仲間とは
第25話 次の仲間候補
俺は今、冒険者ギルドに向け歩いている。
今日はゆうな、剣児と共に仲間探しをする予定だ。
しかし仲間探しといっても次はどんな仲間を入れるのか、冒険者として日の浅い俺にはまだピンときていない。
以前、ゆうなはバランスのとれた編成にしたいと言っていた。
俺はしょうかんし、ゆうなは勇者、剣児は剣士。
バランスのとれた編成というものを詳しくは知らない俺は、仲間になった初日に、俺とゆうなと僧侶98人のパーティを提案したが却下されたことがあった。
理由を説明され何となく分かったが、おそらく攻撃役と補助役の数が極端に違うとダメなのだろう。
今は三人とも攻撃役だ。
であれば、次に求めるのは補助役になるであろう。
しかし補助的な役割は僧侶しかいないのでは?と思ったが、タンナーブに魔物が襲来した時の話を思い出した。
現最強の英雄さんパーティには盾を使う男がいて、その男は魔法を使う女を守っていたような気がするなー。
んー、次の仲間は僧侶か盾使いが良いのか?
ゆうなに会ったら聞いてみよう。
そんな事を考えながら歩いていた。
「あー、そういえば」
俺はある事を思い出し立ち止まった。
東通村からタンナーブに帰るまでにレベルが上がったが、そこから更新していない事に気付いたのだ。
俺は道端で冒険者の書を開き、歩きながら手を当て、徐々に塗り替えられていく数値をまじまじとみる。
――――――――――――
名前:出野 ハー(年齢?歳 性別 男)
レベル:14
職業:しょうかんし
職業レベル:4
HP:2,830,000/2,830,000
MP:102,300/102,300
物理攻撃力:5,020
物理防御力:5,210
魔法攻撃力:4,520
魔法防御力:5,350
素早さ :4,700
運 :90
使用可能魔法一覧
火属性:チャッカ(小) ~ ドゴウゴウ(極大)
水属性:チョロ(小) ~ ドバーン(極大)
氷属性:バリ(小) ~ バリジャッキン(極大)
雷属性:ピリ(小) ~ ドンバチン(極大)
土属性:ゴゴ(小) ~ ズゴーン(極大)
風属性:フワ(小) ~ ビューン(極大)
闇属性:ヌン(中) ~ ヌラリアン(極大)
即死:スット(小) ~ アトカスット(中)
毒:ジュク(小) ~ ジュクジュ(中)
麻痺:ギチ(小) ~ ガチギ(中)
飛行:プカン
使用可能特技一覧
一刀両断/
使用可能しょうかん一覧
ゴブリンパンチ/ホップスライムジャンプ
――――――――――――
レベルは一つ上がったが、そこまでの変化は感じられない。
人間は各能力値に上限というものが存在するが、俺にも上限というものは存在するのだろうか?
気になる部分であったが、魔王も含め、魔物が職に就くなど前例がないはずなので、人間界に詳しいゆうなでも分かる道理がない。
まー、なるようになるか。
そんなことを考えていると市場が目に入った。
俺は思い出したかのように一つの露店へ向かう。
目的はもちろん柿ピーだ。
人間界で生活を始めてからは、タンナーブに来て初日に食べた柿ピーにすっかりハマっていた。
俺は柿ピーを無事購入し、ボリボリ食べながら歩くと集合場所の冒険者ギルドが見えてきた。
ゆうなと剣児の姿はなく、今回は俺が先に到着したようだ。
冒険者ギルドの入り口前に立ち周りを見やると、様々な職業であろう、色々な格好をした冒険者とおぼしき人々がギルドの中に入っていく。
一人で入っていく者もいればパーティを組んでいるのか四人で入る者もいる。
ふとここで疑問が浮かぶ。
冒険者登録も済まし、仲間もいてパーティが完成された人々はここに何をしにきているんだ?
「出野さーん!」
遠くから聞こえるこの元気な声はゆうなだ。
声のした方向に目を動かすと、手を振り走ってくるゆうなの姿が見えた。
「ゆうなー!」
雑音の中、ゆうなの位置よりも更に遠くの方から剣児の声が聞こえた。
ゆうなの後方を見ると豆粒ほどの大きさの剣児が走っていた。
視界の豆粒は、ここから見ても分かるくらい笑顔だ。
ゆうなはその存在にまったく気付いていない様子で俺に向かい走ってくる。
皆朝から元気そうで何よりだ。
「はぁ、はぁ、おはようございます。お待たせしました」
「おはよー」
どこから走ってきたのか分からないが、ゆうなは息を切らしていた。
「剣児君はまだみたいですね」
「剣児もゆうなの後ろを走ってたけど」
俺は遠くの剣児を指差し、ゆうなも息を整えながらその先を見る。
剣児は間違えたのか、ゆうなと同じような格好をして前を歩いていた赤の他人に声をかけ、先程までの笑顔が消え真顔になっていた。
満面の笑みで走る豆粒を見たあとだったので、そのギャップに笑いそうになった。
真顔で謝ったあと、俺とゆうなを見つけるとこれまた満面の笑みで走ってくる。
そしてまたすぐに派手な着物を着た人とぶつかり真顔で謝り、またまた満面の笑みを浮かべ走ってきた。
この時ばかりは、こいつの感情はどうなってるんだと思った。
「おはようございますー!待たせてわりぃわりぃ」
「途中私と間違ったでしょー?」
俺達三人が揃ったところで、ゆうなは早速切り出す。
「今日は仲間探しをしまーす」
「おぉー」
剣児が拍手しながらそれに反応した。
「どんな職業の仲間を探すか決めてるのかー?」
「もちろんです!」
俺はさっき考えていたことの答え合わせとばかりに当てにいく。
「俺なりに考えたが、今は補助役が必要かと思っている。ということで僧侶か盾使いか?」
「半分正解で半分不正解ですね。私が今仲間にしたいのは、ずばり僧侶か魔法使いです」
魔法使いか?
ゆうなの言っていたバランスの取れたパーティには魔法使いが入っているのか。
「んー、僧侶は何となく分かるけど、何で魔法使いなんだー?」
「それはですね、遠距離への攻撃役が必要だからです」
ほう、そうくるか。
確かに三人ともまだ近距離での攻撃手段しか持っていない。
今まで戦った魔物は、ヴァーエイトを除き全て近距離攻撃しか持ち合わせていなかったが、この先魔法を使える魔物も出てきそうだしな。
俺が本来の実力を出せばそんなの俺一人でどうにかなるが、現実問題そうはいかない。
まぁ理にかなっているな。
「確かにな。ちなみに聞くが僧侶と魔法使いだったらどっちを優先させるんだ?」
「えーと、私は魔法使いですかね。最悪HPは薬草などで回復できますし。広い意味で考えると魔法使いも補助役にもなります。てことで今日は魔法使いを中心に声をかけてみましょう!剣児君もそれでいいかな?」
「おらはあんまし分かんねぇし、誰でもいいぞ」
もし能力値に賢さという項目があったとしたら、剣児の賢さは相当低い数値のはずだ。
「じゃあ早速中に入りましょう」
俺達は冒険者ギルドに入り、募集窓口に向かった。
「あのー」
「いらっしゃい。今日はどのようなご用件で?」
窓口の男はそう返すが、顔も上げず、熱心に本を読んでいるようだ。
この光景、前と同じだ。
「仲間を探しているんですが」
「あんた勇者かい?ってゆうなちゃんじゃんか!」
これはお決まりなのか。
「この間の出野ハーさん?でしたっけ?あとその横にいるのは……、剣士の古川剣児君だな!あのあと結局仲間になったんだね!」
「そうです。その節はありがとうございました。で、今日なんですけど、魔法使いの募集はないかなぁと思いまして」
「そうかそうか!えーと……」
男は熱心に分厚い本を捲り、該当者を探し始めた。
「この子なんかどうかな?魔法使いになりたてでね、この前うちに……」
◇◇◇◇◇◇
タンナーブ城は侵入者を防ぐ目的で幅3メートルほどの水堀で囲まれ、城に入るためには城門に繋がる橋を通る必要がある。
侵入者を防ぐ為の水堀と言っても所詮魔物から見ると何の意味も為さないが、魔物が出現するもっともっと前に作られた城の為その名残が残っている。
そのタンナーブ城の橋の前の広場に俺達はいた。
「……惨敗。はぁ」
ゆうなから溜め息が漏れた。
それもそのはず、俺達は今日だけで5件断られていた。
みんなそれとなく理由をつけて断っているが、やはりゆうなが女勇者だということが断りの要因になっているのは俺でも分かった。
女とはいえ勇者だ。
その勇者が煙たがれる理由が俺には分からなかった。
今まで何の疑問も浮かばなかったが、ここまで顕著に断られいるのを目の前で見ているとさすがに理由が気になった。
「ゆうな、ここの冒険者達はどうしてこんなに女勇者を嫌うんだ?」
ゆうなの体が一瞬ピクッと動いた。
少しばかり動揺しているのか。
「それはですね……」
何かを躊躇いながら間を置くゆうな。
「本来、勇者は男しか就けない職だからです」
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