【討伐】土竜を討伐せよ【★1】

第2話 俺の初期装備は間違っていた。

===========

────00:00────

===========


 ダンジョンに落とされた、フリーターと聖剣。


 光り輝く聖剣はめちゃくちゃ強そう。


 しかし────


「俺はスラッシュアッ○ス派なんだよぉ!!」


 しかもソロ攻略だと……。

 まぁマルチなんて幼馴染の花澄としか、したことないけど。



(…………っていうか冒険譚、財宝って何だよ)



 結構落ちたと思ったが、衝撃は軽い尻餅レベル。

 スマホをポケットから取り出し、ダメ元で確認。

 はい圏外。

 

 懐中電灯にでもしようかと思ったが、もし繋がった時の為にも電池は温存しておきたい。

 渡された聖剣の方がずっと光ってるし、これを光源にしよう。


 照らされた丸い洞窟、一本道。

 人が5人ほど並んで歩けそう。


 光る剣より松明がお似合いの場所だ。



 あのモグラが掘ったにしては小さい気がする。

 もしかしてあいつら大っきくなってるのかな。


 それに絶対零度ってのは入り口だけなのか。

 ダンジョンの中は別に冷たくない。


 望み薄だが、上に向かって叫ぶ。


「おおおおおおおおおおい!」



 やはり反応はない。

 俺はただの屍になるようだ。


 聖剣は重い。

 肩書き(フリーター)にとっても、筋肉にとってもだ。


 そして、そもそもこんなことは────


 10分前まで家に居たんだ。


 だからやっぱり…………。


 これはゲーム。

 または夢。


 そうと信じ、楽しもう。


 気合を入れ直す為、パッっと自分の顔を両手で叩いた、その瞬間。


 小動物のような鳴き声がした。


「パァフ!」



 聞いたことのない鳴き声だ。

 声の方向をじっと睨むと、そこには掌サイズのタコがいた。


 空中にぷかぷかと浮かび、ゆっくりとこちらに近づいてきている


 8本ある内の一つの足で人が挨拶するみたいに手を降っている。



「おい、タコ焼き機持ってきてねぇぞ」


「パァフ!?」



 敵意は感じられない。


 だが、予備動作のようなものを感じた。


 もう目の前。


 何か、してくる。



 ────スポンッ。


 速すぎて見えなかった。


 だが、頭に妙な重さを感じて理解した。


 タコは超高速で俺の頭に張り付いている。



 ちくしょう、もうかよ。


 折角、楽しむ気になったのに。


 やるなら早くやってくれ。

 本当は現実に戻りたいんだ、って…………遅いな。


 何してるんだこのタコ。


 カツラにしてはちょっと小さいし要らんぞ。


 吸盤でハゲそうだから夢でも願い下げだ。

 年齢にしては薄いんだよ俺は。


 ムカついて頭に乗ったタコを剥がそうとした時。


 ======


 冒険者番号:−1《Error》

 狩上升也(カリウエマスヤ)


【体力】8

【魔力】0

【持久】5

【筋力】5

【技量】12

【血力】74

【信力】20

【正気】6


 ======


 一瞬にして視界を遮る、ゲームのステータス画面のようなウィンドウ。


 俺の名前付き、お約束の展開。


 つまりこれは自分の強さ。

 でも強いか弱いか分からない。

 エラー吐いてるし。


 【正気】というステータスの項目、その意味を想像するだけでゾッとする。

 どうせSAN値とか発狂とか……そういうものなんだろう。



 ていうか、なんだこのタコ。




 ────スポンッ。



 タコが勝手に頭から離れた。

 同時にステータスも見えなくなった。


 面と向かって向き合う。


 俺はもう狂ってるかもしれない。


 タコの目がクリクリで可愛い気がする。


 謎に髪みたいなのが一本だけチョロっと生えている。

 完全にマスコットキャラだな。


 俺の予想だと、コイツは案内してくれるオトモ的存在。

 この存在をオクトパスならぬオトモパスとでも呼ぼうか。


 オトモパスは足を一本俺に突き出した。


 よし。翻訳してあげよう。


「ボクのゲソだ。 また生えてくるから唐揚げにしていいよ って?」


 するとオトモパスはもう一本足を追加で出し、二本でバツマークをつくった。


 他の足もブンブン揺らし、抗議の姿勢。


 言葉は分かるようだ。


「ま、そのポーズは握手だよな」


 握手しようとすると、オトモパスもそれに応じた。


 ======


 冒険者番号:−1《Error》

 狩上升也(カリス)


【体力】8

【魔力】0

【持久】5

【筋力】5

【技量】12

【血力】74

【信力】20

【正気】6


 ======


 どうやら、コイツに触れると、自分のステータスが表示されるようだ。

 

 フリガナを変えられている。


 なんだよ『カリス』って。初めてだな。


 升也の『升』って漢字のせいで「チート全然使えねぇじゃん! よっわ」と虐められた記憶しかないから、マシな方だな。


 というか何故、俺のフリガナを弄った。


 もしかして。


「お前、名前つけて欲しいのか?」


 頭を立てに一回下げて、くるりと中をまうタコ。


「そんじゃ『クトル』、でどうだ?」


 俺の提案にダブルスピンを決めたタコ。

 気に入ってくれたようだ。


 クゥトゥルフから文字った『クトル』だが、気に入ってくれたらしい。

 正気パラメータにタコとくれば、これだろう。


「パラメータの見方がわからないんだが」


 するとまた、握手を催促してきたクトル。


 それに応じると、


 ======


 冒険者番号:−1《Error》

 狩上升也(カリス)


【体力】8  (ゴミ)

【魔力】0  (ゴミ)

【持久】5  (ゴミ)

【筋力】5  (ゴミ)

【技量】12 (ゴミ)

【血力】74 (!?)

【信力】20 (OK)

【正気】6  (終)


 ======


 どんだけ毒舌なんだよ。


 気になることは満載だが、一番下はおかしいだろ。


 正気が(終)ってどういうことだ。

 某テレビ局の製作・著作のロゴマークかよ。


 パラメータの意味を教えてもらう必要があるようだ。



===========

────05:43────

===========

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る