第5話

 その日は、事件の概要を今泉から聞いて終わりにした。最初から聞きまくられると相手も嫌だろうし警戒される。私は、今泉梅の身元を調査することにした。この殺人事件には何か裏がある。今泉は、正当防衛だと言っていたが、いくらなんでもそれはない。


 次の日、今泉梅の職場に出向いた。編集部だからか、人が忙しなくせかせかと動いている。そんな中、社長に会いに行く。

「初めまして。私、弁護士の櫻井春香と申します。ご多用の中、お時間をとっていただきありがとうございます」

「こちらこそ、私の部下がご迷惑をかけて申し訳ありませんね。なんでも聞いてください」

 小太りなおじさん。メガネをかけていて、優しそうな雰囲気。余裕がある人とはこういう人のことなのかと改めて思う。


「今泉陽太さんと梅さんは、仕事上では上司と部下という関係なんですよね? 何かトラブルとかありましたか?」

「トラブルかー。トラブルというか、梅さんは可愛い感じでしょ? だから、男が寄ってきやすいんだよね。そういうトラブルはあったけどな。ストーカーとか」

「ストーカーされてたんですか? 梅さん」

「うん。2ヶ月前くらいね。つけられているとかで」

「でも、梅と陽太は仲良いから仕事終わったら一緒に帰るようにして、そしたらストーカーも諦めたのかなくなったな」

 ストーカーが殺人に繋がる? いや、繋がらないよな。だったら、ストーカーが殺しにくるよな。でも、殺したのは梅さんだし。


「ちなみに、ストーカーは、梅さんの知り合いだったんですか?」

「うん。元恋人らしいよ。男の方はまだ気があって噛み付いてたみたい。梅さんは、とっくに忘れて結婚してるのにな。そういう恋愛のもつれってやつが1番めんどくさいよな」

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ある弁護士の日記 みお @mioyukawada

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