第4話

 欲求というものをコントロールするのは難しい。

 所詮、人もまた動物なのだろう。

 しかし、使いようによっては強いモチベーションに繋がるように思う。

 あくまでも、使いようによってはだが。


 彼は村を後にした。

 不思議と危険が潜む村の外に出た筈なのに、彼は落ち着いている自分がいることに気が付いた。

 一歩、また一歩と遠ざかるたびに、心が軽くなるのを感じた。

 それを示すように、足取りは踏み出す程に軽くなった。

「あれは、居場所じゃなかった」

 ふっと言葉が漏れた時に、不自然な音がした。

「どうして?」

「駄目、ですか?」

 そこには村に案内してくれた女性が居た。

 額に汗した女性は少し肩で呼吸をすると、

「あなたは、1人だとすぐに消えてしまいそうでした。周りの事は気にする必要なんてないです。戻りましょう?」

「それはできない。あそこはきっと居場所じゃない」

「なら、どうするんですか?」

「探すさ。君には居場所がある。構わず変えるといい」

「どうしても行くんですか?」

「ああ」

 彼はもう十分だろうと思い、女性に背を向け歩き出した。

 一歩、また一歩と踏み出すが、足音は遠ざからなかった。

「どうして?」

「駄目と言ってもついて行きます。あなたを1人にはしません」

 彼はゆっくり口角を上げると、黙って2人で歩き出した。

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