第8話 恋




文化祭の実行委員かぁ。

私はパス。






リコに誘われて、即座に断った。








あんな面倒くさいこと、なんでやりたいのかわからない。

大学だ、内申書だ、ってリコは言うけれど、今が楽しい方がいい。






暫くして、ユウを誘って二人で実行委員になったと聞いた。

ユウはリコの言いなりだしね。

実行委員って他に誰がいたっけ?








暫くして、私の視界にソウタがいることが増えた。

正確には、リコやユウの側にソウタがいることが増えたということだと気がついた。

そういえばソウタも実行委員だっけ?








気がつくと、ユウが楽しそうにソウタと話をしている。

男子と楽しそうに話すユウって新鮮。

少し実行委員に入らなかったことを後悔した。







三人でのお弁当の時間に、ユウに聞いてみる。

最近ソウタと仲いいね、って。

案の定、うつむいて赤くなる。

なるほど。そういうことか。






よし、応援する!

任せて!

おせっかいな部分が出て、ついそう宣言した。








ソウタとは去年同じクラスだったから、話すことは平気だった。

でも、そんなに目立ったタイプでもないし、何がよかったんだろう?

優しい雰囲気ではあるけど。







ユウのために、ソウタにおいしいランチのお店を聞き出すことに成功した。

ついでに一緒に行こうよ、と、言うと、あっさりOKしてくれた。






よく見ると、背も高いし、かわいい顔をしてるなぁ。

ただ、帰宅部だったはず。

部活もしないやる気のない人が、なんで実行委員なんて始めたんだろ?










約束のランチの日。

ソウタはユウにばかり話かける。

なんで?

リコや私は去年も同じクラスで気心知れてる仲なのに、地味なユウにばかり。

ユウはデミグラスにしたけれど、私はソウタと同じケチャップソースのオムライスにした。






ソウタって、ユウのことが好きなんだろうか?

気がつくとそんなことを考えるようになっていた。

ユウとソウタが仲良くなるのは嬉しいことのはずなのに、なぜか心がザワザワしてしまう。






そんな時、クラスメイトから、ソウタが英語のスピーチコンテストで優勝したと聞いた。

帰宅部だと思っていたけれど、英語が得意で、英語の勉強に専念したいから、と、部活には入っていないそうだ。





今まで地味で大人しい男の子だと思っていたソウタが、急に輝いて見えるようになった。







でも、ユウの好きな人。

そう自分に言い聞かせる。








でもダメだった。

ユウの前で、笑顔を作るのが難しくなってきた。






もう、ユウに告白するしかない。






私もソウタのことが好きになったんだ。






バスを降りる直前に早口でまくしたてた。

黙って狙うなんてしたくなかったから。

そして、私が本気を出せば、ユウには勝てると心のどこかで思っていた。

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