第6話 悟り



マホとソウタの距離が近くなってきてるとはいえ、私とソウタの距離も近づいていた。

初めの頃はリコと三人でしか話せなかったけど、今では二人で話すこともあるくらいにはなっていた。





それでもソウタと話をしている時には、マホからの視線を感じ、また、それを睨むリコがいることは、確認しなくてもわかった。








私とソウタの仲は、実行委員で仲良くなりました、といった風な様相だったが、マホはどんどんソウタとの距離を縮めていた。






あんなに友達が多く、どのグループともまんべんなく絡んでいたのに、明らかにソウタの側にいる。







そして、他のクラスメイトからも、マホとソウタの噂を耳にするようになっていった。

あの二人、付き合ってるのかな?

最近ずっと一緒にいるよね?

何にも知らないクラスメイトから、そんなことを言われる。





マホって、明るくてスタイルもいいし、クラスの人気者だ。

私なんてかなうはずもない。

あんな素敵な笑顔だって作れないし。







そんな事より、変わっていくリコが心配だった。

汚い言葉なんて言わない子だったのに、いつもマホを監視して、睨み付け、暴言を私にぶつけている。






そんな生活に、嫌気がさした。














もう、ソウタのことはいいや。






リコにそう告げる。







なんで?!

ソウタとこんなに仲良くなったのに?!

マホに遠慮なんてしなくていいんだよ?!

想像通りにリコに責められる。







うん。

でもね、なんか楽しくなくなったんだよね。

ソウタのことはさ、嫌いになったわけではないけど、私の中で1番じゃないっていうか。

そもそも私とも仲良くしてるけど、マホとも仲良く一緒に帰るし、最近常に一緒にいるよね?



ソウタのこともよくわからない。



私がいいのか、マホがいいのか。





あとね、私にはマホほどの情熱はないってわかったんだよね。

そこまで好きじゃなかったんだよ。

友達を蹴落としてでも手に入れたいとか、友情より愛情だ、とか。

そこまで思えなくて。

あー、その程度だったんだってかんじ。







じっと聞いていたリコが、優しく抱き締めてくれた。







もう終わりにしよう。











数日後、マホにも自分の気持ちを伝えた。






もういいよ。

私はやめる。






呼び出されてしかめっ面だったマホにパッと笑顔が戻る。



ほんとに?

いいの?

ずっと気になってたんだよね。

ユウのこと。

私のせいで三角関係になっちゃって。

でも、遠慮したらユウに悪いでしょ?






とても嬉しそうに私のため、というわけのわからない解説をあっけらかんとし、その後に、実は寂しかったんだと教えてくれた。







やっぱりお弁当はユウとリコと三人がいいな。ダメ?






リコはかなり反対したが、元に戻りたかった私はマホとのお弁当を再開することにした。









やめる宣言をしてから、マホに遠慮はない。

どうしたらソウタと付き合えるだろうか?と、相談までしてくる。

もうあれだけ押しまくってたら、ソウタもマホの気持ちに気づいてると思うんだけど。

そして、私にどんなアドバイスを期待してるんだろう?








お弁当タイムは元の三人に戻ったけれど、私もリコも、マホと昔のような関係には戻れなかった。








暫くして、マホがソウタに告白し、OKをもらったと笑顔で報告された。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る