懺悔

 求めるがままに、貴女を求めた。

 脱がして、口づけして、触れて、なぞって、挿れて――

 塗り替えられてゆく。

 啓太との感触。男の感触。父との感触。

 触れあう肌と肌。唇と唇。

 汚い私が塗り変わってゆく、そんな感覚。

 貴女との行為は、私の全てを塗り替えていくようだった。

 柔らかな肌。握ったら折れてしまいそうな身体。

 温かくて、包容されるように優しくて。

 そんな、貴女の温もりを、貪るように求めた。

 夜が更ける。時間も、食事も、明日のことも忘れて、ただひたすらに身体を重ねた。

「りんかちゃん」

 余裕のない貴女の声。離さないように貴女を深く抱き締める。

 包み込まれるように、頭を撫でられる。

 優しい温もりの中、幼い頃の記憶を思い出す。

 泣き虫な私。影のように母の傍を歩いた幼い私。

 優しい母の笑顔。温かくて優しい温もり。

 貴女は囁く。

「どうしたの」

 なんでもないの。

 なんでもない。ただ、昔のことを思い出したの。

「昔のこと?」

 お母さんのこと。

 あの日、お母さんは私を置いて逃げた。

「どうして逃げたの」

 お父さんとしたから。

 きっとお母さんは知ってたんだ。

「凛花ちゃんは悪くないよ」

 嫌だって言えなかった。

 怖くて言えなかった。

 全部壊してしまいそうで言えなかった。

「悪くないよ」

 私が強かったら、お父さんは何もしなかった。

 私が悪いの。全部、私が。

「私が許します。凛花ちゃんの罪を私が許します」

 強く抱き締められる。温もりは優しく、離さないよう深く。

 境目が分からなくなる。貴女の温もりに染まってゆく。

 頭を撫でられる。何度も何度も、慈しむように何度も。

 夜が更ける。

 貴女の胸の中で、私は静かに落ちてゆく。

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