第11話 ランチ




マホが目をキラキラさせて、話をしてきた。




ソウタとみんなでランチに行くよ!






あまりに唐突で、びっくりした。

そういうことか。






二人なわけなかった。

あの時散々嫌な目にあったんだから。







マホが私ってすごいでしょ?といわんばかりにユウにランチの説明をしていた。

ソウタおすすめのお店に行くんだよ、と。









男子1人に女子3人。

不思議な組み合わせ。

それでもソウタはOKしたらしい。







懐かしいお店に到着して、みんなでオムライスを注文した。

私もソウタもケチャップ。

それにマホも合わせてきた。

ユウはデミグラスにした。








一口ちょうだい。






ソウタのスプーンが私の目の前を横切って、ユウのお皿へと向かった。








次はデミグラスだな。






最後の「な」はこちらを向いて言ったように見えた。




あまり期待をしないでおこう。

傷つくのが怖いから。










暫くして、ユウの様子がおかしいので、問い詰めたらマホから宣戦布告を受けたらしい。






なんてことっ!

私はユウだから、ユウだからいいって思ったのに!

思わず口に出そうな言葉を必死で堪えた。






許せない。






きっとものすごい形相だったんだろう。

ユウがとても困った顔でこちらを眺めていた。








マホにこちらからも宣戦布告をしてやった。




私はユウの味方だから!






あんたみたいなチャラチャラしたやつに、ソウタは似合わない。

心の中でたくさん暴言を吐いた。







実行委員の集まりで、ソウタは相変わらず、こちらが困っている時に、気づけば側にいて、そっと助けてくれた。

まず声をかけるのはユウに。

でも、最後にきまってチラリと視線を私に向けた。








ソウタとは小さい頃から仲がよかった。

気づいた時にはソウタの母親と、うちの母親が時々ランチの約束をして、一緒にランチに出掛けた。

私たちの関係はずっと続くんだと思っていたのに。







中学の時、ソウタがうちの方向に用事があると言うので、家まで送ってもらった。

庭で花に水をやっている母親が、その姿を見て、一瞬で顔色が変わるのが見て取れた。






男の子と二人で帰ってくるなんて!







その夜、烈火のごとく母親に叱られた。

相手はソウタだよ?

お母さんだってかわいがってたじゃない?







しかも、ソウタは私の初恋の人だった。








以来、いかにして家を出るかを真剣に考えた。

そうだ、奨学金をもらって大学に行けばいい。

できれば返済不要のもの。

そして母親の目の届かない場所へ。





以来、必死で頑張ってきた。









ソウタには、少し距離を取ろうと話をした。

母親が厳しくて。

と。

ソウタと仲良くしているのを見られてはいけない。

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