第10話 仮面



実行委員、リコはやる?




携帯のメッセージが光る。






そうだね、内申書のためにやろうかな。






素早く返事を打ち込む。
















うちの親はとても厳しい。

外面をとても気にするし、自由なんてない。

おかげで私まで外面を繕うのがうまくなった。




テレビだって好きな番組なんて見れない。

今時のアイドルだってドラマだってついていけない。

一応、ドラマは録画するけれど、大抵の子はリアルタイムで見ているから、私が見る頃には話題は違うものに代わっていた。



そんなだから、ドラマにもだんだん興味がなくなっていった。







高校生になって、同じ部活で大人しい子がいた。

みんながアイドルの話をしている中で、ニコニコ笑ってはいるけれど、会話についていけていない。

それがユウだった。




ユウは元々、アイドルに興味のない子だった。

アイドルやドラマに興味がないので、私にとってとても居心地がよく、すぐに仲良くなった。




2年生になり、ユウと同じクラスになった時は二人で小躍りして喜んだ。

これでクラスでも自分らしくいられる。

わけのわからないアイドルの話を聞かされなくてすむのだ。







ただ、ユウはあまりに普通すぎた。

良く言えば欲もない。

私は早く一人暮らしをするために、少し遠くの偏差値の高い大学を目指している。

家を出るためには、いわゆるいい大学でなければならないからだ。





いい大学にできれば推薦で入りたい。

文化祭の実行委員はいい材料だった。

ユウに声をかけ、一緒に参加することにする。

同じ部活のマホにも一応声をかけるが断られた。






ユウは普通で地味だけど、器用だし、雑用には向いていた。

私の言うことには従ってくれるから、仕事もやりやすい。






二人で実行委員の仕事をしていると、幼なじみのソウタが声をかけてきた。

声をかけられたユウが、こちらに目配せをしてくる。

ほんと、男に慣れてないんだから。




三人で雑用をこなすことにする。






ソウタが力仕事を手伝ってくれるので、実行委員はなんなくこなせた。

目立ったことはしないけれど、ソウタは勘がいい。そして人をよく観察している。








最初は、私に誘われて来ました感満載だったユウが、実行委員でイキイキ働くようになっていった。

と、それと同時にソウタとも仲良くなっていく。







なんとなく、気づいていたのだと思う。

でも気づかないフリをしていた。





ユウがソウタの話をする。

耳まで真っ赤だ。







そっか。

ユウならいいかも。





いいやつだよ。

そう助言しておいた。









その夜。

携帯が光った。






あのオムライス、

また食べに行かない?







オムライス?

懐かしい。

いつもケチャップを選んでたっけ。

大人はデミグラスだったなぁ。

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