第4話

 重たい灰色の鉄格子の中にいる女の人。その人が今泉 梅だった。目はくりくりしていて二重の可愛い印象を受けた。メイクはしていなくても、モテそうな雰囲気を出している。髪はショートで、アッシュブラウン。この子が殺人を犯すなんて……。考えられなかった。


「私、今泉梅さんの弁護士を担当する櫻井春香と申します。何があっても今泉さんの味方なので、遠慮なくおっしゃってくださいね」

「はい。よろしくお願いします」

 今泉は、深々とお辞儀をした。なんて礼儀正しい子なんだろう。

「今泉さんのご職業って、あの有名な雑誌を手がけている編集部ですよね!?」

「はい」

「私、その雑誌、毎月買ってるんです!」

「え! そうなんですか? それは嬉しいです」

「だから、今回この事件を担当することになって、縁起でもないんですが、なにか運命を感じましてね。大好きな雑誌の編集者に関われることに関して」

「私も、読者に会えてよかったです。こんな形でしたけど」


 2人の顔は、いくらか笑顔になった。


「まず、事件の概要から確認しますね。あなたは、5月8日の午後11時頃、夫である今泉陽太さんを包丁で殺害した。これに間違いはありませんか?」

「はい。間違いありません」

「この時、何があったか詳しく教えてくれませんか」


「気づいたら夫を殺していました」

「何かきっかけがあったんですかね?」

「夫は、私のことを殺そうとしてきたんです」

「つまり、正当防衛をしたということですか?」

「はい。その日は夕食にお酒を飲んでいたので、すぐに眠くなりその時間にはもうベットに入っていました。そこへ、包丁を持った夫がやってきました。私は夢なのかなんなのか。慌ててベットから出ました」

「でも、あなたは包丁を握りしめていたんですよね?」

「はい。私は、夫と揉みあいになり、気がついたら私が殺していました」

 男が最初に包丁を持っていたのに、それが女の手に渡るか? 女は男の力には敵わらない。ましてや、ザ女子みたいな今泉のような子には、包丁を奪い取る力なんて、あるのだろうか。

 これは、調査をする必要がありそうだ。

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