第11話ウミ&ハバ爺&タマルちゃん
「えええ!何処だここ?」
聴こえてくる波の音や鳥の囀り。
チリチリと肌に感じる日差し。
森と水の香り。
身体に感じるそよ風を体感して僕は今………?
体感!?
なんでゲームで日差しや風の感覚や匂いまでがあるんだ!?
爽やかさを感じていた瞬間が、一気に血の気が覚める。
「どうなっている?」
慌てて木刀を取り出し気配を飛ばし索敵してみる。
「特に危険はなさそうだけど、一応モンスは居るっぽいな。精々、第5階層の雑魚モンスレベルか?いや、もっと弱いか?なら第2階層くらいかな?」
基本的にダンジョンアタックしかしていなかった為、5階層毎のモンスターレベルしか分かない。
なのでそれ以上か以下でしか判断出来ない。
ただ、第1階層と2階層だけは空音とマップコンプに付き合っていたので何となくだけど分かる。
取り敢えず此処に空音が居るのか確かめる為にフレンドリストを立ち上げる。
そう。
〈Genesis World〉内でソラがフレンドリストから消えていたのだ。
「あった!」
やはり、空音は此処にいるらしい。
ならば、フレンドチャットを飛ばしてみる。
『空音!無事か?迎えにきたぞ!今、何処にいる?』
送信は出来た。
だけど既読も返信も来ない。
暫くまっても返事がないので探索を始めてみる。
「どっちに行けばいいのか?取り敢えずモンスのいない方に行くべきか?わざわざ危険な方には行かないよな?」
空音は好奇心旺盛だが、以外と想定外に弱い。
ならば、いきなり放り出された状況に戸惑って動けなくなっている可能性があるけど。
でも、あれから1週間たっている。
なら、何かしら行動しているか?
だが、空音だって馬鹿じゃない。
日を跨げば流石にログアウトできる安全な場所を捜して移動するだろうし、見つけたらすぐにログアウトする筈だろ…う…。
「まさか!」
慌ててログアウト選択を探したが、やはり無い。
「マジかよ!これじゃあ空音を見付けても帰る手段がないじゃないか!くそ!」
参った。これじゃあ二重遭難だ。
そこまで考えていなかった。
「はぁー。空音になんて言おう。合流したら絶対に僕が帰る方法見付けて迎えに来たとか思うよなぁ〜。無いと知った瞬間、希望が絶望になるよなぁ〜。うわぁー参ったなこれは」
しかし、フレンドチャットは送ってしまったし、送信出来たという事は、そのうち空音に届くだろう。
ならば、どちらにしても現実を知るのが早いか遅いかな訳で……
「はぁー。マジで参った」
今更悩んでもしょうが無い。
「取り敢えず合流を目指して探そう……て言うか手掛かり一切無いんだった!」
結局今現在の状況じゃ、ただの取らタヌだった。
「兎に角、人のいる場所を目指そう」
モンスターの少ない方へと足を進め、何気に空音とやったマップコンプから導かれる村や町がありそうな方角へと進んで行く。
暫く歩く事20分程で集落を見つけた。
「何気にマップコンプが役立つもんだな。何処で何が役立つか。空音の趣味も強ち無駄では無かったと言う事か…しかし」
随分と小さい村だ。
「ここで空音の情報が得られれば良いけど…」
村の入口に向かって歩いていると農作業をしてたと思われる第1村人発見。
「すみません。ちょっと良いですか?」
「んだぁ?」
「ちょっと聞きたい事が…」
「あんれ、ソラちゃんじゃねぇでが。どないしただ?こちたらどこでぇ」
「ある……って!ソラの事、知ってるんですか!」
「んな!どうしたべぇソラちゃん!ちょっくら近くておじさん照れるでねぇか」
「あ。えーと。こほん。すみませんでした。それで、あの…僕と同じ顔の人がここに居るんですよね?」
「同じ顔だぁ?」
「僕達、双子なんです!それで逸れてしまって、今までずっと捜してて!あの!お願いします!ソラの所に!空音の所に連れてっ下さい!」
「なんとまぁ!双子だか?こりぁあ、たまげたなぁ〜。……あ〜そだな、ソラちゃんなら恐らくルールー先生ぇ所じゃて。着いてきんな」
「あ、ありがとうございます!」
村に入って行くと会う人会う人に挨拶された。
「ルールー先生ぇ!お客さんじゃあ!入るでぉ!」
ガタガタ
どうやら閉まっているらしい。
ガタガタ
「んお?ルールー先生ぇ診察いってるだか?だども鍵かけてってのも、めんずらしいだなぁ」
「あれ?ハバ爺?こんな所で何してんの?ソラお姉ちゃんまで?……あれ?なんでソラお姉ちゃんここに居るの?」
「どうゆう事!」
ガシッとその女の子の両肩を掴み尋ねる。
「え?え?ソラお姉ちゃん?」
「僕は空音の…ううん、ソラちゃんの双子のあにぃぃじゃなくて姉のウミって言うの。ソラちゃんは何処に行ったの!」
「ふえ!ふ、双子なんだソラお姉ちゃん。こんなに可愛いお姉ちゃんが双子なんて……お姉ちゃん2人と一緒にお手手繋いで、ぎゅう〜として……えへへ〜ぇ…えへへへ〜ぇ」
どうしよう。どうやら女の子は両手で頬を押さえながら身体をクネクネさせながら思考の彼方へ逝ってしまった様だ。
「あ、あの〜お嬢さん?」
「タマル嬢ちゃん。ルールー先生とソラちゃんどっか行っただか?」
「はっ!」
どうやら覚醒したらしい。
「お、お姉ちゃんごめんね?」
両手で顔を押さえながら上目遣いで謝る幼女。
可愛いな!コンチクショウ!
「う、うん。大丈夫だよ」
「ソラお姉ちゃんはルールー先生とお出かけしてるよ」
「お出かけ?」
「ああ、そだったそだった!ルールー先生と買い出し行くゆってただなぁ」
「そうだよ!ハバ爺」
「え、と。すぐ帰って来るのかな?」
「ん〜?分かんない!」
ガクッ
「そ、そうなんだ。アハハ」
「隣り街行ぐっつうてたから1週間は帰ってこねんじゃ」
「え!1週間も?」
「んだ!隣り街まで馬車で3日は掛かるだよ」
「マジか」
再び打ちひしがれていると
「お姉ちゃん!あたしの家来なよ!ソラお姉ちゃん帰ってくるまで泊まったらいいよ!」
「え?マジで?良いの?」
「いいよ!だからお姉ちゃん一緒に遊ぼ!」
5歳(多分)女児に家に誘われる18歳男子。
…………。
なんだろう?とても如何わしく感じる。
「あ、ありがとう。それと僕はかい…じゃなくてウミって言うの。よろしくね」
「うん!ウミお姉ちゃん!あたしタマルって言うのー」
「タマルちゃんかぁー。可愛い名前だね」
「えへへー。ありがとう、ウミお姉ちゃん!」
「アハハー。そう…お姉ちゃん…いや確かにお姉ちゃんなんだけど……なんだろう。何だか目から涙が止まらないなぁー」
「あはは!変なウミお姉ちゃん!」
こうして僕は空音が帰って来るまでタマルちゃん家にご厄介になる事になった。
……。
タマルちゃんのご両親、ちゃんと僕が泊まるの許可してくれるのかなぁ?
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