第2話    アルバム

「…はぁ!?誰かによって消された?」


「はい。」


そんなはずはない。私は、プログラム関係の仕事をやっている。それを生かして、他人に操作されたりしないよう、かなり厳重なロックをしていたはずだ。


「厳重なロックを突破されたのなら、かなりの技術を持った人間がやったことと考えてよいですね。」


かなりのプログラムの技術者――。この世にはたくさんいるだろうが、私のアルバムを消す意図がわからない。


そして、姉さんと通話を切った後の時間帯だと考えると、私が姉さんのことを知ろうとしてる、ということがわかる人間しか、このことは出来ない。


つまり、私が姉さんと通話しているのを見て、アルバムを消した人間は、『先生』しかいないのである。


「ロイド、先生がアルバムのデータを消したのは、何故だと思う?あくまで、憶測だからね。」


そう聞くと、ロイドは


「そうですね、その先生は、優日さんの秘密を隠したいんじゃないですか?優日さんと朱音さんが離れて暮らすことになったのも、その秘密のせい――とか。」


と答えた。


ロイドには、私の情報などがあらかた入っているので、その情報をつなぎ合わせて答えてくれる。


だから、ロイドの予想は事実としてあることで、当たっていることが多いのだ。


「秘密…。」


少し考えて、いう。


「母さ…、優希さんは、姉さんのことを『頭が特別にいいから』って理由でどっかに連れてったよね。姉さんは頭がいいけどさ、姉さんが連れてかれる前の記憶だと、多分学力って私と同じくらいだった。一卵性の双子だし、似てることも多かったし。」


優希さんは、私たちのは母親だ。

けれど、私たちが4歳くらいのころ、浮気が発覚して、離婚になった。


しかもそのあと、父さんが病んだり、姉さんが連れていかれたりもした。

そしてそのことをきっかけに、殺意と、死にたいという感情を覚えた。


これが5歳の時だったというのだから、自分でも驚きだ。




しばらくぼーっとしていたのだろう、ロイドが「朱音さん?」と声をかけてから言った。


「残念なことに、わたしに優日さんのデータはない、といいますか、すべて消されてなくなっているのですが、その説はあるような気がします。」



ロイドも共感してくれたのでうれしくなって、やっぱり!?と言う。


「だから、学力と関係ない何かが姉さんにはあって、それを隠すために嘘をついた。案外当たってるかも!」


そう自慢げに言っては見たものの、肝心な何を隠しているか、は分かっていない。


「やっぱりさ、占いができないのに、未来を当ててるのはおかしいと思う。だから、占ってもらった人に話を聞いたらいいんじゃない?」


ロイドが確かに、という前に、


「といいうことで、情報集め、お願い。私はすることがあるから。」


と言う。


人間っぽく、「はー」とため息をついているロイドに背を向け、玄関に向かって歩く。



やっぱり、人に聞いただけじゃだめだ。


まずは体験してみないと。


ドアが開いて、夕陽が流れ込んでくる。


もう夕方だったのか。



地球が滅亡(仮)するまで、あと1日と6時間。







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