第5話ソラ&ウミ
今僕のメイン武器は空音が廃材置き場にあった木材を削って作った木刀だ。
まあ、アダマンタイトの片手剣は武技を使えば自爆技確定。
鍔迫り合いはおろか何かに強く当たっただけで爆発する危険物とかしているからだ。
もう投擲用の爆弾としてしか扱えない。
まあ、実質使い捨ての攻撃力としては優秀なのだけれど。
しかしそれでは折角作った武技を腐らせる事になる為、急遽空音に制作依頼した訳である。
そして、この木刀。木刀と侮るなかられ。
何せ、プレイヤー作成の武器は力玉さえあれば幾らでも強化出来るので、木刀のしなやかさや軽さに加え攻撃力もその辺で売ってる鉄の剣より攻撃力は高い。
まあ、アダマンタイトの片手剣の方が攻撃力は上だったが、あまり良い武器だと剣技の技術や立ち回りが疎かになりそうなので、あえて抑えて貰った。
まあ、後から追加で強化出来るらしいし。
そんなこんなで第1層をコンプしたので、第2層をコンプする事となった。
空音の言では他の階層を回らないとクリア出来ないイベントがあるらしい。
そして、今僕らは第2層の町セカンドタウンに来ている。
因みに皆して始まりの町と呼んでいる町はファーストタウンと言う名前があるらしい。
安直にも程がある。
まあ今何階層なのか分かりやすいけど。
「ウミちゃん!早速ゴミ漁りしに行こうか!」
「いや、確かにそうなんだが言い方とか、もう少し何とかならんの?」
「えー?じゃあ廃材漁り?」
「いや、漁りから離れなよ!」
それからNPCと交渉してジャンクパーツを集める作業に取り掛かる。
何故そんな事をしているかと言えばお宝の山だからだ。
初めにその事に気付いたのは勿論空音なのだが、その可能性を導き出せたのは僕のお陰である。
現実、僕がメイン武器を失った事が切っ掛けになった訳だ。
自慢出来る話ではないが…。
実際、武器を使用すると自爆技になるので遠い目で黄昏ながら廃材置き場の前でいっそRPGの勇者の如く檜の棒でも装備するかと呟き事が発端で、空音がその一言に何か閃いたのかあれよあれよとNPCと交渉して廃材をGETし制作スキルで木刀を作り上げたのだった。
味を占めた空音はファーストタウンであらゆる廃材やゴミ扱いされているものを無料もしくは猫なで声で漁り尽くしていった。
第1層のマップコンプと共に第2層の始まりはやはりセカンドタウンのゴミ漁りと言う名のお宝集めからだった。
このゲームの主旨からして制作過程に柔軟な思考が求められるなら、物資の調達にだって柔軟性が求められ、どれだけ早くその答えに辿り着くかも、このゲームの醍醐味なのかもしれない。
実際、この方法でお宝集めをしているプレイヤーを僕は見たことがない。
故に恐らくだが第15階層にいるらしい先行組に引けを摂らないどころか空音のキャラは、そんな強キャラアバター達から見ても頭1つ飛び抜けての強キャラになっていると僕は予想している。
本人は自覚していないのだろうが…。
「な〜にか、い〜もの、あるかなぁ〜」
「僕は発想力に疎いから何が掘り出し物とか判らんけどね」
「そうなの?ならウミちゃんの持ってるスキルで組み合わせ出来そうなの私が考えようか?何か欲しいものある?」
「僕は早く無双出来る環境が欲しいよ」
「うーん。無双かぁ〜。ダンジョンアタックは5階層事だねぇ」
「先は遠いな…」
ふと遠い目をして黄昏れる。
「えと。取り敢えず第5階層までアクティベートして見る?そこでウミちゃんだけでもダンジョンアタックしてても良いけど」
「それだと一緒に双子プレイとか出来ないけどいいのか?」
「うーん。でも私の都合ばかり優先して貰ってたら兄にぃのモチベーションがダダ下がっちゃうでしょ?それは何だか申し訳ないといいますか…」
「そうなぁ〜。なら取り敢えずソロでやってみてどっちかが無茶そうになった時点で合流てのは?」
「うーん。そうだねそうしようか」
「なら、取り敢えず第5階層までのアクティベート一緒によろ」
「うん。わかった」
「どうせ空音の事だから移動短縮系のアイテムとか開発してすぐ追いつくんでしょ?」
「あー。そだね」
「なら、僕はダンジョンアタックで効率的無双方法の開発でもして待ってるよ」
「うん。大丈夫。すぐ追いつくよウミちゃん!」
こうして、僕達2人は互いにソロプレイする事になったのだ。
僕は正直、ホッとしていた。
このゲーム。僕が好きになる要因が少なすぎるのだ。
でも、僕はこの時気付いていなかった。
この判断が後々に起きる事件のせいで酷く後悔させられることに……。
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