第12話ソラ&ルールー

「うっわぁ〜!大きな城壁!」


 エアバイクでそのまま門を潜るのは警備兵に職質されそうなので途中で歩きにチェンジした。


「あれがベータウン。城塞都市ベータウンの城壁よ」


「まさかこんなに大きな街だとは…あれ?ひょっとして大きいの城壁だけ?」


「中の街も大きいわよ」


「でも、なんでこんな大きな街の傍にあるアルファ村はあんなに寂れてるの?」


「ソラ。いくら何でもそれは失礼じゃない?」


「いや、だって普通は大きな街の近くの村や集落はこの街に来るまでの休憩所として発展する物じゃないの?」


「確かにそうだけど本当なら片道3日は掛かるからね。本当なら!」


「あ、そうか」


 そう。私達は馬車で片道3日掛かる道を4時間で到達してしまっていた。


 途中で何度か迷ったので、ストレートでこれたならもう少し早く来られただろう。


 そして、今私達は、ベータウンの一般入場門の前で並んでいる。


「そう言えば、こういう所って身分証とか必要だったりするんじゃ?」


「大丈夫よ。ほら」


 そしてルールーは、首に掛けていた細い鎖を服の中から引っ張りだし薬師資格証明書なるカードを出して見せてくれた。


「これがあれば、問題ないわ。ソラの事も私の所に来ている薬師見習いって事にするから。実際は私より能力高いけどねぇー」


 急に目のハイライトが消え失せるルールーさん。


「えーと」


「まあ、良いわ。次いでにソラも薬師免許取ったら?恐らく1発で合格出来るわよ」


「いやぁ、私は別に薬師になるつもりは…」


「まあ、私はどちらでも構わないけど、持ってても損は無いと思うわよ?身分証にもなるし」


「……う〜。身分証かぁ。そうなんだよなぁ〜。帰る手段を探すにしても色んな所を廻るにはやっぱ必要かなぁ〜」


「そう言えば、今更だけどソラって何処に住んでたの?」


「はは。本当に今更だね」


「だって初めてあった時は帰れないって大泣きしてたじゃない。その後も随分落ち込んでて、なんだか聞ける状態じゃなかったし…ねぇ?」


「うっ!そうでした。その節は大変ご迷惑を…」


「ふふふ。良いのよ。それに今更じゃない?ね!」


「ふ。ありがとうルールーさん」


 そんなこんなで話ているうちに私達の番になって本当にアッサリと通過出来てしまった。


「うっわぁ〜。大きな街!」


 そこは見渡す限り大小様々な建物が建ち並び、かと言って猥雑な感じはしない大きな街があった。

 先が見えない程の真っ直ぐの道に石畳か敷き詰められ入口から放射状に幾つも道が走っている。

 街の主要道路の交通整備がキッチリとなされ交通網が確立されている。


「ふふふ。ソラったらさっきも似たような事言ってたわよ」


「ふぇ!そ、そうだっけ?」


「ふふふ」


 楽しそうに笑うルールーさんに釣られて、はにかんでしまう。


「さてと、取り敢えず先に用事を済ませましょうか。その後にソラの気になる所でも廻りましょう。何せ実質往復分で5日も時短出来てるしね。但し、宿代と食事代は別だから何かしらで稼がないとね」


「ああ、そうだった。どうしようかな?」


本当なら往復4日は馬車で寝止まり、食事は保存食の筈が往復しても8時間、往復で半日もかからないのだ。

確かに食事代と宿代が嵩む。

思わぬ弊害が。


「でも別に5日も泊まらなくて良くない?」


「そうだけど、ソラは観光したいんじゃない?」


「うっ」


「ま、それも後で考えましょ?」


「そうですね、取り敢えずは薬品を買いに……あのルールーさん。後で良いので硬貨見せて貰えませんか?」


「良いけど何するの?」


「えーと、私の持ってるお金と通貨同じなのか確かめたくて」


「え?だってソラって、こっちの国出身じゃないのよね?なら普通に違うんじゃない?」


「いえ、ふと思い出したんですけど私、初日にモンス狩った時に素材と一緒にお金もgetしたのを思い出しまして、でも今持ってるお金とこちらでgetしたお金が同じ表記になってるんですよ。もし違うなら別表記になるんじゃないのかなって思って」


「なる…ほど?…もんす?」


「で、百聞は一見にしかずって事で見れば早いかなと」


「ひゃくぶ?ま、まあよく分からないけど、兎に角見ればわかるのね?」


「そゆことです」


「なら、早速行きましょ。薬師ギルドへ」



 そんな訳で、やって来ましたアッキ・ハッバ・ンンッ!

 薬師ギルドへ。


「これとこれとこれね。ああ、後これもだった」


「ペルガモン、クミン、コリアンダー。何だかカレーが作れそう。レッドセージ?普通のセージとは何が違うのかな?」


「ソラ、お財布頂戴」


「あ、はい」


「ほら、ソラ見ててね」


 そして、ルールーさんは硬貨の説明をしつつ買い物を済ませた。


 結果から言うならば私は手元に、硬貨を取り出せなかった。

 全くこれでは宝の持ち腐れである。


「うーん。せめて素材の買取りとかしてくれる場所があればなぁ〜。ルールーさん」


「ん?なに?」


「この街って冒険者ギルドとかってないんですか?」


「冒険者ギルド?何それ?」


「えっと依頼に応じて獣狩ったり、薬草採取したり、素材を買ってくれたりする場所?私も良く分からないけど」


「えーと?獣を狩るなら狩猟ギルドかしら。薬草は基本ここで買取してるわね。後、素材?物は何かしら?」


「えーと、ウルフの毛皮と牙と爪。後お肉かな?」


「うーん。毛皮は狩猟ギルドかしら?商業ギルドでも買取はするだろうけど、基本は狩猟ギルドかしらね?牙と爪は細工師ギルドとかが買取しれるかしらね。肉は食肉ギルドでしょうけどウルフの肉は臭いから余り売れないかもね」


「そうなんですか」


「あれ?でも初日に狩ったってソラが狩ったのって私が襲われてたあの時のあれ?」


「そうです。あの時のあれです」


「それってベアウルフじゃない!普通のウルフとベアウルフじゃ買取価格が変わる筈よ。牙と爪も薬師ギルドで売れるわ」


「本当ですか!ならすぐ売りましょう。今売りましょう」


「待って待って!じゃあ私が売った方が買い叩かれないから一緒に行きましょう」


「ありがとうルールーさん!……でも私だと買い叩かれるの?」


「そうよ。免許を持っているか持っていないかで全然対応が違うわ。資格はそれだけ取得するのが困難なのよ」


「なる」


「だから、1発合格確定しているようなソラは……まあ、私から見ればどうかしてる…とは思うわね」


「なる」


「まあ、良いわ。兎に角、売りに行きましょ」


「イエッサー」


「何それ?」

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