナベなの?」


「ぐっ!じゃ、じゃあ、そういう事で」


「兄にぃ〜」


「いや、だって説明しようが無いだろ」


「むぅー。そうだけど、納得いかない」


「いやいや、空音のせいじゃんか!」


「だから納得いってないんじゃん!」


「いや!どないせいと!」



 何だか良く分からないけど、グダグダで修羅場は収まったようね。

 めでたしめでたし。



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