第4話 オムライス


ここのオムライスがおいしいんだよね。



こっちを向いてソウタが話す。






三人女子がいるのに、私に向かって話をしてくれているのが、なんだか特別なかんじ。






オムライスはトマトソースかデミグラスソースか選べて、ご飯もケチャップか普通のピラフか選べた。





ソウタはケチャップ派らしいけど、私はデミグラスが気になって選んでみる。

他の二人はケチャップだって。








ふいに、




一口ちょうだい。






ソウタのスプーンが私のお皿に飛び込んできた。





こっちもおいしいなぁ。

次はデミグラスだな。





にっこり笑ってそう話すソウタにキュンとする。






とっても楽しい時間だった。

でも、楽しんでいたのは私だけかな?

付き合ってくれたリコとマホには感謝しなくちゃ。









ある日の帰り道。

リコとマホと三人。

いつもと同じ。







学校近くのリコとは暫くして別れて、マホと二人で帰る。

同じ吹奏楽部で、なんだか波長が合うマホは、お弁当や何かのグループを作る時は決まって一緒だった。

ただリコはいつも一緒なのに反して、マホは友達がたくさんいたので、常に一緒というわけではなかった。






部活の顧問が今日もウザかったよね、なんて話をしながらバス停でバスを待つ。

バスに揺られ、あと1つでマホが降りる頃になると、急に真剣な表情でマホがこちらを向いた。






あのね、ユウ、ちょっといい?


話すかどうか、本当に悩んだんだけどね。







何の話だろう?

そんな真剣な話なら、リコも一緒の時に言えばいいのに。

私に話をしたって、うまい解決策なんてきっと出て来ないんだから。







あの、あのね。

私もソウタのことが好きになったんだ。

ユウのことを応援するなんて言っててごめん。

でも、好きになっちゃったから。

黙っておくってズルいと思うから、ユウにはちゃんと言っておこうと思って。

ごめんね、好きになっちゃって。





ちゃんと伝えたから、これからはライバルだからね。

遠慮しないから!







開いた口が塞がらないとはこういうことか。





ポカンとした顔の私を、やけにスッキリした顔で振り返ったマホは、とてもかわいい笑顔をこちらに向けて、


バイバイ。


と手を振ってバスを降りていった。

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