第9話ウミ

 考えろ。

 原因はなんだ?

 空音が最後にした行動は…。


 チェインクエストのラストクエストアタック!



 そこに空音が消えた原因がある。

 ならばする事には簡単だ。

 辿れば良い。


 幸いルートは解っている。

 短縮も出来るだろうけど、それをして空音の居場所に行けなかったら本末転倒だ。

 だから

 面倒でも空音の足取りを辿る。

 繰り返す。


 最速で。

 僕にはそれが出来る力がある。


 取り戻す!

 絶対に空音を!

 絶対にだ!



 大学の夏休みが長期で本当に良かった。

 ただ、空音の状態からして向こう側に行けば僕の身体も消え失せる可能性がある。


 だからしばらく戻れない可能性を考慮して、冷蔵庫の中身は今日中に処理しよう。

 冷食やインスタント食品は問題ないしプロバイダーへの振り込みは自動引き落としだから問題ない。


 後は電源は絶対に確保。

 今まさに空音の命を留めているゲーム機の電力は確実に確保しなければ。

 取り敢えず、隣のソーラーシステムと内部バッテリーがあれば災害級の嵐でも来なければ停電しないだろう。

 電気代も引き落としだから問題無し。


 家の戸締りを3度チェックして、もしも10月までに戻れない事を考えて、大学に休学手続きをしておこう。

 ご近所さんにも一応、2人で出かけるので暫く家に居ない事を伝えておく。


 準備は出来た。

 覚悟はどうだ!


 勿論言われるまでもない。

 必ず助ける。

 空音、待ってろ!



 行動を起こしてから1週間程かけて僕はチェインクエスト〖創世への導べ〗のラストクエスト第100階層に来ていた。


「行くぞ!ラストクエストスタート!」


 ◇





 ー説明文ー


 チェインクエスト〖創世への導べ〗


 このクエストは第1層から始まり第100階層でエンディングを迎えるメインストーリークエスト。


 知恵へと至る柔軟性、力を伴う俊敏力、住民との平和で友好な関係、加えて物作りへの愛が無ければ到底辿り着くことの出来ないエクストラクエスト。


 それがチェインクエスト〖創世への導べ〗である。


 ーーー



 Congratulation!


 称号〖創世のつくりべ〗を手に入れた。



「マジかよ〜!そんな展開ってありかよぉー!最初に出て来た形見の髪飾りが、最後の伏線になってたたとか!それでも頑張ってたんだよな!それが支えだったんだもんな!良くやったよアリィシャ!偉かったなぁ〜!………だああああ!だ、ダメだぁ〜涙で前が見えねぇよぉー!」


 スンスン


 スンスン


 スンスン



 しばらくの間、余りの喪失感にボーとしてしまった。


 はぁー。


「帰ろ」


 そうしてログアウト選択した途端目眩に襲われ目の前が真っ白になった。


「ぐあっ」


 泣き腫らした目にこの日差しはちとキツい。


 目を細めて辺りを見渡すとそこは森に囲まれた湖のほとりだった。




「何故に!?」

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