第8話ソラ&ルールー

 ー説明文ー


 チェインクエスト〖創世への導べ〗


 このクエストは第1層から始まり第100階層でエンディングを迎えるメインストーリークエスト。


 知恵へと至る柔軟性、力を伴う俊敏力、住民との平和で友好な関係、加えて物作りへの愛が無ければ到底辿り着くことの出来ないエクストラクエスト。


 それがチェインクエスト〖創世への導べ〗である。


 ーーー



 Congratulation!


 称号〖創世のつくりべ〗を手に入れた。



「ぐすん。いいお話だったよ。まさか最初に出て来た形見の髪飾りが、最後の伏線になってたなんて。演出が憎過ぎるよ。絶対泣かせにきてたでしょ!分かってても泣けるんだよ!」


 はぁー。


 うん。やっぱり兄にぃのピンポイントな泣きゲーストーリーだった。

 うん。うん。やっぱり兄にぃにも体験して貰いたいな。

 兄にぃ絶対好きだよ!この話。確信持てるよ!


「さてと、兄にぃ晩御飯用意してくれてるぽいからログアウトしよっと。またお得意の山盛り焼きそばかな?ふふふ」


 ジジジッジジッ


「何?」


 ログアウトを選択した途端立ちくらみのような感覚を覚える。


 光の波が押し寄せる。


「眩し!」


 目を瞑ってソロりと片目を薄目で伺うと夜空に土星の輪の様なものが見えた。


「え?何?何処?ここ!」


 目の前の湖に淡く光る土星の輪の様なものが映し出され、森の木々が反射するかのように煌めいてる。

 あまりにも幻想的な景観に圧倒されてしまった。



「ふわぁ〜。凄い綺麗」


 五感全て感じている様な臨場感を身体全体で感じて深呼吸した。


「なんだろう。凄い気持ちいい。なんだか癒されるなぁ〜」




 風を身体全体で感じる。


 木々の爽やかな香りがする。


 波の音が心地よい。


 幻想的な景観を眺めウットリしていると、ふと声が聞こえた様な気がした。


「ん?なんだろ」


 声が聞こえた方角を見るとサブマップに光点表示。


 赤色が6。


 黄色が1。


 ちなみに赤色はモンスターで黄色はNPC。


 ダッシュで駆けつけると尻餅をついた女性にオオカミモンスが飛び掛る直前だった。


「響け!C-dur!C-moll!」


 音の波形を攻撃力に変換するスキル〈音変換構築式〉はチェインクエストの最中に手に入れたスキルで、ほとんど範囲攻撃しか持ち合わせていない私の唯一の手加減出来る単体オールラウンド攻撃スキルなのだよ。


 一応、キャラ用の物理近接武器としてハンマースピアと強化外骨格用の浪漫武器パイルバンカーは作ったのだけど後ある武器が浪漫求め過ぎて多角光学兵器とか多連層収束砲とか自動浮遊砲台とかミラージュレールガンとかワンマンアーミーを地で行く使用になってしまったので手加減が難しいのです。


 まあ、おかげでプレイヤーキラーとかを完膚なきまでに叩きのめしたので一切PvPで狙われる事は無かったけど。


 でも巷で私達の事を災害呼ばわりしてる人達がいるらしい。

 いつか絶対にボコる!


なんて考えているうちにオオカミモンスは全てポリゴンと化してアイテムとお金がアイテムボックスに入ってきた。

流石にレベルは上がらないか。


「あの、大丈夫?」


「ひっ!」


どうやら怖がられたっぽい。


「貴女1人でお家帰れるなら私もう行くね」


「あ!ご、ごめんなさい!助けてくれたのに目の前で起きた事が信じられなくて…あ、あの大したお礼も出来ないけど、良かったら家で晩御飯でもご馳走させて」


「あー!晩御飯!」


∑(O_O;)ビクッ


「あ、ごめんごめん。兄にぃが晩御飯用意してるはずだったから」


「そ、そうなんだ」


「うん。ごめんね。折角誘って貰ったのにぃーと!あははーあのーこんなん今更なんだけど寝る所お借りできないかな?」


「え?だったら晩御飯も…」


「あー。そうだよね。えーとお願いしてもいいかな?」


「ふふふ。変な人ね。どうぞ遠慮しないで」


「ありがとう」


「私はルールーよろしくね。貴女は」


「私はソラだよ。ソラって呼んで」


「うん。ソラちゃん。改めて助けてくれてありがとう」


「どういたしましてだよ。因みになんでこんな時間にこんな場所にいるの?」


「あ、えーと実はこの先の湖の畔に夜にしか取れない金色に灯るオリブの葉を採取しようとね。薬の調合に使おうと思ってたのだけど、まさかベアウルフに出合うなんて。全くついてなかったわ」


「あー。あの光ってた木の葉っぱかぁ〜」


「ね、ねぇこんな事頼むの烏滸がましいのは十分承知しているのだけれど……採取手伝って貰えないかな?護衛代はちゃんと払うし。駄目かな?」


「大丈夫ですよ。寝る所貸していただけるのであれば私は」


「ありがとう!じゃあ早速いきましょ!」


「そんな引っ張らなくてもついて行きますって!」



こうして、私は安全にログアウト出来る場所を確保したのだけど、結果としてはログアウト出来なかった。

ログアウト選択ができなくなっていたのだ。



「一体どうしたらいいの?怖いよ兄にぃ……お願い助けて」


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